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第十六章 もう一人の候補

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 それから一週間が経過した。その間に、麻薬に携わった貴族らの処分は、おおむね終了した。バルバラ様は、むち打ちを科された上、モルフォア王国から永久追放されることになった。これは、他の逮捕者らと比較しても、極めて重い。私を襲撃した事実も加味されているのだろう。実行犯の護衛の男と、マルク殿下に毒を盛っていた料理人も、同じ処分を受けた。

 そして、お父様サリアン伯爵は、短期間の謹慎を命じられた。ほぼ、形だけだ。本来なら、爵位を剥奪されてもおかしくないところなのだが、アルベール様の王室入りが決まったことで、それは見送られた。王子の妃の父親である以上、爵位を奪ってはまずい、というご判断だろう。

 アルベール様は、お父様のことを気にしておられた。正式な結婚の申し込みを、ついにしそびれてしまったからだ。私も、一度サリアン邸に様子を見に行ったのだが、すでにもぬけの殻だった。風の便りでは、どうやらお父様は、親類の家を転々とされているとか。

 その日、私はミレー邸の庭園にいた。今日は、サリアン邸からトピアリーが運ばれて来る日なのだ。屋敷を去った後、私が一番気にしていたのが、このトピアリーだった。するとミレー夫人が、ミレー邸にて預かろうと言ってくださったのだ。私とアルベール様が王宮へ移った後も、責任を持って世話してくださるという。

「そうね、そのトピアリーは、こちらに設置しましょう」

 使用人たちに指示しながら、私は思わず顔をほころばせていた。次々と運び込まれるトピアリーたちが、いずれも変わらぬ元気な姿だったからだ。聞けば、サリアン邸から使用人たちが去った後、アルベール様は人を派遣して、こっそり世話をしてくださっていたのだという。それを知って、私は彼に心から感謝したのだった。

(一つだけ、欠けていますけれどね)

 運ばれて来る中に、例のチェス型のトピアリーは無い。アルベール様によると、同じように世話をしていたのに、あれだけは無残に枯れ果ててしまったのだという。私には、亡きお母様の、ドニ殿下への怒りの表れのように感じられた。

 そこへ、執事が私を呼びに来た。

「モニク様。マルク殿下がお見えでございます」
「すぐに伺うわ」

 私は、立ち上がった。
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