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第一章
第12話 もっと仲良くなりたい
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「ムカつきますぅ!」
「なんてムカつくやつなの!?」
うわ~、荒れてるな~。
いつもは優雅なランチタイムなはずが、二人ともバカスカ食べてるよ。
それも全てはセカイくんの所為なんだろうけどね。
「ビッチビッチビッチビッチと! 私はビッチなどではありません!」
「私だって経験ないんだから!」
うん、まあそれはそうなんだけどさ……二人とももうちょい小さい声で話した方が……二人に憧れている人たちは男女問わずに多いのに、特に後輩ちゃんたちはビクビク怯えちゃってるよ。
「いや~、でも……なんか面白い人だったねぇ」
「「どこが!!」」
いやいや、面白かったと思うんだけどなぁ。
なんか常識がちょっとズレてるようなところもあるし、なんか荒っぽい男の子だけど、魔王を倒すとか熱いこと言ってるし、実際強いみたいだし。
「あんな人が期待の編入生など、ふざけている人にもほどがあります」
「正直、あんな奴と比べられてもし負けたりして、バカにされる……耐えられないわね」
比べられる……そっか、そうなんだよね。
勇者の娘である私たちは、常にそういう人たちと比較される運命にある。
だからこそ、アネストちゃんもディーちゃんも今では「負けてたまるか」と気合入って……
「あ~……ここいいか?」
「「「ッッ!!??」」」
っと、ここで男の子が私たちに話しかけ……って!
「セカイくん」
「よ、よぉ……オレンジビッ……オレンジ」
「いやいや、そもそもオレンジじゃないし! いや、私はシャイニだってば! あとビッチでもないからね!」
まさかのセカイくん。昼食をトレイに載せて、物凄い気まずそうに話しかけてきた。
どうして? 席は他にも空いている。
まだ友達がいないから顔見知りに話しかけ……って、それでわざわざ私たちに話しかける?
それとも勇者云々?
いずれにせよ……
「なにか御用でしょうか?」
「昼食中に話しかけないで。食欲が失せるでしょ?」
ほらぁ、アネストちゃんもディーちゃんも、メッチャ不機嫌だし。
「わ、悪かったよ……」
「「「……え?」」」
「その……あれだ、色々あって酷いことを言っちまった……すまん」
うわお!? なんと、セカイくんの方から謝った? 意外!
ちょっと拍子抜け? ううん、すごい荒っぽい人だけど、すごく強い……みたいだけど、それなのにこうして素直に謝ってくるなんて、いい人じゃん!
「ぜんぜんいいよぉ! むしろ、私たちも笑ってごめんなさいだよ、ね? アネストちゃん! ディーちゃん!」
「あっ、えっと、謝っていただけるのなら……私も、その……あなたの事情も知らずに笑って申し訳ありませんでした」
「ま、まぁ、ビッチビッチ言ったのはムカついたけど……謝ったんだし許してあげても……いいけど……」
これはちゃんと受け止めてあげないとね。
私だけじゃなく、アネストちゃんもディーちゃんも、ちょっと肩透かし食らったような感じだけどセカイくんの謝罪を受け入れて、仲直り。うん、良きかな。
「ねぇ、それじゃぁ、仲直りの記に一緒にご飯食べようよぉ~、セカイくん」
「あ、お、おお、いいのか?」
「どーぞどーぞ!」
丁度席も一つ空いているし、私はセカイ君の背中を押してちょっと強引だけど席に……ん?
「……あれ? なんだろ、視線が……あ」
そのとき、セカイくんを座らせて私は、そしてアネストちゃんもディーちゃんも周囲の視線に気づいた。
そっか、私たちいつも一緒に食べたり、たまにクラスの子たちとも食べたりしてるけど、男の子と一緒に食べるのは初めてだった……うわ、急に緊張してきた。
「なんか注目集めちまってるな……俺の所為か? それとも、お前らフツーに人気あって男と一緒にメシ食ってんのを物珍しさで見られてるのか? もしくは、男たちからは嫉妬か? 爆発しろって感じで……」
セカイくんも視線を感じたみたいで少し怪訝な顔で……って、セカイくん思ったことを口に出し過ぎじゃないの!?
「た、たしかに私たち、殿方と一緒にランチは初めてで……に、人気かどうかはべつに……」
「いつものことよ。私たち、何かやっても色々と気にされるし……気になるなら、別に無理して一緒にいなくてもいいわよ?」
いやいや、アネストちゃんもディーちゃんも人気あるからね。そりゃ男の子たちが……何故私だけ告白とかされたことないんだろ?
でも、これでセカイくんが居心地悪いようなら……
「まぁ、注目されるのはそこまで悪くねえだろ? 悪いことすりゃ評判は確かに一気に落ちるが、逆に良いことすりゃ一気に評価が上がるだろ? 皆が見てくれてるわけだしよ」
「セカイくん……」
「それに、俺は白い目で見られることには慣れてる。お前らが気にしないでいてくれるんなら、俺はここにいさせてもらうぜ」
でも、セカイくんは特に気にしないと、そう言ってそのまま私たちの前から動かないでいてくれる。
へぇ、何だろう……なんか……いいな……
「そう言っていただけると、私たちも嬉しいです」
「そ、そう。まぁ、それなら一緒にいればいいんじゃない」
アネストちゃんもディーちゃんもちょっと照れてる?
そうかもね。あんま二人相手にこうやって接する男の子って今までいないしね。
こうやって私たちを聖なる勇者たちの娘とかそういう感じで接しない男の子って、何だか……
「ああ。一緒にいさせてくれ! 俺はもっとお前らと仲良くなりたいんだ!!」
「「「ぶっ!?」」」
「「「「「ッッッッ!!??」」」」」
お、思わず水を噴き出しちゃっ……う、うわ、ビックリしたぁ!
「ちょ、せ、セカイくん、な、何を言ってるの!?」
「あ? な、なんだよ、何か変なこと言ったか?」
「いや、うん、友達として……だよね。うん、分かってるよ。でもね、あんま人前とか、ほら女の子にそんなガッツリ言うと勘違いされちゃうかなぁ~とか……」
うん、というか一瞬勘違いしたもん。
ドキッとしたし、アネストちゃんもディーちゃんもちょっと照れて……
「なんでだよ。これから共に頑張って、魔王軍をぶっ倒す仲間になるんだ! もっと知りたいって思って当然だろうが!」
「「「……………………はい?」」」
…………ん?
「……あ?」
「「「…………へ?」」」
ん~?
「いや、何でそこでキョトン顔してんだよ! お前ら聖なる勇者たちの娘なんだろ!? 将来は聖なる女勇者たちみたいな感じで、魔王軍と戦うんじゃないのか!?」
あぁ、なるほど、そういえばセカイくんはしょっぱなから魔王軍を倒すとか宣言してた意識高い系だったよ。
って、さっきは私たちを勇者の娘とか関係なしに接触してくれるってことで好感度上がってたのに、ガッツリ勇者の娘として見てるじゃん!
「え、ええ、その通りです……ええ、その通りですとも。私たちは将来勇者の娘として恥じぬ騎士となりて、この身を人類に捧げる所存です」
ここで、最初は戸惑ったみたいだけどすぐにキリっとした顔で頷くアネストちゃん。
まぁ、そうだよね。アネストちゃんだけは昔からこういう感じだから。
でも、本当の夢は……
「ん~……私は……いいかな~って」
「私もパス」
意識高いセカイくんには申し訳ないけど、私は全然そんな気はなかった。
それは、ディーちゃんも同じ。
「……え?」
そんな私とディーちゃんの言葉にポカーンとした様子のセカイくん。
なんだろう……せっかく私たちを勇者の娘としてでなく……って思ってたのに、なんかちょっと悲しいな。
私が将来の夢とか、ちょっと中途半端な結果を出すと、皆こんな感じだもんね……
「え~っと……いやいやいやいや……ん? お前ら、勇者の娘で……勇者になるためにこの学校にいるんじゃないのか?」
「いや~、私はさ……う~ん、お父さんの言いつけで仕方なく?」
「私は世間体のため。将来は違う道に進みたいもの」
ポカンとした顔のセカイくんは、ショックを受けてるのかな?
「ど、どうなって……話が違……ちょっと待て、俺の計画は……」
ん? 何かブツブツ言ってるけど、計画?
彼の中では、魔王軍と戦うための将来設計みたいなのがあったのかな?
でも、それで私たちがこんなんだから、それがダメになっちゃったとか……
「お、お前らは……その……い、今のこの世界の現状に何も思わないのか! へ、平和のために戦おうとかぁ……」
おおっと、物凄い動揺しているよ。
いやいや、そんなこと言われても……
「ええ、分かってるわ。だからこそ、パパたちとか兵の人たちが頑張ってくれるけど、私たちまでやる必要ないでしょ?」
「な、なに?」
そんなセカイくんに対して、ムスッとした表情で返すディーちゃん。
「戦争しているからって、世界の全人類が兵隊になるの? ケーキ屋、雑貨屋、レストラン、洋服屋、大工、色々な職業があって、それに進んでいる人もいるでしょ? なんでたまたま勇者の家系に生まれただけで、私たちだけは勇者の仕事限定にならないといけないのよ。死んだら終わりなのよ?」
「いや、そ、それはそうだけど……」
「だいたい、魔族と戦争してるからって、私自身は魔族に何か恨みがあるわけでもないわ。それとも、見ず知らずの人が殺された恨みを抱いて魔族と戦えとでも言いたいの?」
ディーちゃんはちょっと強い口調だけど、そうなんだよね。
私もそうだから……
「うん、そうだよ……たとえばさ……こ~、恵まれない人たちに~みたいに募金をするとかそういうのがあって、ちょこっとお小遣いを募金することはあるけど、自分のお金全部とか募金しないでしょ?」
「ま、まぁ……な……」
「でも、戦争に参加して人類のために戦えって、募金でお小遣い全部とかそういうレベルじゃないでしょ? 生涯に渡ってお金で買えない命をずっと懸けて戦うって……やだよそんなの……やりたいこといっぱいあるのに」
こんな私たちを世界はガッカリするよね。大人の人たちは失望するよね。
お父さんたちは残念に思うよね。
でも、私たちは嫌なんだもん……だから……
「自分の人生なんだから自分の好きなように生きた……ん? セカイくん?」
と、気づいたらセカイくんが物凄い肩落として俯いて……そんなにガッカリさせちゃったかな?
「……いや、ものすごい俺自身にブーメラン刺さったというか……うん……好きなように生きたい……ご、ごもっともすぎて反論できねえ……つーか、俺も昔はそうだったし……でも、これはまいったな……」
あれ? 私たちに対してガッカリするかな? って思ったけど、物凄い気まずそうな顔をしているや。
「なんてムカつくやつなの!?」
うわ~、荒れてるな~。
いつもは優雅なランチタイムなはずが、二人ともバカスカ食べてるよ。
それも全てはセカイくんの所為なんだろうけどね。
「ビッチビッチビッチビッチと! 私はビッチなどではありません!」
「私だって経験ないんだから!」
うん、まあそれはそうなんだけどさ……二人とももうちょい小さい声で話した方が……二人に憧れている人たちは男女問わずに多いのに、特に後輩ちゃんたちはビクビク怯えちゃってるよ。
「いや~、でも……なんか面白い人だったねぇ」
「「どこが!!」」
いやいや、面白かったと思うんだけどなぁ。
なんか常識がちょっとズレてるようなところもあるし、なんか荒っぽい男の子だけど、魔王を倒すとか熱いこと言ってるし、実際強いみたいだし。
「あんな人が期待の編入生など、ふざけている人にもほどがあります」
「正直、あんな奴と比べられてもし負けたりして、バカにされる……耐えられないわね」
比べられる……そっか、そうなんだよね。
勇者の娘である私たちは、常にそういう人たちと比較される運命にある。
だからこそ、アネストちゃんもディーちゃんも今では「負けてたまるか」と気合入って……
「あ~……ここいいか?」
「「「ッッ!!??」」」
っと、ここで男の子が私たちに話しかけ……って!
「セカイくん」
「よ、よぉ……オレンジビッ……オレンジ」
「いやいや、そもそもオレンジじゃないし! いや、私はシャイニだってば! あとビッチでもないからね!」
まさかのセカイくん。昼食をトレイに載せて、物凄い気まずそうに話しかけてきた。
どうして? 席は他にも空いている。
まだ友達がいないから顔見知りに話しかけ……って、それでわざわざ私たちに話しかける?
それとも勇者云々?
いずれにせよ……
「なにか御用でしょうか?」
「昼食中に話しかけないで。食欲が失せるでしょ?」
ほらぁ、アネストちゃんもディーちゃんも、メッチャ不機嫌だし。
「わ、悪かったよ……」
「「「……え?」」」
「その……あれだ、色々あって酷いことを言っちまった……すまん」
うわお!? なんと、セカイくんの方から謝った? 意外!
ちょっと拍子抜け? ううん、すごい荒っぽい人だけど、すごく強い……みたいだけど、それなのにこうして素直に謝ってくるなんて、いい人じゃん!
「ぜんぜんいいよぉ! むしろ、私たちも笑ってごめんなさいだよ、ね? アネストちゃん! ディーちゃん!」
「あっ、えっと、謝っていただけるのなら……私も、その……あなたの事情も知らずに笑って申し訳ありませんでした」
「ま、まぁ、ビッチビッチ言ったのはムカついたけど……謝ったんだし許してあげても……いいけど……」
これはちゃんと受け止めてあげないとね。
私だけじゃなく、アネストちゃんもディーちゃんも、ちょっと肩透かし食らったような感じだけどセカイくんの謝罪を受け入れて、仲直り。うん、良きかな。
「ねぇ、それじゃぁ、仲直りの記に一緒にご飯食べようよぉ~、セカイくん」
「あ、お、おお、いいのか?」
「どーぞどーぞ!」
丁度席も一つ空いているし、私はセカイ君の背中を押してちょっと強引だけど席に……ん?
「……あれ? なんだろ、視線が……あ」
そのとき、セカイくんを座らせて私は、そしてアネストちゃんもディーちゃんも周囲の視線に気づいた。
そっか、私たちいつも一緒に食べたり、たまにクラスの子たちとも食べたりしてるけど、男の子と一緒に食べるのは初めてだった……うわ、急に緊張してきた。
「なんか注目集めちまってるな……俺の所為か? それとも、お前らフツーに人気あって男と一緒にメシ食ってんのを物珍しさで見られてるのか? もしくは、男たちからは嫉妬か? 爆発しろって感じで……」
セカイくんも視線を感じたみたいで少し怪訝な顔で……って、セカイくん思ったことを口に出し過ぎじゃないの!?
「た、たしかに私たち、殿方と一緒にランチは初めてで……に、人気かどうかはべつに……」
「いつものことよ。私たち、何かやっても色々と気にされるし……気になるなら、別に無理して一緒にいなくてもいいわよ?」
いやいや、アネストちゃんもディーちゃんも人気あるからね。そりゃ男の子たちが……何故私だけ告白とかされたことないんだろ?
でも、これでセカイくんが居心地悪いようなら……
「まぁ、注目されるのはそこまで悪くねえだろ? 悪いことすりゃ評判は確かに一気に落ちるが、逆に良いことすりゃ一気に評価が上がるだろ? 皆が見てくれてるわけだしよ」
「セカイくん……」
「それに、俺は白い目で見られることには慣れてる。お前らが気にしないでいてくれるんなら、俺はここにいさせてもらうぜ」
でも、セカイくんは特に気にしないと、そう言ってそのまま私たちの前から動かないでいてくれる。
へぇ、何だろう……なんか……いいな……
「そう言っていただけると、私たちも嬉しいです」
「そ、そう。まぁ、それなら一緒にいればいいんじゃない」
アネストちゃんもディーちゃんもちょっと照れてる?
そうかもね。あんま二人相手にこうやって接する男の子って今までいないしね。
こうやって私たちを聖なる勇者たちの娘とかそういう感じで接しない男の子って、何だか……
「ああ。一緒にいさせてくれ! 俺はもっとお前らと仲良くなりたいんだ!!」
「「「ぶっ!?」」」
「「「「「ッッッッ!!??」」」」」
お、思わず水を噴き出しちゃっ……う、うわ、ビックリしたぁ!
「ちょ、せ、セカイくん、な、何を言ってるの!?」
「あ? な、なんだよ、何か変なこと言ったか?」
「いや、うん、友達として……だよね。うん、分かってるよ。でもね、あんま人前とか、ほら女の子にそんなガッツリ言うと勘違いされちゃうかなぁ~とか……」
うん、というか一瞬勘違いしたもん。
ドキッとしたし、アネストちゃんもディーちゃんもちょっと照れて……
「なんでだよ。これから共に頑張って、魔王軍をぶっ倒す仲間になるんだ! もっと知りたいって思って当然だろうが!」
「「「……………………はい?」」」
…………ん?
「……あ?」
「「「…………へ?」」」
ん~?
「いや、何でそこでキョトン顔してんだよ! お前ら聖なる勇者たちの娘なんだろ!? 将来は聖なる女勇者たちみたいな感じで、魔王軍と戦うんじゃないのか!?」
あぁ、なるほど、そういえばセカイくんはしょっぱなから魔王軍を倒すとか宣言してた意識高い系だったよ。
って、さっきは私たちを勇者の娘とか関係なしに接触してくれるってことで好感度上がってたのに、ガッツリ勇者の娘として見てるじゃん!
「え、ええ、その通りです……ええ、その通りですとも。私たちは将来勇者の娘として恥じぬ騎士となりて、この身を人類に捧げる所存です」
ここで、最初は戸惑ったみたいだけどすぐにキリっとした顔で頷くアネストちゃん。
まぁ、そうだよね。アネストちゃんだけは昔からこういう感じだから。
でも、本当の夢は……
「ん~……私は……いいかな~って」
「私もパス」
意識高いセカイくんには申し訳ないけど、私は全然そんな気はなかった。
それは、ディーちゃんも同じ。
「……え?」
そんな私とディーちゃんの言葉にポカーンとした様子のセカイくん。
なんだろう……せっかく私たちを勇者の娘としてでなく……って思ってたのに、なんかちょっと悲しいな。
私が将来の夢とか、ちょっと中途半端な結果を出すと、皆こんな感じだもんね……
「え~っと……いやいやいやいや……ん? お前ら、勇者の娘で……勇者になるためにこの学校にいるんじゃないのか?」
「いや~、私はさ……う~ん、お父さんの言いつけで仕方なく?」
「私は世間体のため。将来は違う道に進みたいもの」
ポカンとした顔のセカイくんは、ショックを受けてるのかな?
「ど、どうなって……話が違……ちょっと待て、俺の計画は……」
ん? 何かブツブツ言ってるけど、計画?
彼の中では、魔王軍と戦うための将来設計みたいなのがあったのかな?
でも、それで私たちがこんなんだから、それがダメになっちゃったとか……
「お、お前らは……その……い、今のこの世界の現状に何も思わないのか! へ、平和のために戦おうとかぁ……」
おおっと、物凄い動揺しているよ。
いやいや、そんなこと言われても……
「ええ、分かってるわ。だからこそ、パパたちとか兵の人たちが頑張ってくれるけど、私たちまでやる必要ないでしょ?」
「な、なに?」
そんなセカイくんに対して、ムスッとした表情で返すディーちゃん。
「戦争しているからって、世界の全人類が兵隊になるの? ケーキ屋、雑貨屋、レストラン、洋服屋、大工、色々な職業があって、それに進んでいる人もいるでしょ? なんでたまたま勇者の家系に生まれただけで、私たちだけは勇者の仕事限定にならないといけないのよ。死んだら終わりなのよ?」
「いや、そ、それはそうだけど……」
「だいたい、魔族と戦争してるからって、私自身は魔族に何か恨みがあるわけでもないわ。それとも、見ず知らずの人が殺された恨みを抱いて魔族と戦えとでも言いたいの?」
ディーちゃんはちょっと強い口調だけど、そうなんだよね。
私もそうだから……
「うん、そうだよ……たとえばさ……こ~、恵まれない人たちに~みたいに募金をするとかそういうのがあって、ちょこっとお小遣いを募金することはあるけど、自分のお金全部とか募金しないでしょ?」
「ま、まぁ……な……」
「でも、戦争に参加して人類のために戦えって、募金でお小遣い全部とかそういうレベルじゃないでしょ? 生涯に渡ってお金で買えない命をずっと懸けて戦うって……やだよそんなの……やりたいこといっぱいあるのに」
こんな私たちを世界はガッカリするよね。大人の人たちは失望するよね。
お父さんたちは残念に思うよね。
でも、私たちは嫌なんだもん……だから……
「自分の人生なんだから自分の好きなように生きた……ん? セカイくん?」
と、気づいたらセカイくんが物凄い肩落として俯いて……そんなにガッカリさせちゃったかな?
「……いや、ものすごい俺自身にブーメラン刺さったというか……うん……好きなように生きたい……ご、ごもっともすぎて反論できねえ……つーか、俺も昔はそうだったし……でも、これはまいったな……」
あれ? 私たちに対してガッカリするかな? って思ったけど、物凄い気まずそうな顔をしているや。
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