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【本編】5さい
2話 繋がり
しおりを挟む目が覚めた時は何処かも分からない暗い森の中だった。
子リスの俺は自身の柔らかく短い手で目を擦る。
(……ゆめ、みたきがする…かあちゃんとの、たのしい)
壁で打った体が痛い。
耳鳴りもして頭痛も酷かった。
夜も深けているのか、辺りを見渡しても真っ暗闇が続くだけで何も見えない。
身体能力の低い小型獣人に加え俺はまだ5歳になりたての子供だ。
闇雲に歩いたら危険だと言うのは前世でも学んだ事があるし、何よりも獣としての感が言っていた。
仕方なく夜が開けるまで待つことに決めた俺は、1番近くにある木に上り身体を丸め、体力回復に努めるよう目を瞑った。
この世界には野生の獣の他にも魔獣と呼ばれる魂が闇に囚われ自我を失い凶暴化した獣が存在する。
森の奥から聞こえるそれらの凶暴な鳴き声が聞こえる度に体を震わせながら、俺は必死に嗚咽を堪えた。
「ピッ……」
(かあちゃん……おれ、ひとりぼっちはいやだよ)
。。。。。。
カラスの枯れたさえずりと木々からすり抜ける光で目を覚ます。
太陽の光に照らされて周りがはっきりと見える。
未だ気味悪さは感じるものの夜の時よりも圧倒的に恐怖心は薄れていた。
(はぁ、おなかすいた……)
本来ならばぷっくりとしたリスの小さいお腹は、しばらくまともなご飯を食べれていない俺には無く、へこんでいる。
へこんだお腹に艶のない毛並み、食べられる物を探そうと木の上から辺りを見回すが、前世の何かで見た魔女の森の様に枯れ果てたこの森は木の実1つすらない事が今の俺にも容易に分かる。
でもこのままじゃ歩く事もままならないと考えた俺は、しょうがなく今登っている木から小さな口で少しずつ皮を剥き、よく噛んで食べる事にした。
(うっ……おいしくない……)
前世の事は断片的にしか覚えていない、でもその時食べたプリンが食べたい、あとチーズケーキとタルト。
俺は大の甘党だった気がするのだ。
俺はプリンを想像しながら、木の皮を食べる。
(うぇ……ぷりんとこれをくらべたおれがまちがいだった……)
しかし、木の皮を食べた事により少しだけ力が湧いたような気がする。
俺は噛み砕いた木の皮を少しだけ頬袋に貯めて森を抜ける事を決意する。
(あ、これ……)
木から降りようとした時、俺は自身の首に巻かれている物に気づき直ぐに確認する。
それは、母ちゃんが俺の為に刺繍をしてくれた白色の小さなスカーフだった。
刺繍には『リツ』と記されていた。
『リツ』は俺の名前だ。
産まれてから母ちゃんにしか呼ばれた記憶はないが、俺の大好きな名前。
そして、大好きな母ちゃんが作ってくれたこのスカーフが自分の元にある事に感謝し、涙が出た。
母ちゃんとの繋がりがまだ確かにある気がして、俺はスカーフを暫くの間抱きしめていた。
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