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オマケの続き
立食パーティー
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私は公爵のエスコートで会場に登場した。
招待客も夫婦で登場するとは思っておらず驚いている。
…だが、私には分かる。
女性達私には一切目もくれず、公爵のみを見て骨抜きにされているのが。
「本日は~」
主催者の私が挨拶しているというのに、女性達の耳には届いてないだろう。誰一人私と視線が合わず高い位置に向いている。
公爵がどこに視線を向けておるのか盗み見れば、誰もいない遠くを見つめていた。私が挨拶を終えると公爵に視線を送る。
明らかに「私も挨拶するのか?」と目で訴えていたので、笑顔で頷いた。
「本日は妻の立食パーティーに参加していただきありがとうございます。ごゆっくりお楽しみください」
とても簡潔に述べ、彼は周囲の人に聞こえるよう私だけに「すまない、仕事で行かなければ…」と、この場を離れることを伝えてきた。
私も参加だけでなくエスコートまでさせてしまった事を申し訳なく思っていたので、「大丈夫ですよ、時間がないのにありがとうございます」と言い、彼を見送る。
彼が去る姿を招待客である女性達は、どうにか引き留められないかと顔に出ているも、完全に彼が会場から去ったのを見届けてしまった。
妖艶なランクーベ公爵、女性であれば「一度は夢見る相手」という噂に翻弄されながらも、今回のパーティーの趣旨を思い出す。
「あぁ、行ってしまわれたわ…」
「帰りにまたお会いできないかしら?」
「いつ見てもお美しいわぁ」
「あの妖艶さは健在ですね」
密かに女性達が会話していたが、私にも完全に聞こえていた。
「ランクーベ夫人、あの王都での宣伝は本当ですか?」
女性達の会話に気を取られていた私に声を掛けたのは、初めて会話する男性だ。
どんなに魅力的なランクーベ公爵だが、男性は魅了される事はかった。
「あの宣伝を見ていただけたんですね?嬉しいです。宣伝内容は事実です」
「そうなんですね。あの時の夫人の演奏に驚き、もう一度拝聴したいと思っておりました」
宣伝の何かを確認されるとは思っていたが、まさか演奏会…私の曲を聴きたいと言ってくれる人がいる事に驚いた。
「…そのような事を言って頂けて嬉しいです」
お祭りやかき氷についての返答は考えていたが、私の演奏については考えおらず言葉が出てこなかった。
あっ、あれはお世辞だったのか?あぁ、社交性がない私には咄嗟にその判断が出来ず本音として受け取ってしまった。
すぐに話題は変わるだろうと思っていたが、彼は音楽について熱く語りだす。まさかの音楽大好き貴族だった。
「これから暑くなる時期に南部へは…」
どんなに楽しい会話をしていても、不満の声は障害を避けてするっと耳に入ってくる。
私が言葉の主を探すとすぐに見つける事が出来た。
その女性は、先ほど人一倍熱く公爵を見つめたいた女性。年齢でいえば公爵と同じだろう。
「そうですね。暑い時期になりますと南部は避けてしまいたいですが、今回新しいデザートを披露するそうですよ?」
私は音楽の話を切り上げ、不満を漏らす女性に話し掛けた。
今回開催したお茶会は新たなデザートの宣伝のため。女性は良いフリをしてくれた。
「新しいデザート?」
「ですよね?トリルム伯爵」
私はトリルム伯爵に丸投げ…バトンを渡した。
「はい、北部と合作した冷たいデザートを販売する予定です」
「へぇ、冷たい…」
不満が消えない女性は冷たいデザートというものを信じられないといった様子だった。
「公爵夫人、こちらにあれを運んでもよろしいでしょうか?」
会話を聞いていたファイン男爵が私に許可を求めた。
きっと、冷蔵庫の事だろう。
「えぇ、構いませんわ」
私が許可すると男爵は使用人に指示をして冷蔵庫を運ばせ、一緒に料理人も控えている。
見たこともない箱に新しい物好きの貴族達は興味津々だ。
「こちらは冷蔵庫といい、食品を冷やすことが出来ます」
先ほどまで緊張していた男爵が自信ありげに宣言するも、皆が訝しげな表情をするもので一気に自信が何処かへ行ってしまった。
「では中を…」
フォローするように伯爵が扉を開ける。
そこには見たこともない果物が入っていた。
「それは…」
「こちらは、南部で栽培していますマロンゴーです」
マロンゴー?聞いたことないが、見た目はマンゴーだった。
伯爵が冷蔵庫の中にあるマロンゴーを一つ手に取り、料理人に渡す。料理人はマロンゴーを手早く種の部分を取り除き、さいの目に切れ目をいれて底に手をあて押し上げた状態にして皿に盛る。
一人につき半分…は用意できなかったので、マロンゴーを四分の一のサイズに切り分ける。
「頂いても?」
興味津々の男性が代表して聞く。
「勿論です」
箱に興味がある男性や果物に興味のある女性が手を出すも、先ほど不満を漏らした女性は手を伸ばさなかった。
マロンゴーを手にしている者達は、恐る恐る口にする。
「んっ」
「んぅ~ん」
「…冷たい」
「…甘いっ」
「…これがマロンゴー」
分かりやすい反応を見せた人が宣伝となり、様子を伺っていた人達もマロンゴーを手に取る。
「これはっ」
「おいしいっ」
「南部の果物は暑い時期に南部に行かなければ食べられないのに…」
「私はジャムでしか食べたことないですよ…」
「…マロンゴー初めて見ました」
マロンゴーは完熟で収穫するので、日持ちがしないので王都の市場に並ぶことはない。さらに言えば、今までは道路整備が不充分だったので途中で傷が付き痛みやすく、直接貴族と取引しても移送中に見た目が悪くなり返品や処分が相次ぐ。なので貴族はマロンゴーを王族に献上されたジャムでしか見たことがない者がほとんどで、ジャムの元の果物を見たことがあるのは、本格的に暑くなる前に南部に行く変わり者だけ。
今は道路も整備され、今回はマロンゴーを紙に包み試行錯誤を重ねながら冷蔵庫に入れ南部から移動してきたので、冷えてさらに甘くなっている。
南部で食べた事のある人間も、市場で常温のマロンゴーしか味わっていないので冷たいことに驚いていた。
「トリルム伯爵、これは何故冷たいんですか?」
「この箱がそうさせているんですか?」
「これはいくらですか?」
果物を冷たくしているのはこの箱だと目を着けた貴族から矢継ぎ早に質問されていた。
「こちらは、北部で作られた商品で「冷蔵庫」というものです」
「「「「冷蔵庫」」」」
それから、伯爵は北部の男爵を紹介し二人で冷蔵庫とマロンゴーを広めていく。二人の説明に、招待客は引き込まれていく。
「そして、これらの案を閃いたのがランクーベ公爵夫人です」
「…へっ?」
なんの前触れもなく、突然二人に紹介され瞬きを繰り返した。
二人からそんな話になるとは聞いてきなかった。
「…いえ…私は…」
今まで二人に注目していた視線が一気に私に集中する。
「謙遜しないでください。冷蔵庫は、王妃選定中に夫人が発案したものです」
「これから南部で売り出す「かき氷」も夫人の企画です。是非とも皆様に味わって頂きたいです」
二人は私が今回の主催者というのを考慮して、私を立ててくれていたんだと思う…私としてはそんなことしなくていいのに…だった。
招待客も夫婦で登場するとは思っておらず驚いている。
…だが、私には分かる。
女性達私には一切目もくれず、公爵のみを見て骨抜きにされているのが。
「本日は~」
主催者の私が挨拶しているというのに、女性達の耳には届いてないだろう。誰一人私と視線が合わず高い位置に向いている。
公爵がどこに視線を向けておるのか盗み見れば、誰もいない遠くを見つめていた。私が挨拶を終えると公爵に視線を送る。
明らかに「私も挨拶するのか?」と目で訴えていたので、笑顔で頷いた。
「本日は妻の立食パーティーに参加していただきありがとうございます。ごゆっくりお楽しみください」
とても簡潔に述べ、彼は周囲の人に聞こえるよう私だけに「すまない、仕事で行かなければ…」と、この場を離れることを伝えてきた。
私も参加だけでなくエスコートまでさせてしまった事を申し訳なく思っていたので、「大丈夫ですよ、時間がないのにありがとうございます」と言い、彼を見送る。
彼が去る姿を招待客である女性達は、どうにか引き留められないかと顔に出ているも、完全に彼が会場から去ったのを見届けてしまった。
妖艶なランクーベ公爵、女性であれば「一度は夢見る相手」という噂に翻弄されながらも、今回のパーティーの趣旨を思い出す。
「あぁ、行ってしまわれたわ…」
「帰りにまたお会いできないかしら?」
「いつ見てもお美しいわぁ」
「あの妖艶さは健在ですね」
密かに女性達が会話していたが、私にも完全に聞こえていた。
「ランクーベ夫人、あの王都での宣伝は本当ですか?」
女性達の会話に気を取られていた私に声を掛けたのは、初めて会話する男性だ。
どんなに魅力的なランクーベ公爵だが、男性は魅了される事はかった。
「あの宣伝を見ていただけたんですね?嬉しいです。宣伝内容は事実です」
「そうなんですね。あの時の夫人の演奏に驚き、もう一度拝聴したいと思っておりました」
宣伝の何かを確認されるとは思っていたが、まさか演奏会…私の曲を聴きたいと言ってくれる人がいる事に驚いた。
「…そのような事を言って頂けて嬉しいです」
お祭りやかき氷についての返答は考えていたが、私の演奏については考えおらず言葉が出てこなかった。
あっ、あれはお世辞だったのか?あぁ、社交性がない私には咄嗟にその判断が出来ず本音として受け取ってしまった。
すぐに話題は変わるだろうと思っていたが、彼は音楽について熱く語りだす。まさかの音楽大好き貴族だった。
「これから暑くなる時期に南部へは…」
どんなに楽しい会話をしていても、不満の声は障害を避けてするっと耳に入ってくる。
私が言葉の主を探すとすぐに見つける事が出来た。
その女性は、先ほど人一倍熱く公爵を見つめたいた女性。年齢でいえば公爵と同じだろう。
「そうですね。暑い時期になりますと南部は避けてしまいたいですが、今回新しいデザートを披露するそうですよ?」
私は音楽の話を切り上げ、不満を漏らす女性に話し掛けた。
今回開催したお茶会は新たなデザートの宣伝のため。女性は良いフリをしてくれた。
「新しいデザート?」
「ですよね?トリルム伯爵」
私はトリルム伯爵に丸投げ…バトンを渡した。
「はい、北部と合作した冷たいデザートを販売する予定です」
「へぇ、冷たい…」
不満が消えない女性は冷たいデザートというものを信じられないといった様子だった。
「公爵夫人、こちらにあれを運んでもよろしいでしょうか?」
会話を聞いていたファイン男爵が私に許可を求めた。
きっと、冷蔵庫の事だろう。
「えぇ、構いませんわ」
私が許可すると男爵は使用人に指示をして冷蔵庫を運ばせ、一緒に料理人も控えている。
見たこともない箱に新しい物好きの貴族達は興味津々だ。
「こちらは冷蔵庫といい、食品を冷やすことが出来ます」
先ほどまで緊張していた男爵が自信ありげに宣言するも、皆が訝しげな表情をするもので一気に自信が何処かへ行ってしまった。
「では中を…」
フォローするように伯爵が扉を開ける。
そこには見たこともない果物が入っていた。
「それは…」
「こちらは、南部で栽培していますマロンゴーです」
マロンゴー?聞いたことないが、見た目はマンゴーだった。
伯爵が冷蔵庫の中にあるマロンゴーを一つ手に取り、料理人に渡す。料理人はマロンゴーを手早く種の部分を取り除き、さいの目に切れ目をいれて底に手をあて押し上げた状態にして皿に盛る。
一人につき半分…は用意できなかったので、マロンゴーを四分の一のサイズに切り分ける。
「頂いても?」
興味津々の男性が代表して聞く。
「勿論です」
箱に興味がある男性や果物に興味のある女性が手を出すも、先ほど不満を漏らした女性は手を伸ばさなかった。
マロンゴーを手にしている者達は、恐る恐る口にする。
「んっ」
「んぅ~ん」
「…冷たい」
「…甘いっ」
「…これがマロンゴー」
分かりやすい反応を見せた人が宣伝となり、様子を伺っていた人達もマロンゴーを手に取る。
「これはっ」
「おいしいっ」
「南部の果物は暑い時期に南部に行かなければ食べられないのに…」
「私はジャムでしか食べたことないですよ…」
「…マロンゴー初めて見ました」
マロンゴーは完熟で収穫するので、日持ちがしないので王都の市場に並ぶことはない。さらに言えば、今までは道路整備が不充分だったので途中で傷が付き痛みやすく、直接貴族と取引しても移送中に見た目が悪くなり返品や処分が相次ぐ。なので貴族はマロンゴーを王族に献上されたジャムでしか見たことがない者がほとんどで、ジャムの元の果物を見たことがあるのは、本格的に暑くなる前に南部に行く変わり者だけ。
今は道路も整備され、今回はマロンゴーを紙に包み試行錯誤を重ねながら冷蔵庫に入れ南部から移動してきたので、冷えてさらに甘くなっている。
南部で食べた事のある人間も、市場で常温のマロンゴーしか味わっていないので冷たいことに驚いていた。
「トリルム伯爵、これは何故冷たいんですか?」
「この箱がそうさせているんですか?」
「これはいくらですか?」
果物を冷たくしているのはこの箱だと目を着けた貴族から矢継ぎ早に質問されていた。
「こちらは、北部で作られた商品で「冷蔵庫」というものです」
「「「「冷蔵庫」」」」
それから、伯爵は北部の男爵を紹介し二人で冷蔵庫とマロンゴーを広めていく。二人の説明に、招待客は引き込まれていく。
「そして、これらの案を閃いたのがランクーベ公爵夫人です」
「…へっ?」
なんの前触れもなく、突然二人に紹介され瞬きを繰り返した。
二人からそんな話になるとは聞いてきなかった。
「…いえ…私は…」
今まで二人に注目していた視線が一気に私に集中する。
「謙遜しないでください。冷蔵庫は、王妃選定中に夫人が発案したものです」
「これから南部で売り出す「かき氷」も夫人の企画です。是非とも皆様に味わって頂きたいです」
二人は私が今回の主催者というのを考慮して、私を立ててくれていたんだと思う…私としてはそんなことしなくていいのに…だった。
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