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王立学院の日常

午後の授業

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「この様に、この国における王権の不可侵性については絶対である。
 改めて言うまでもなく、国王とは唯一無二の存在であり、国家の象徴であり、最高意思決定権を有する。」

昼食後の王立学院では午後最初の授業が行われていた。
スーの所属するクラスは、王権についてファント教官の授業である。

「さて、その国王には絶大な権力が集中するのだが…
 ネム学生。
 絶対王政であるがゆえに想定される問題はあるかね?」

「はい、教官。
 国王が急に病没した場合、国の運営に重大な影響を及ぼすと考えられます。」

「よろしい。」

ファント教官は満足したように頷く。

「権力の集中は、方針決定を迅速に行える半面、不慮の事態に対応できない危険性をはらむ。
 疾病の他にも戦乱による行方不明という可能性もあろう。
 また一極集中するが故に、例えば国王が悪政を敷いたとしても、その暴走を止めるのが難しいという可能性もある。
 …スー学生。
 その場合、合法的に暴走を食い止めるには、どうすればいいかね?」

指名されたスーは少し考え。

「実力をもって王を排除するのが有効と考えます。
 幽閉した後に裁判で合法的に処断することが可能です。」

「ふむ…その解答には不満足だな。
 いくら正義があろうとも、クーデターはでの法律では合法とは言い難い。
 更に言えば、国王派と反国王派で国家が分断される可能性もあるだろう。
 大規模な混乱は諸外国の介入を招く危険すらある。
 とはいえ、スー学生の回答は見当違いでもない。」

ファント教官は黒板にチョークを走らせる。

「この国では強力な絶対王政に抗する手段として、王権の停止が規定されている。
 王位継承権5位以内の人間が発議し、六大公爵全員の賛同があれば停止が可能だ。
 スー学生、何か疑問はあるかね?」

「…では。
 もし仮に、王位継承権1位の人間が簒奪さんだつを企てて公爵を抱き込んだ場合は?」

その言葉に、さすがに不敬でないかと教室がざわめく。
王太子殿下がクーデターで国権を奪うと言っているのだ。
それをファント教官は片手を挙げて制止し。

「この学院は国王陛下よりあらゆる発言が許されている。
 仮に先ほどのスー学生を不敬に問うのであれば、そもそも王権の不可侵性を議論すること自体が不敬。
 極論、国王陛下の万一に対応する法を規定することすら不敬となろう。」

もちろん、それでは話にならない。
国王も人間である以上はいつかは死ぬし、その時に慌てたのでは国家が混乱する。
「さて、スー学生の疑問であるが。
 それについても当然に規定されている、らしい。」

「らしい…ですか。」

「関係法令によると、王室法典参照とある。
 ただ、参照先の項目は機密扱いで、閲覧できるのは王族と法務関係部署の高位に限られる。
 スー学生の仮定に対する対処手段があるのだろうが、詳細は不明だ。
 ただ、相当に強力な手段と推定される。
 王族と六大公爵の決議をも凌駕しうる規定であるからだ。」

そこまで言ったところで、厳かな鐘の音が響く。

「…では、本日の授業はここまで。
 レポート課題と期限は掲示板を参照するように。」
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