リス獣人の溺愛物語

天羽

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【本編】5さい

22話 これまでと変わらない

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「え!?リツは獣人だったんですか!?」


家族での夕食中、ラディは無表情の顔を崩し驚いた表情で俺を見つめる。


「ピィー!……ピ…」
(そうだぞ!……できそこないだけど……)


そう言う俺の姿をライオネルも驚いた様な顔付きで見つめていた。


「そうよ~リツちゃんが言ってたもの、間違いないわ」


ラディの表情が崩れたのが嬉しいのか、ラディ母ちゃんは「ふふっ」と笑顔で答える。


「しかし、魔力が少しも感じられません」


「あぁ、それなんだがーーーー」


そう言ってラディの父ちゃんはこれまでの考察を伝えた。
俺自身も分からない事が多すぎて、ラディ父ちゃんの話に耳を傾ける。


「ーーーそんな訳で、私の知り合いの魔導師に連絡したのだが、そいつが今魔獣討伐で隣国へと遠征に出かけているようで帰ってくるのが一月後となるらしい。
その魔導師が帰ってきたらリツくんを見てもらおうと思うのだが……リツくん、それでいいかい?」


「ピュィ!!」
(もちろん!!おれもしりたいし!)


俺についてここまで考えて行動してくれたラディ父ちゃんにペコリとお礼をした。




。。。。。。




部屋に戻ってもラディはまだ少し現状が理解できないのか、不思議な面持ちでベッドに座らせた俺の顎を撫でている。


「リツは本当に獣人なんだね」


「キュルルルル……」
(そうだぞ~……)


「瞳の色も珍しい色で綺麗だなって思ってたけど、魔力だってもしかしたら多いかもしれないって」


「キュイ~」
(じっかんわかないけどね~)


「人間みたいだなって思ってたけど、本当にそうだったなんてびっくりだよ……ははっ、これは大変だな……」


そう言うとラディは少し困った顔で笑う。


「……ピュキピー……?」
(おれ、じゅうじんじゃないほうがよかった……?)


今ラディに迷惑かけてる?


そう思うと俺の丸い耳と尻尾が力を無くし、俯く。
それに気付いたラディは「あ!ごめんねリツ…違うんだ」と言って俺のおでこに優しくキスをした。


「リツが落ち込む事なんて無いんだよ。確かにびっくりしたけど、リツが獣人ならもしもこれから獣人化出来るようになったら沢山お話できるし、そうなれたら凄く嬉しい。
勿論、獣人化が出来なくても僕は構わないけど」


「ピ……ピィ!!」
(おれも……おれもうれしい!)


「それに、僕言ったでしょ?リツが何者でも、僕はずっとリツが好きで、ずっと一緒にいるって……前はリツが嫌になるまでって言ったけど、もうリツが嫌って言ったって、僕が離れたくないんだよ」



そう言って眉を下げて笑うラディはもう一度俺のおでこに軽いキスをする。



ラディの唇が触れたおでこが熱い。
それに、俺と話したいと……一緒にいたいと思ってくれているラディの気持ちが嬉しく、俺の耳と尻尾は力を取り戻しユラユラと揺れた。


そんな俺を見たラディは軽く微笑むと「さっきのは……」と話を続けた。

「さっき大変だなって言ったのは……ほら、リツってお菓子に釣られて直ぐに僕の元を離れて、よく知りもしない人の所へ行ってしまうだろ?僕は獣人化したリツが悪い人達に捕まらないか心配で言ったんだよ……まぁ、リツの事は常に僕が側にいて守るから、リツが怖がる必要はないけど……それでもやっぱりリツが心配だから、これからはもっと警戒心をもってね」


「ピィ……」
(ラディ)


母ちゃんが居なくなって、どうしたらいいのか何もわからなかった。
ラディは出会ってからまだ日の浅い、素性も分からない様な俺が獣人と知っても尚、今までと変わらない優しさをくれる。
何も持ってない……何も返せない俺に、沢山の愛情をくれる。励ましてくれる。


……俺はこれからラディに何かを返して行けるかな……。


「ピピピ!!!」
(おれも!ラディのことまもる!ぜったい!おれもつよくなるから!)


大好きなラディにはずっと笑っていて欲しい。

大きくなるラディへの思いに、俺は気合いのガッツポーズでラディに告げる。


「へへっ、元気出たみたいだね。やっぱりリツは元気な方がずっといいよ」


そう言って笑うラディは俺の頬を優しく撫でた。





「それにしても、その綺麗な瞳といい顔つきと言い、リツが獣人になったらきっと凄く可愛いんだろうな」


「ピィ」
(そんなことないとおもうけど)


「僕、リツのこと守れるようにもっと剣術や魔法の稽古頑張るから、獣人化出来たらその可愛い姿を1番に見せてくれる?」


7歳とは思えない言葉に少し恥ずかしく思う俺だったが、それと同じくらい俺の事を思ってくれていることが伝わってきて俺は首を縦に振る。


まぁ、あんなに美形の家族がいたら、俺が獣人化しても可愛いなんて思わないと思うけど……。

そう思う俺だった。
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