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第十四章 真犯人への罠

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「それだけではありませんわ。ドニ殿下の敗因は、女性を侮りすぎたことです。私が彼に夢中で、何でも言うことを聞くと、思い込んだのでしょう」
「確かに、迫真の演技でしたね。窓の下で、ずっと聞いていました」

 アルベール様は、じろりと私をご覧になった。

「本当に、演技ですよね?」
「当たり前じゃございませんの!」

 思わず語気を強めれば、彼は「失礼」と呟いた。

「いえ、以前言っておられたから。かつて彼に憧れていた、と」
「よく覚えてらっしゃいますわねえ」

 私は、呆れた。

「てっきり、忘れておられるものかと。その時だって、クールなご反応でしたし」
「そりゃ、嫉妬をむき出しにするなんて、みっともないでしょ。しかもあの頃は、まだ偽装恋愛関係でしたし」

 あれ、と私は思った。

「ええと、では、もしかして……。妬いておられましたの?」
「当然」

 アルベール様は、短く答えられた。

「もう、どうにかなりそうでしたよ……。無理やり、抑え込みましたが」

 そこまで喋ってから、照れくさくなったのか、アルベール様は「帰りましょう」と言い出された。

「王宮まで、お送りします」
「すぐ近くですから、一人でも平気ですわよ? アルベール様も、早く休まれた方がいいのでは? お疲れでしょう」

 遠慮したのだが、彼は送ると言い張った。

「近いといっても、危険ですし。……それに、俺があなたと一緒にいたいんです。ずっと会えなかったのだから」
 
 私は、こくりと頷いた。私だって、気持ちは同じだ。王宮入りしてから、アルベール様に会いたくて気が狂いそうだった……。

 共に離宮を出ると、私たちは自然と手を握り合っていた。短い道のりを寄り添って歩いていると、彼はこんなことを言い出した。

「王宮を去る準備が整われたら、そのままミレー家へお越しください。母もエミールも、あなたに会いたがっています」

 確かにお二人とも、しばらくお会いできていない。懐かしく思う一方で、私はためらった。

「でも、サリアン邸に一度戻りたいのですけれど。急に王宮行きが決まったもので、残っている荷物もありますし」

 だがアルベール様は、なぜか頑なに拒絶された。

「それは止した方がいいと思います。荷物なら、後でどうとでもなりますから」
「はあ……」

 今ひとつ解せないが、取りあえず私は頷いた。
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