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#2 ぼくとわたしと禁断の数字【糾弾ホームルーム篇】

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「当然、セーフでぇぇす。五十嵐小雪さんも【デスナンバー】を回避ぃ。やや興が削げてしまうのは仕方がありませんが、順番が回ってきた時点で無事に切り抜けられるという運もまた、実力のひとつと言えるでしょう。五十嵐さん、良かったですねぇ」

 姫乙のやる気のない拍手に、しかし小雪は胸に手を当てて安堵の溜め息らしきものをついた。最初から【2】は絶対的に安全な数字であるが、やはり兵隊達に銃口を一斉に向けられるというのはストレスであるし、それから解放された時の安堵感というのは良く分かる。小雪のリアクションも当たり前の反応だといえよう。

「ではぁ、次に行きましょう。次にぃ。さて、お次は伊勢崎君でぇぇす。全国のぉ、伊勢崎君ファンのみなさまぁ、お待たせいたしましたぁ。彼の勇姿をぉ、とくとご覧下さぁぁぁい」

 順番的に次は伊勢崎。このゲームの基本的な運び方は、まだ【デスナンバー】が分かっていない以上、数字をひとつに留める牛歩作戦が基本となる。恐らく、ここで伊勢崎は【3】を宣言して、切り抜けようとするはずだ。

「あんまりはやし立てるのはやめて欲しいなぁ。僕なんて、そこまで大した男でもないんだしさぁ」

 ナルシストが良く言うものである。ただ、この状況においても、姫乙と冷静にやり取りができる伊勢崎の存在は大きい。元より根拠のない自信があるだけなのだろうが、それでも彼の存在は心強い。

「でも、この場面だけ、ちょっと格好つけさせてもらうよ」

 格好ならば普段からつけているのではないか――という突っ込みはやめておく。それにしても、兵隊達に囲まれ、銃口を突きつけられてもなお、平然としていられるのは大したものである。ただ、格好をつけるもなにも、この状況では誰しもが牛歩作戦で行くしかないはず――いいや、もうひとつだけ道が見える。このタイミングだからこそ見えてくる、もうひとつの道が。

「僕が宣言するのは【3】【4】【5】だよ。これにて僕の【アントニオ】が成立する。そうだろう? 姫乙」

 ここでまさかの【アントニオ】狙い。ただ、伊勢崎も根拠があって【アントニオ】を狙いに行ったのであろう。まず【3】【4】【5】のうち【5】はそもそも【デスナンバー】に指定されていない。そして【4】は芽衣自身が無実の証明を行うために指定した可能性が強い数字だ。ゆえに事実上【4】と【5】は事実上で安全な数字と考えることができる。残るは【3】となるわけだが、どちらにせよ【3】は伊勢崎が最低限で宣言しなければならない数字。ゆえに、どうせならばと【アントニオ】を狙いに行ったと思われる。
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