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第十四章 真犯人への罠

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 私の微妙な表情を、マルク殿下は誤解されたようだった。

「すみません、無茶な話ですよね。そもそも、女性には危険すぎる……」
「いえ、そんなことはありませんわ」

 私は、きっぱりとかぶりを振った。

「今お話ししたように、もう犯人の目星は付いておりますもの。証拠が不十分、ということですが、それも大丈夫です。実は私、ドニ殿下を追い詰める切り札を発見しましたの。つい昨夜のことですわ」

 私はマルク殿下に、例のロケットを見せた。殿下が、おやという顔をされる。

「それは、ドニのものですね」
「さようでございます。私、これを使って、ドニ殿下に犯行を自白させようと思うのですわ。……殿下は、まだ謹慎中ですの?」
「ええ、もうしばらくは……。ですが、一体どうやって?」

 マルク殿下が、眉をひそめられる。私は彼に、昨夜一晩中考えていた計画をお話しした。すると殿下は、血相を変えられた。

「本気ですか? 危険すぎますよ」
「いいえ、やり遂げてみせます」

 私は、力強く頷いた。

「私、ドニ殿下がいらっしゃる離宮を訪れようと考えています。でも、授業スケジュールがこの通りで」

 私は、侯爵夫人からいただいた紙を、殿下にお見せした。

「というわけでマルク殿下、ご協力いただけませんこと?」
「もちろんです。私にできる協力なら、何なりといたしますよ……。何より、本当にドニが母上を殺害したのであれば、許すわけにはいきませんから」

 マルク殿下の瞳には、激しい怒りが宿っていた。

「とはいえ、モニク嬢を危険にさらすわけにはいきません。早急に、アルベール殿、モンタギュー殿に連絡を取ります。皆で、あなたをお守りしますよ」

 私は、少しためらった。危険なことはしない、とアルベール様とお約束したからだ。

「……アルベール様には、内緒にしていただけませんか?」
「心配をかけたくない、ということですか? でも、それはさすがにできませんよ」

 マルク殿下は拒絶されたが、私はどうしてもと言い張った。

「お願いです。彼は、絶対に反対すると思いますの。モンタギュー侯爵や他の方には、お伝えくださって結構ですから。でも、彼だけには……」

 殿下は渋っておられたが、ついに折れた。

「ああ、もう、わかりましたよ……。では、あなたを離宮へ行かせる手配をいたします。……最後にお聞きしますが、お覚悟はよろしいのですね?」

 はい、と私は殿下の目を見て申し上げたのだった。 
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