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第十四章 真犯人への罠

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 ドニ殿下の瑠璃色の瞳が、これ以上無いほど大きく見開かれる。マルク殿下と騎士団の方々には、私の後からこっそり離宮に入っていただいたのだ。そして、この部屋の前で、待機していただいていた。

「ドニ殿下。非常に残念ですが、あなたを捕らえねばなりません」

 沈痛の表情で、ミレー公爵が仰る。

「罪状は、フランソワーズ王妃殿下、他三名の殺害、マルク殿下殺害未遂、及び違法薬物販売。なお、料理人殺害についても、現在捜査中です」
「お待ちを……」
「証拠は挙がっております」

 殿下の言い訳を封じるように、公爵がぴしゃりと告げられる。マルク殿下は、深いため息をつかれた。

「ドニ。お前には失望した。人を殺めたことにもだが、私がより心を痛めたのは、お前が麻薬の流通に手を染めたことだ。このモルフォア王国に、麻薬をはびこらせるなど……。お前に王位を譲ろうなどと考えた自分を、恥じる」
「譲る……?」

 ドニ殿下は、ハッとしたように目を見張られた。一方ミレー公爵とモンタギュー侯爵は、私の元につかつかと歩み寄られた。
 
「モニク嬢、ご苦労様でした」

 お二人は、私に深々とお辞儀をされた。それにお応えしていた私は、気付かなかったのだ。ドニ殿下が、少しずつ枕へと手を伸ばされていたことに。

 騎士の方々が、ドニ殿下の元へ向かおうとされた、その時。殿下は、目にも留まらぬ速さで、枕の下から短剣を取り出された。刃を、ぴたりとご自分の首筋に当てられる。

「兄上の仰る通りです。私に、このモルフォア王国の王位を継ぐ資格はございません」

 ドニ殿下は、マルク殿下を見すえて仰った。

「この先私を待つのは、極刑でございましょう。そのような恥をさらすくらいなら、今この場にて、自決する道を選びます」

 私は、息を呑んだ。

「殿下! お止めくださいませ!」
「モニク嬢!」

 ミレー公爵らの制止を振り切って、私はドニ殿下の元へ駆け寄ろうとした。

 だが、その瞬間。刃は、私の方を向いた。

「僕を愛しているなら、道連れになってくれますね?」

 私の目の前で、刃は鋭く光った。
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