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15さい
70話 報告
しおりを挟む……あぁ、まって!!行かないで!!!!
俺の、俺のーーーーーーーーー!!!
お菓子達ぃ~!!!!!!!
バターたっぷりのクッキーやフィナンシェ……。
甘くて濃厚な生クリームの乗ったいちごのショートケーキにサクサクのアップルパイ……。
軽い口当たりのマカロン、俺の大好きなピーナッツマフィン!!!!!
どれもこれも、楽しみにしていた美味しそうな俺のお菓子達。
あれだけ楽しみにしていたのに、一つ……また一つと俺の元から消えていく。
待って、待ってよぉ~……まだ、一口も食べれてないのにぃ~!!!!!
「あ……まって……お、おれのぉ……お、かし……うぁ」
「ふはっ……リツ朝だよ、ほら起きて……リーツ…」
「うぅ……まって!!!おれの!おかしっっ!!!!」
はっ!と目が覚め、手を伸ばしたままベッドから勢い良く起き上がる俺に、ポカンと口を開けて見つめるラディ。
だが次の瞬間、ラディは俺を見つめたまま大きく笑いだしたのだった。
「あはははっ!……全くリツは、一体どんな夢を見てたんだ?すごく幸せそうに寝ていると思ったら苦しそうにしたり……僕は見てて飽きなかったけど」
「はぇ?……ラディ……の…へや?」
王城でのパーティーに行っていたはずだったのだが、目が覚めると見慣れたラディの広い部屋にいて呆然とする俺。
そんな俺の頭を、未だ笑いの止まらないラディがゆっくりと髪を梳くように撫でる。
「そう、僕の部屋だよ。リツが寝ている間に王城のパーティーは終わって、帰ってきたんだよ」
「あ……そう、だった……」
あの後俺は酷い睡魔に襲われてすぐに寝てしまったんだ。
分かっていた事だったが、王城のお菓子を食べ損ねた俺はガックリと肩を落とす。
「ふふ、そんなに落ち込まないで。実はアルベールがお詫びも兼ねてリツの為に王城のお菓子を送ってくれるらしいよ」
「え!!!本当か!!!!」
俺はラディに勢い良く近付き目を輝かせる。
そんな俺をニッコリと見つめたラディはコクリと頷いた。
「やったぁ!!流石は王太子殿下であらせられるアルベール様!!!こんな俺にまで優しいなんて…なんて器の広い御方なんだぁ!!!ありがとうございますぅ!!」
俺はベッドから降りると窓辺から空を見上げ祈る様な仕草をする。
「ーーーーねぇ、リツ……僕との事ももちろん忘れていないよね?」
「ピァ!!!……あぁ、うん!も、もちろん!!忘れるわけないじゃんかぁ!」
後ろからギュッと包み込む様に抱きしめてくるラディの声は、何故か怖いくらいの威圧感があり、振り返ると笑っているのに笑っていない……そんな様子のラディが見つめていてすごく怖かった。
「わ、忘れるわけないじゃん……だって俺……すごく、嬉しかったんだもん……」
ラディに向き合う様に体勢を変え、鍛え上げられた大きくて広い胸に顔を埋める。
ドキドキと心臓が煩くて、きっとラディにも聞こえているだろう……そう思うともっと緊張して顔が赤くなる。
「リツ……うん、僕もすごく嬉しかった……大好きだよ」
ギュッと抱き締め返してくれたラディは俺のつむじにチュッとキスを落とす。
「本当にもう……可愛すぎ……いいかいリツ、君はもう僕の恋人なんだから他の男に必要以上近付いては駄目だよーーーーーーー分かった?」
「え?でもそれってラオとかヘレスにもーーーーーー」
「リツ、分かったよねーーーーー」
「ーーーお、おぉう……分かった……」
「うん、いいこだね」
先程の怖い笑顔から、いつもの優しい笑顔に戻ったラディが俺の頭をポンポンと撫でる。
「……それは分かったけど……あのさ……俺、ラディの恋人になったの?」
「当たり前でしょ?でもすぐにリツを僕の婚約者にするから安心してね」
「え?俺、ラディの婚約者になるの?」
「そうだけど……もしかして嫌だなんて言わないよね……?」
……え?なんで怒ってるの!?
さっきのことと言い、俺に向けられる笑みがすごく怖いんだけど……。
それに、心做しかラディの背後から黒いモヤが出てる気がする。
そんなラディに俺はブンブンと両手を振り急いで訂正する。
「そ、そんな事ない!!凄く嬉しい!!」
「それじゃあ今から父様と母様に報告しに行こうか」
……ちょっと散歩行ってくるわー……みたいな感じで軽く言うラディの言葉に俺は一瞬言葉を失う。
「え?……えぇぇぇ!!!!!!
ちょ、ちょっと待ってよ!!!絶対反対される!!俺みたいな奴が公爵家の嫡男であるラディと結婚したいなんて言っても、はいそうですかって簡単に話が通るわけないよ!!!!ね!一回落ち着いて考えよう!?」
慌ててラディの服を掴んで、ブンブンと勢い良く揺らす俺を見て何故だか楽しそうに笑っているラディ。
「大丈夫だって……だから今から行くよリツ」
「ふぇ?ちょ、ちょっと待っーーーーわぁぁ!!無理だってぇぇ!!!!」
ヒョイと軽々お姫様抱っこされた俺は、強引にカオン様とパール様の部屋へと連れていかれ、先程の件について報告したのだった。
反対されるのを覚悟して、ただギュッと目を瞑っていた俺は今から言われるであろう言葉を想像し肩を震わした。
……だが……。
「全く……ちょっと遅すぎなんじゃない?私ずっとラディアスからその言葉を聞くのを待っていたのよ?なのにちーっとも進展無いからちょっと焦ったわ!」
「ある時を境に、1ミリも関心の無かった数多ある全ての婚約話を断ると私に言ったな……あの時の真剣な表情を私は今でも忘れていない……成長したなラディアス……。
ーーーーいいじゃないか、既に国王様とも話している事だ……お前のアカデミー入学までには何とかしよう」
「はい、ありがとうございます」
「リツ君……ラディアスをよろしく頼む」
「え?……あ、はい!!!」
はぇ?……なんか思ってたより何倍もあっさり了承されたんだけど……?
想像してたものとは真逆の光景に、俺は何一つとして付いて行くことが出来なかった……。
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