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最終章 前世から来世へ

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(ローズ、さぞ後悔しているでしょうね……)

 私は、最後に会った時のローズの姿を思い出していた。ちなみに、彼女が持参したプレゼントは、薄っぺらいハンケチ一枚だった。

「でも、その教育期間も、あと僅かでしょうな……」

 マルク殿下がそう呟かれると、アルベール様は顔をしかめられた。

「そんなことを仰らないでください」

 ローズの王太子妃教育期間の終了は、すなわち殿下の死を意味している。だが殿下は、清々としたご様子だった。

「本当のことですよ。そしてその後こそが、ローズ嬢にとって、本当の教育の始まりです」

 このモルフォア王国では、国王が崩御した後、妃らは修道院へ入らされるのが決まりである。そしてその規則は、王太子の場合にも準用されるのだ。つまりマルク殿下がお亡くなりになった後、ローズを待ち受けているのは、修道院である。

「ローズ嬢のあのしぶとさからして、社交界から追放しようが、王都から追放しようが、ゾンビのように舞い戻ってくることでしょう。修道院は、最善の解決策です」

 私は、唖然としていた。最終的な目的は、それか。マルク殿下は、その規則を利用なさるおつもりで、あえて彼女を王太子妃に迎えられたのか。チラとアルベール様を見やれば、彼も絶句しておられる。そこまでは、想像されていなかったのだろう。

 
 
 ――そして、一ヶ月後。私たちは、マルク殿下の危篤の知らせを受けた。
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