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二章 ハーレムルート

僕を骨抜きにしたのは…

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「にゃぁん」

「………」

「にゃんっ」

「んふ…可愛いねぇ、にゃんこっ」

僕を骨抜きにした愛しい恋人は茶トラの猫さん。

学園に迷い混んだのか住み着いているのか猫さんは僕よりも学園の庭を熟知していた。
どんな散歩コースなのか着いていったり、一緒に戯れたりと幸せな時間を過ごしている。

「にゃぁん」

「気持ちいい?」

人に慣れてるようで撫でられるのが好きみたいな猫さんは僕の思う存分撫でさせてくれる。

誰かに飼われてるのかな?

「にゃぁん…にゃぁ?…にゃ゛っ…」

猫さんは何かに気付き驚いたように走り去ってしまった。

「えっ猫さん?猫…」

一人取り残された哀れな男がここにいます。

未練たらしく縋るように伸ばした腕が空しい…。

ガサガサ

「えっ?」

誰か人が来た。

もしかして猫さんは人に驚いて逃げちゃったのかな?
もしかして、今から来る人は悪い人?
どうしよう…怖い…逃げなくちゃ…足が動かない…。
ライ…アレックス…エド…リック…助けて…。

「…」

「…ぇっ?」

現れたのは…。

「フィン…コック?」

「王子…さま?」
 
「…耳が…それに…尻尾も出てるぞ。」

「へっ」

王子に言われ耳を触れば確かにフサフサしてる。

ガサガサ

「へ?」

誰かが来るのかも…どうしよう耳が…。
戻さなきゃって思えば思う程焦って上手く戻らない。

どうしよう…どうしよう…どうしよう。

「わっ…ぇ?」

「静かにしてろ。」

王子の胸の中に収まり暗闇の中に閉じ込められていた。

「…でさぁ、色っぽかったわけ。」

「…そればっかだな…あっおいっ」

「んっなんだよ…王子っ」

ガサガサと近付いて来たのはきっと会話していたこの二人だと思う。
そして王子に気付いてあたふたしている…。
分かるそのあたふた、僕も今そうだから。
王子の腕の中に隠されながら緊張と不安で心臓が壊れそうだった。
王子に気付かれちゃうから静まれって祈るのに、余計王子の香りだったりシャツ越しの腹筋を意識してしまう。

「もう良いか?」

「あっはい申し訳ありません。」

王子から逃げるように二人は走り去った。

「………。」

状況が分からず王子の邪魔にならないうに静かに動かず、極力王子に触れないようにも気を配った。
王子のジャケットの中は安心というより緊張の方が勝っている。
ゆっくり視界が明るくなりひんやりとした空気を感じ解放された。

「行ったみたいだ…耳と尻尾はまだなのか?」

「…あっ…はい……出来たっ。」

気持ちが落ち着いたのか、耳も尻尾もしまうことに成功した。

「…収まったな。」

「はい…」

「こんなところで何していたんだ?」

「何?…あっ…えっと…」

「あの二人と待ち合わせか?」

「違いますっ、猫さんがいて遊んでたら急に飛び出していっちゃって…」

「………。」

猫さんと遊んでだって、なんだか子供みたいだよね。
もしかして王子は僕に呆れてる?

「私が来たからだな。」

「へ?」

「小動物は魔力に敏感で、私の魔力に驚いて逃げたんだろう。」

「…あ~あ…そう…なんだ。」

だから猫さんは勢いよく走っていったのか、納得。

なら、また会えるよね。

「王子様は顔色良いですね。眠れてますか?」

魔道具の効果が現れたのか王子の体調は良さそうに見える。

「あぁ」

「食事は?」

「確りと食べている。」

「そっかぁ、良かった。」

「………。」

王子の腕には見慣れないアクセサリーが嵌められていた。

か細いチェーンのブレスレットではなく、確りとして簡単には外れることのない太めのバングルの様だった。
過度な装飾はないがゴールドに控えめの大きさのダイヤモンドがあしらわれていた。
王子と他愛ない会話をする日が来るとは思っては居なかったが案外普通で良かった。
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