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第十六章 もう一人の候補
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アルベール様に渡されたロケットは象牙製、エミールに渡された方はエナメル製で、デザインもそれぞれ違う。だが……。
アルベール様は、私をチラとご覧になると、ロケットの蓋を開けた。予想通りというか、そこにはジョゼフ五世陛下の肖像が収められていた。
「アルベール、すまなかったな」
焦ったように、ミレー公爵が仰る。
「早く渡してやれればよかったのだが、この肖像を見せるわけにはいかなかったから……」
「いえ、ご事情は承知していますから。……それに私にも、ようやく親の形見というものができて、嬉しいですよ。でもねえ……」
アルベール様は、複雑そうな表情になった。私は、ドニ殿下のお言葉を思い出していた。王妃殿下以外で陛下が愛されたのはシュザンヌ妃だけだった、と彼は信じ込まれていたけれど……。
(割と、大勢いらっしゃったみたいですわねえ……)
続いて、エミールも蓋を開ける。そこにも、全く同じ陛下の肖像が収められていた。
全員が、無言になる。ややあって、アルベール様がミレー公爵に向かって仰った。
「私の兄弟は、これで全部でございますか? もしや、他にも……」
「いやいや! マルク殿下以外で陛下がもうけられたお子は、ドニ殿下、お前、エミールの三人だけだ! 他にはいらっしゃらない」
力強くそう答えられた後、ミレー公爵は自信無さげに「多分」と付け加えられたのだった。
アルベール様は、私をチラとご覧になると、ロケットの蓋を開けた。予想通りというか、そこにはジョゼフ五世陛下の肖像が収められていた。
「アルベール、すまなかったな」
焦ったように、ミレー公爵が仰る。
「早く渡してやれればよかったのだが、この肖像を見せるわけにはいかなかったから……」
「いえ、ご事情は承知していますから。……それに私にも、ようやく親の形見というものができて、嬉しいですよ。でもねえ……」
アルベール様は、複雑そうな表情になった。私は、ドニ殿下のお言葉を思い出していた。王妃殿下以外で陛下が愛されたのはシュザンヌ妃だけだった、と彼は信じ込まれていたけれど……。
(割と、大勢いらっしゃったみたいですわねえ……)
続いて、エミールも蓋を開ける。そこにも、全く同じ陛下の肖像が収められていた。
全員が、無言になる。ややあって、アルベール様がミレー公爵に向かって仰った。
「私の兄弟は、これで全部でございますか? もしや、他にも……」
「いやいや! マルク殿下以外で陛下がもうけられたお子は、ドニ殿下、お前、エミールの三人だけだ! 他にはいらっしゃらない」
力強くそう答えられた後、ミレー公爵は自信無さげに「多分」と付け加えられたのだった。
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