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第十五章 明かされた秘密

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「ありがとうございます……、本当に」

 するとアルベール様は、ちょっと笑われた。

「ま、これでサリアン伯爵も、実感されたのじゃないですかね。モーリスさんが、いかに優秀な執事だったか。家のためになる使用人を選ぶことが、いかに重要か……。ちなみに今、サリアン伯爵邸に使用人は一人もおりません」
「ええ!?」

 私は、仰天してアルベール様のお顔を見た。涼しい表情で、彼が仰る。

「自分の欲得を優先して、あなたの意思を無視して監禁した使用人連中を、俺は許せなくてね。より給料の良い奉公先をチラつかせたのですよ。全員、飛びついてサリアン邸を去りました。……ですが」

 アルベール様は、にやっと笑われた。

「新しい奉公先はいずれも、待遇は一見いいが、ご主人に難ありの所でしてね。彼らは今、奴隷並みにこき使われて、半死半生の目に遭っているようですよ。うまい話には裏がある、というのを実感していることでしょう」

 前世で言えば、ブラック企業というところか。それでアルベール様は、サリアン邸に戻るのを止められたのか、とようやく合点する。

「使用人皆無の状態で、お父様はどうなさっているのかしら?」
「俺もさすがに気になったので、一度様子を窺いに行きました。ご自分でお掃除なさっていましたが」
「はあ……」

 あの、プライドだけは一流のお父様が、お掃除とは。それにしても、サリアン伯爵家はバラバラになってしまったなあ、と私は思った。バルバラ様は捕まるし、風の便りで聞いたところでは、ローズはボーイフレンドたちの家を転々としているとか。何だかんだ言っても、半分は血を分けた妹だ。つい心配になる気持ちを、私は抑えきれなかった。

「まあ、取りあえずは裁定を待ちましょう」

 私の不安を察したのか、アルベール様が気遣わしげに私の顔をのぞき込む。現在、バール男爵の顧客リストとドニ殿下の自供を元に、麻薬を使用していた貴族らは、次々と捕まっている。使用量や頻度に応じて、爵位剥奪、国外追放、幽閉など処分は様々なようだが、極刑に処せられる者はいない。販売ルートを取り仕切っていたドニ殿下が死罪を免れた以上、使用者だけを死刑にしたのでは不満が出ると、ジョゼフ五世陛下は判断なさったようだった。

 そうこうしているうちに、馬車は王宮に到着した。
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