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第十四章 真犯人への罠

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 私が廊下へ出ると、マルク殿下は私に向かって、深々とお辞儀をされた。

「モニク嬢。本当に、お礼の申し上げようも無い。一連の殺人だけでなく、麻薬取引についても暴くことができました」
「いえ、あれは偶然ですから。それで、あの……」

 言いよどんでいると、殿下はクスリと笑われた。

「ああ仰っていましたが、やはりアルベール殿にはお伝えしましたよ。黙っているわけにはいきませんから」
「いえ! いいのです……。おかげで、命拾いしましたわ」

 そこで私は、不穏な視線を感じた。おそるおそる振り返ると、そこにはアルベール様がいらっしゃった。彼もまた、笑みを浮かべておられる。……ただし、目は笑っていない。

「『危険な真似はしないで』。俺はそう言いましたよね?」
「う……、はい」
「そしてあなたは、こう答えられたと思うのですがねえ。『わかりました』。その言葉を発したのは、この口じゃなかったですか?」

 つっと、アルベール様の指が私の唇を撫でる。マルク殿下が傍でご覧になっているというのに、これは恥ずかしすぎる。わかった上で、やっておられるのだろう。

(お仕置きですわね、これ……)

「ごめんなさい。……そして、ありがとうございました。助けていただいて」

 するとアルベール様は、ふっと笑われた。

「奥方をお守りするのは、当然でしょう?」

(――え?)

 そこへ口を挟まれたのは、マルク殿下だった。

「ドニがアンバー殺しを自供した時点で、使者が父上の元へ報告に上がったのです。おめでとう。父上は、お二人の結婚を認めましたよ」
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