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第一話 転生悪役令嬢は男装の騎士となる

05-4.

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「むぅ。大好きなお姉さまの頼みだから、しかたがないですね」

 エステルは抱き着くのを止める。

 それから、顎に指を当てて考えている。

「お姉さまは赤色が一番似合うんですよね。あの男と会うのは嫌ですけど。散々、お姉さまを無下に扱ったことを後悔させる為には、もっとも、お姉さまらしくて、お姉さまに似合うドレスを探さなければ」

 独り言だろうか。

 エステルは呪文のような言葉を口にしながら、ドレスに向かって一直線で歩いていく。どうやらお目当てのドレスがあるようだ。

 ……大丈夫かしら。あの子。

 アデラインは心配になってしまう。

 一週間後の討伐任務にエステルが耐えられるとは思えない。
なにより、独り言が多く、常識の斜め上を走り抜けるような性格が騎士団に馴染めるとは思えなかった。

 ……思い込むと制止の利かない子なのよね。

 前世でもそうであった。

 誰もが諦めたアデラインの処刑を、最後の最後まで足搔いたのはエステルだ。

 処刑が実行された直後に響き渡ったエステルの泣き声は、アデラインの耳に届いていた。もしかしたら、前世の記憶を持ったまま、生まれ変わったのは聖女であるエステルが引き起こした奇跡なのかもしれない。

「たしか。この奥に。お姉さまに似合う色のドレスを買ってもらったはずです」

 エステルはメイドの制止を聞かない。

 手入れをされているドレスたちを雑に扱わないでもらいたかったのだろう。エステルを制止しようとして、容赦なくその手を叩かれたメイドは泣きそうな顔で俯いてしまっている。

 ……悪い癖がでているわ。

 アデラインはエステルを止めない。

 言うことを聞かせようとすると、エステルがなにを要求してくるか、わかったものじゃないからだ。

「赤色のドレスに決まりそうよ。それに合わせたアクセサリーを探してちょうだい」

「かしこまりました。衣装を合わせてからではなくても、よろしいのですか?」

「エステルの選んだドレス以外を着てごらんなさい。あの子、一日中、癇癪を起して暴れまわるわよ」

 アデラインの言葉を聞き、エリーは思わず頷いてしまった。
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