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#1 毒殺における最低限の憶測【糾弾ホームルーム篇】

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「ではぁ、大丈夫ということで話を進めまぁす。もう全国放送も始まっていますしぃ、お茶の間のみなさんをお待たせするにも限界がありますのでぇ、資料にざっと目を通して下さい。お察しの通りぃ、昨日起きた復讐についての鑑識の結果になりますぅ。そうですねぇ、5分ほど時間を差し上げますぅ。その時間で資料を確認した後、即座に【糾弾ホームルーム】を行うとしましょう」

 姫乙はそう言うと、テレビクルー達に向かって「ちょっと私のことをアップで映して下さい」と、注文をつける。それを受けてか、カメラマンが一歩前に出て、姫乙へとレンズを向けた。

「全国のお茶の間のみなさま。いよいよ始まる【糾弾ホームルーム】は、CMの後で!」

 なんだか良く分からない前振りを見せつつ、カメラに向かってポーズまで決めた姫乙。ニヤリと笑みを漏らし「はい、CM行って下さい」とテレビクルーへと要求。テレビクルー達はお互いの顔を見合わせ、アンジョリーヌが代表して口を開いた。わざわざマイクを通して――である。

「あの、うちは国営ですので……基本的にCMは入りません。このままぶっ通しで生放送ということになっていますし」

 ポーズを決めたまま固まった姫乙は「あの、番組の良いところになると必ず入る邪魔な感じの5分ばかりのニュースは?」と別の道を模索する。

「まだ、その時間ではないので――」

 またしてもアンジョリーヌのマイクを通した一言に否定され、なんだか姫乙が全国区レベルで滑ったみたいな形になってしまった。

 姫乙がわざとらしく咳払いをする。その様子をカメラが無言のまま映し出していた。もちろん、アンジョリーヌも余計なところでは喋らない。

「え、えぇと諸君らは資料へと早急に目を通すように。そ、そうだ! この大日本帝国政府革命省の姫乙南大臣が、わざと失態を晒すような振りをして、諸君らが資料に目を通すための時間稼ぎをしているのです。本当ならば、こんなことをする必要もないのに、わざと醜態を晒すことにより、時間稼ぎをしている心優しき姫乙の心遣いを――無駄になさらぬよう、資料に目を通すのです! さぁ、今のうちに!」

 ちらちらとカメラのほうに視線を向けている上に、その口調もやけに説明口調。盛大に滑ったことを認めれば良いのに、プライドが許さなかったようだ。あまりにも白々しい。しかし、資料に目を通す時間が延長されるのは助かる。情報だけを与えられて即座に本番となるよりも、ある程度情報を整理した上での本番のほうが良いに決まっており、同じ一発勝負でも全く性質は異なってくるだろう。
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