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第3章学園入学
今が正すのに良いタイミング
しおりを挟む冷静に考えてみたら破滅シミュレーションゲームでは無くて恋愛シミュレーションゲームだった。各キャラ1人1人何かしら関わりを持つのは当然だ。
第2王子とヒロインが仲良い=第2王子ルートと言う結論にはまだならない。
(だけど、今まで観察していて、何となくヒロインの好みはわかったわ。年上は好みでないかもしれない。)
根拠はクラスの担任には心底興味無いのが伝わってくるからだ。ルイスに話しかけるとき、頬を染めているもじもじした感じと違う。
と言う事はだ。1番お勧めしたいお兄様はヒロインの好みでは無いかも知れない。
紙に書き起こして、これからの課題を並べているうちにライザは閃いた。
(……何でこの手を今まで思いつかなかったんだろう。)
まず、私はこの学園生活において破滅回避を目標にしている。
それとは別に目標がある。ルイスの親離れだ。
流石に今のまま行ったらルイスとライザは本当に結婚してしまいそうだ。
それはまずい。私が未成年を誑かした犯罪者になってしまう。
一見別の目的のようにも見えるが、変化している状況を書き加えると、利害が一致するところがある。
そう、今まで変化は書かないで作戦を立てたから失敗したのだ。
「このまま行けば、ルイスは悪役令息にはならないと私は確信している。なら。
ヒロインとルイスも、ありルートなのでは?いや出来れば、万が一の為避けて欲しいところだけど。
第2王子に行くならルイスよね…。」
※皇太子はオネェの為除外
ルイスが何故変化してしまったのか、それは異物である前世の記憶を持ったライザと関わったからだ。
でも第2王子は違う。ゲームのままだとしたら、ゲームのままシナリオが動いてしまうかもしれない。
(そうと決まればまず私のするべき事は…ー)
お姫様抱っこをされた時の事が頭をよぎり、ライザはポツリと呟いた。
「……。前から考えていたけれど。そろそろこの関係も潮時だったしね。」
ーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーーーー
「今日は改めて話があるの。」
学園の休日に、ライザはルイスのいるアウステル公爵家へ訪れた。
嬉しそうに出迎えてくれたルイスは客間に案内してくれて、2人で紅茶を呑んでいた途中で話を切り出した。
「うん、どうしたの?もう体調は平気なの?」
「…コホン、そうねまずは。先日はどうも有難う。」
「ふふっ。すっかり顔色が良くなったね。ほっとしたよ。」
本当に嬉しそうに笑みを浮かべている若き青年となったルイスの姿が眩しくて、ライザは目を細めた。
「そろそろね、私達の関係を正そうと思うの。」
「?それは…」
机に置かれた紙を見て聞かれた問いに、ライザは静かに返した。
「私とルイスの婚約を白紙にしましょう。お兄様にも伝えておきました。〝本人達の意思を尊重する〟との事です。」
※兄グレイはライザが当主である感覚でいます。
その時、開いた窓から2人の間にザワリと風が吹き込んだ。
暫く風の騒めきがやまず、少し違和感を感じつつも手にしていた紅茶を置いたルイスが先程までの笑みを消して、ライザを見据えた。
交わう視線を逸らさずにライザは、はっきりと言った。
「貴方はもうあの時とは違う。立派な公爵になったわ。勉学も疎かにせず、本当に良くやっている。」
「わたし自身には不満が無いと言う事だね。なら何故、急にそんな事を言うのかな?」
「いつかは言おうと思っていたの。
ルイス、貴方はもう〝悪夢の日〟とは違うのよ。
あの日確かに貴方は多くのものを失ったかも知れないけれど、その後貴方は多くのものを得た。」
ルイスが頼れる人間はもう、私や爺やだけではない。
皇太子と言う友達?も見つけた。そこから年相応な笑顔を見れるようになって来た。
王族会議でも良いようにされず立ち回れているし。そこで心強い人脈も出来たと言う。
公爵家の運営も1人で出来るようになった。他者に人生の舵を委ねられず、正常な領地運営によりあの美しい森で、精霊達と領民を治められている。
己の力に頼れるようになったのは、本当に大きな成長だ。
新しく雇った使用人達も頼れる方々が多いとか。
あとは
学園で生涯の伴侶になる素敵な女性を見つけ、卒業後に家族と言うものを築くだけ。
これでルイスの手には〝悪夢の日〟に失ったものと同じ…いやそれ以上の幸せな人生が戻ってくる筈だ。
「……。」
「私から離れて、盲目的にならず、ちゃんと周りを見てみなさい。そうしたら貴方を幸せにしてくれる女性が見つかるわ。」
ライザはそう言い切った後、立ち上がってくるりと身を翻しルイスから背を向け、最後に一言添える。
「…今直ぐにとは言わないわ。それを書いたら郵送で送ってくれたら良いから。」
そのまま部屋から出て行くために、歩みを進めてドアノブに手をかけて開こうとした。
すると、後ろから伸びて来た、血管の浮き出たライザ好みな手がトンッとその扉を押さえつける。
「わたしを幸せに出来るのは、ライザだけだよ。」
頭上で、紡がれた言葉にライザは瞳に動揺を浮かべながらもスッと目を閉じる。
「ー・何故貴方が私に拘るのかわからないけれど。
これを期に、もっと周りを見なさい。そうしたら気付くわ。私は誰かを幸せに出来る人間ではないの。」
「そんな事はない。わたしは、君といて幸せを感じなかった事はない。」
「貴方が私に拘るのは、たまたまあの時、そこに居たのが私だったから。そんな執着は悲しいだけだし、盲目的で健全で無いわ。」
「そうだよ。あそこに居たのは
他の誰でもなく、ライザだ。
それからも多くのものを、わたしに与えてくれたのも君だ。」
「……」
「それで芽生え大きくなってゆく気持ちが〝健全でなく間違いだから手離せ〟と今更突き放すなら、
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ー・いや、何の拠り所もない彼を、あのまま放って置いたら悪役令息になる危うさを持っていた。
だから、此処が1番良い正せるタイミングだ。間違いでは無いはず。
これから3年の学園生活の為に、早めに私との関係を精算し、距離をおくべきなのだ。
今のように何時迄も私べったりのままではいけない。
ルイスの人生を共に歩む人は絶対に、私ではダメだ。
何故なら私は。
「前にも言ったけど私は愛よりお金が大事だと思っているの。
私は、人を愛せないのよ。
だけど貴方には、愛してくれる人が必要なの。
あの日失った家族のように、貴方を愛し家族になってくれる人がね。」
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