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第十五章 明かされた秘密
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それから三日後。私はミレー邸の応接間で、落ち着き無く時を過ごしていた。
あの後、私を襲った護衛の男はすぐに捕まった。他の護衛を言いくるめて追い払い、一人になったタイミングで私を狙った……ということまではわかったのだが。なぜ私を襲ったかは、まだ不明だ。現在、取調べ中とのことである。
私はといえば、国王陛下のご許可を得て王宮を引き払い、ミレー邸へ移り住んだ。ミレー夫人は、すでに完璧に私の部屋をご準備くださっていたのである。
そして私はここで、アルベール様の看病に専念している。彼が右肩に負った傷は、相当深かったのだ。よくその状態で、男に反撃できたと思うくらいである。
王宮にてすぐに処置を受けたため、大事には至らなかった。だが、当面の静養が必要とのことで、彼はこの三日間をミレー邸にて過ごしている。そして今日は、お医者様が往診に訪れる日なのだ。
ドキドキしながら待っていたその時、お医者様が応接間に姿を現した。私は、思わず駆け寄っていた。
「大丈夫ですの!?」
「安静にさえなさっていれば、問題はありませんよ。一ヶ月もすれば、元通りの生活がおできになれます」
私は、ほっと胸を撫で下ろした。
「ああ、よかったですわ。ありがとうございます」
お医者様をお見送りすると、私はアルベール様のお部屋を訪れた。ノックをすると、入室を促すお返事が聞こえる。だが、扉を開けて、私はドキリとした。彼は、半分体を起こした状態で、ベッドの上にいたのだけれど……、上半身はまだ裸のままだったのだ。
「一月で治るらしい」
私の動揺に気付いていないらしく、アルベール様は無邪気に微笑んだ。左手を伸ばし、ベッド脇に置かれた服をつかみ取ろうとされている。
「――私も、お医者様にお聞きしました。よかったですわね」
平静を装いながらそう答えると、私は彼の傍に近付いて、服を手に取った。
「お手伝いしますわ」
「ありがとう」
痛々しく包帯が巻かれた右肩に障らないよう、慎重に服を着せかける。普段はわからなかったけれど、アルベール様の肩や胸は、驚くほど筋肉が張っていて、私はどぎまぎするのを抑えきれなかった。背中や腹には、ところどころ傷がある。騎士として数々の戦いを経験される中で、付いたものだろうか。
(これくらいで動揺してどうするの。夫婦になろうという仲なのよ?)
無理やり、自分に言い聞かせる。とはいえ、チュニックを完全に着せ終える頃には、私は安堵のため息をついていた。誤解されたらしいアルベール様が、クスクスと笑われる。
「そこまで緊張しなくても。これくらいの傷は、どうってことありませんよ。慣れている」
「え、ええ……」
その時、コンコンとノックの音がした。メイドであった。
「失礼いたします。お食事を、お持ちしました」
来たか、と私はまたため息をつきたくなった。これから、とんでもなく恥ずかしい時間が始まるのである。
あの後、私を襲った護衛の男はすぐに捕まった。他の護衛を言いくるめて追い払い、一人になったタイミングで私を狙った……ということまではわかったのだが。なぜ私を襲ったかは、まだ不明だ。現在、取調べ中とのことである。
私はといえば、国王陛下のご許可を得て王宮を引き払い、ミレー邸へ移り住んだ。ミレー夫人は、すでに完璧に私の部屋をご準備くださっていたのである。
そして私はここで、アルベール様の看病に専念している。彼が右肩に負った傷は、相当深かったのだ。よくその状態で、男に反撃できたと思うくらいである。
王宮にてすぐに処置を受けたため、大事には至らなかった。だが、当面の静養が必要とのことで、彼はこの三日間をミレー邸にて過ごしている。そして今日は、お医者様が往診に訪れる日なのだ。
ドキドキしながら待っていたその時、お医者様が応接間に姿を現した。私は、思わず駆け寄っていた。
「大丈夫ですの!?」
「安静にさえなさっていれば、問題はありませんよ。一ヶ月もすれば、元通りの生活がおできになれます」
私は、ほっと胸を撫で下ろした。
「ああ、よかったですわ。ありがとうございます」
お医者様をお見送りすると、私はアルベール様のお部屋を訪れた。ノックをすると、入室を促すお返事が聞こえる。だが、扉を開けて、私はドキリとした。彼は、半分体を起こした状態で、ベッドの上にいたのだけれど……、上半身はまだ裸のままだったのだ。
「一月で治るらしい」
私の動揺に気付いていないらしく、アルベール様は無邪気に微笑んだ。左手を伸ばし、ベッド脇に置かれた服をつかみ取ろうとされている。
「――私も、お医者様にお聞きしました。よかったですわね」
平静を装いながらそう答えると、私は彼の傍に近付いて、服を手に取った。
「お手伝いしますわ」
「ありがとう」
痛々しく包帯が巻かれた右肩に障らないよう、慎重に服を着せかける。普段はわからなかったけれど、アルベール様の肩や胸は、驚くほど筋肉が張っていて、私はどぎまぎするのを抑えきれなかった。背中や腹には、ところどころ傷がある。騎士として数々の戦いを経験される中で、付いたものだろうか。
(これくらいで動揺してどうするの。夫婦になろうという仲なのよ?)
無理やり、自分に言い聞かせる。とはいえ、チュニックを完全に着せ終える頃には、私は安堵のため息をついていた。誤解されたらしいアルベール様が、クスクスと笑われる。
「そこまで緊張しなくても。これくらいの傷は、どうってことありませんよ。慣れている」
「え、ええ……」
その時、コンコンとノックの音がした。メイドであった。
「失礼いたします。お食事を、お持ちしました」
来たか、と私はまたため息をつきたくなった。これから、とんでもなく恥ずかしい時間が始まるのである。
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