43 / 55
第43話:優柔不断な自分が嫌になります
しおりを挟む
ジェファーソン様が戻って来てから、早1ヶ月半。毎日なぜか私に絡んでくるのだ。はっきり言って私はもう、ジェファーソン様と共に歩む未来なんて考えられない。
あの日マリンと抱き合っているジェファーソン様の姿、思い出しただけで吐き気がするのだ。
でも…
「皆様、実は私、グラディー様とよりを戻すことにいたしましたの」
頬を赤らめながらそう呟いたのは、アリア様だ。
「アリア様、正気なのですか?グラディー様はマリン様と関係を持っていたのですよ」
「分かっております。でも…何度も何度も頭を下げるグラディー様を見ていたら、もう一度彼を信じたいと思う様になったのです。もしかしたら私にも至らない点があったのかもしれませんし…」
もう一度彼を信じようか…
実は不貞を働いた令息たちが戻って来てから今までで、よりを戻した令嬢はアリア様で3人目だ。もしかしたらもっと増えるかもしれない。なんだかんだ言って、皆元婚約者を愛していたのだろう。どれほど傷つけられても、それでももう一度彼らを信じたいだなんて…
「アリア様までよりを戻すだなんて…私は絶対によりなんて戻しませんわ」
「私もです。そもそも我が国でタブーとされている不貞行為を働いた元婚約者とよりを戻すだなんて、吐き気がしますわ。マーガレット様もそう思うでしょう」
隣で怒っていた令嬢に、急に話を振られた。
「ええ、私は目の前で2人が愛し合っている姿を目の当たりにしたので。どうしても受け入れる事は出来ませんわ。それに…」
既に私の心には、ローイン様がいる。ローイン様がいてくれたから、今の私があるのだ。
「マーガレット様には、ローイン様がいますものね。私も元婚約者よりも、ずっといい令息を探さないと!」
彼女は強いな。あれほどまでに元婚約者に言い寄られているのに、全く揺るがないのだから。私ももちろん、ジェファーソン様に揺らぐつもりはない。それでもこう毎日言い寄られると、心がざわつくのだ。
私も彼女たちの様に、大々的にローイン様と恋仲になってしまった方がいいのかしら?
視線の先には、新しい恋人と仲睦まじく過ごす、同じ被害令嬢たち。彼女たちは、新しい恋人とのラブラブ攻撃で、一切元婚約者たちを寄せ付けていないのだ。既に彼女たちの元婚約者たちは、諦めた模様。
皆少しずつ前に進んでいるのに、私だけなんだか取り残された気分だわ。ついため息が出てしまう。
「マーガレット、こんなところにいたのだね。今日は王都で有名なお菓子を持ってきたんだよ。一緒に食べよう」
油断しているうちに、ジェファーソン様が私の元にやって来たのだ。
「ジェファーソン様、何度も申し上げておりますが、私はあなた様と関わりたくはないのです。どうかもう、放っておいてください!」
そう突っぱねてみるが…
「お菓子を食べるくらい、いいだろう?はい、1口」
私の口にお菓子を放り込もうとしている。こうやっていつも流されてしまうのだ。これは拒否しないと!そう思った時だった。
「マーガレット様、こちらにいらしたのね。少し話がしたいのですが、よろしいかしら?」
私の元にやって来たのは、公爵令嬢でノエル殿下の婚約者、サラ様だ。公爵令嬢のご登場に、皆一歩引いた。もちろん、ジェファーソン様もだ。
そのままサラ様に手を引かれ、中庭へとやって来た。
「マーガレット様も大変ですね。まだあの男に付きまとわれているだなんて。随分と押されてきている様ですが、大丈夫ですか?」
優しい眼差しでサラ様が語り掛けてくれる。もしかして、助けてくれたのだろうか?
「サラ様、お助けいただき、ありがとうございました」
「そんな事はいいのですよ。今日はローイン様がどうしても外せない用があって、私が代わりに来たのです。それにしても、しつこい男ですわね。もしかしてマーガレット様も、彼とよりを戻したいと考えているのですか?何人かの令嬢が、元婚約者と寄りを戻したと聞くし」
コテンと首をかしげるサラ様。無邪気なしぐさがとても可愛らしい。
「とんでもありません。私はジェファーソン様の姿を見ると、マリンと愛し合っていた時の姿を思い出し、吐き気がするのです。ただ…あまりにも当たり前の様にやって来るので、なんだか無下にも出来なくて…」
「マーガレット様は、随分お優しいのですね。でも…その優しさは相手の為にはなりませんわよ。情けは人の為にならず。マーガレット様が本当にジェファーソン様と今後添い遂げるつもりがないのでしたら、態度で示すべきですわ。あなた様は口ではジェファーソン様にきつい事を言っておりますが、結局行動では彼を受け入れている。だからジェファーソン様がつけあがるのですわ」
サラ様の言葉が胸に突き刺さる。
確かに私がやっている事は、優しさなんかじゃない。ただの優柔不断なだけなのだ…
サラ様の的を得た指摘に、何も言えずに俯いてしまう。
あの日マリンと抱き合っているジェファーソン様の姿、思い出しただけで吐き気がするのだ。
でも…
「皆様、実は私、グラディー様とよりを戻すことにいたしましたの」
頬を赤らめながらそう呟いたのは、アリア様だ。
「アリア様、正気なのですか?グラディー様はマリン様と関係を持っていたのですよ」
「分かっております。でも…何度も何度も頭を下げるグラディー様を見ていたら、もう一度彼を信じたいと思う様になったのです。もしかしたら私にも至らない点があったのかもしれませんし…」
もう一度彼を信じようか…
実は不貞を働いた令息たちが戻って来てから今までで、よりを戻した令嬢はアリア様で3人目だ。もしかしたらもっと増えるかもしれない。なんだかんだ言って、皆元婚約者を愛していたのだろう。どれほど傷つけられても、それでももう一度彼らを信じたいだなんて…
「アリア様までよりを戻すだなんて…私は絶対によりなんて戻しませんわ」
「私もです。そもそも我が国でタブーとされている不貞行為を働いた元婚約者とよりを戻すだなんて、吐き気がしますわ。マーガレット様もそう思うでしょう」
隣で怒っていた令嬢に、急に話を振られた。
「ええ、私は目の前で2人が愛し合っている姿を目の当たりにしたので。どうしても受け入れる事は出来ませんわ。それに…」
既に私の心には、ローイン様がいる。ローイン様がいてくれたから、今の私があるのだ。
「マーガレット様には、ローイン様がいますものね。私も元婚約者よりも、ずっといい令息を探さないと!」
彼女は強いな。あれほどまでに元婚約者に言い寄られているのに、全く揺るがないのだから。私ももちろん、ジェファーソン様に揺らぐつもりはない。それでもこう毎日言い寄られると、心がざわつくのだ。
私も彼女たちの様に、大々的にローイン様と恋仲になってしまった方がいいのかしら?
視線の先には、新しい恋人と仲睦まじく過ごす、同じ被害令嬢たち。彼女たちは、新しい恋人とのラブラブ攻撃で、一切元婚約者たちを寄せ付けていないのだ。既に彼女たちの元婚約者たちは、諦めた模様。
皆少しずつ前に進んでいるのに、私だけなんだか取り残された気分だわ。ついため息が出てしまう。
「マーガレット、こんなところにいたのだね。今日は王都で有名なお菓子を持ってきたんだよ。一緒に食べよう」
油断しているうちに、ジェファーソン様が私の元にやって来たのだ。
「ジェファーソン様、何度も申し上げておりますが、私はあなた様と関わりたくはないのです。どうかもう、放っておいてください!」
そう突っぱねてみるが…
「お菓子を食べるくらい、いいだろう?はい、1口」
私の口にお菓子を放り込もうとしている。こうやっていつも流されてしまうのだ。これは拒否しないと!そう思った時だった。
「マーガレット様、こちらにいらしたのね。少し話がしたいのですが、よろしいかしら?」
私の元にやって来たのは、公爵令嬢でノエル殿下の婚約者、サラ様だ。公爵令嬢のご登場に、皆一歩引いた。もちろん、ジェファーソン様もだ。
そのままサラ様に手を引かれ、中庭へとやって来た。
「マーガレット様も大変ですね。まだあの男に付きまとわれているだなんて。随分と押されてきている様ですが、大丈夫ですか?」
優しい眼差しでサラ様が語り掛けてくれる。もしかして、助けてくれたのだろうか?
「サラ様、お助けいただき、ありがとうございました」
「そんな事はいいのですよ。今日はローイン様がどうしても外せない用があって、私が代わりに来たのです。それにしても、しつこい男ですわね。もしかしてマーガレット様も、彼とよりを戻したいと考えているのですか?何人かの令嬢が、元婚約者と寄りを戻したと聞くし」
コテンと首をかしげるサラ様。無邪気なしぐさがとても可愛らしい。
「とんでもありません。私はジェファーソン様の姿を見ると、マリンと愛し合っていた時の姿を思い出し、吐き気がするのです。ただ…あまりにも当たり前の様にやって来るので、なんだか無下にも出来なくて…」
「マーガレット様は、随分お優しいのですね。でも…その優しさは相手の為にはなりませんわよ。情けは人の為にならず。マーガレット様が本当にジェファーソン様と今後添い遂げるつもりがないのでしたら、態度で示すべきですわ。あなた様は口ではジェファーソン様にきつい事を言っておりますが、結局行動では彼を受け入れている。だからジェファーソン様がつけあがるのですわ」
サラ様の言葉が胸に突き刺さる。
確かに私がやっている事は、優しさなんかじゃない。ただの優柔不断なだけなのだ…
サラ様の的を得た指摘に、何も言えずに俯いてしまう。
90
あなたにおすすめの小説
「無能な妻」と蔑まれた令嬢は、離婚後に隣国の王子に溺愛されました。
腐ったバナナ
恋愛
公爵令嬢アリアンナは、魔力を持たないという理由で、夫である侯爵エドガーから無能な妻と蔑まれる日々を送っていた。
魔力至上主義の貴族社会で価値を見いだされないことに絶望したアリアンナは、ついに離婚を決断。
多額の慰謝料と引き換えに、無能な妻という足枷を捨て、自由な平民として辺境へと旅立つ。
「地味で無能」と捨てられた令嬢は、冷酷な【年上イケオジ公爵】に嫁ぎました〜今更私の価値に気づいた元王太子が後悔で顔面蒼白になっても今更遅い
腐ったバナナ
恋愛
伯爵令嬢クラウディアは、婚約者のアルバート王太子と妹リリアンに「地味で無能」と断罪され、公衆の面前で婚約破棄される。
お飾りの厄介払いとして押し付けられた嫁ぎ先は、「氷壁公爵」と恐れられる年上の冷酷な辺境伯アレクシス・グレイヴナー公爵だった。
当初は冷徹だった公爵は、クラウディアの才能と、過去の傷を癒やす温もりに触れ、その愛を「二度と失わない」と固く誓う。
彼の愛は、包容力と同時に、狂気的な独占欲を伴った「大人の愛」へと昇華していく。
【完結】記憶喪失の令嬢は無自覚のうちに周囲をタラシ込む。
ゆらゆらぎ
恋愛
王国の筆頭公爵家であるヴェルガム家の長女であるティアルーナは食事に混ぜられていた遅延性の毒に苦しめられ、生死を彷徨い…そして目覚めた時には何もかもをキレイさっぱり忘れていた。
毒によって記憶を失った令嬢が使用人や両親、婚約者や兄を無自覚のうちにタラシ込むお話です。
旦那様、離婚しましょう ~私は冒険者になるのでご心配なくっ~
榎夜
恋愛
私と旦那様は白い結婚だ。体の関係どころか手を繋ぐ事もしたことがない。
ある日突然、旦那の子供を身籠ったという女性に離婚を要求された。
別に構いませんが......じゃあ、冒険者にでもなろうかしら?
ー全50話ー
愛を求めることはやめましたので、ご安心いただけますと幸いです!
風見ゆうみ
恋愛
わたしの婚約者はレンジロード・ブロフコス侯爵令息。彼に愛されたくて、自分なりに努力してきたつもりだった。でも、彼には昔から好きな人がいた。
結婚式当日、レンジロード様から「君も知っていると思うが、私には愛する女性がいる。君と結婚しても、彼女のことを忘れたくないから忘れない。そして、私と君の結婚式を彼女に見られたくない」と言われ、結婚式を中止にするためにと階段から突き落とされてしまう。
レンジロード様に突き落とされたと訴えても、信じてくれる人は少数だけ。レンジロード様はわたしが階段を踏み外したと言う上に、わたしには話を合わせろと言う。
こんな人のどこが良かったのかしら???
家族に相談し、離婚に向けて動き出すわたしだったが、わたしの変化に気がついたレンジロード様が、なぜかわたしにかまうようになり――
【完結】婚約者様、王女様を優先するならお好きにどうぞ
曽根原ツタ
恋愛
オーガスタの婚約者が王女のことを優先するようになったのは――彼女の近衛騎士になってからだった。
婚約者はオーガスタとの約束を、王女の護衛を口実に何度も破った。
美しい王女に付きっきりな彼への不信感が募っていく中、とある夜会で逢瀬を交わすふたりを目撃したことで、遂に婚約解消を決意する。
そして、その夜会でたまたま王子に会った瞬間、前世の記憶を思い出し……?
――病弱な王女を優先したいなら、好きにすればいいですよ。私も好きにしますので。
身代わりの公爵家の花嫁は翌日から溺愛される。~初日を挽回し、溺愛させてくれ!~
湯川仁美
恋愛
姉の身代わりに公爵夫人になった。
「貴様と寝食を共にする気はない!俺に呼ばれるまでは、俺の前に姿を見せるな。声を聞かせるな」
夫と初対面の日、家族から男癖の悪い醜悪女と流され。
公爵である夫とから啖呵を切られたが。
翌日には誤解だと気づいた公爵は花嫁に好意を持ち、挽回活動を開始。
地獄の番人こと閻魔大王(善悪を判断する審判)と異名をもつ公爵は、影でプレゼントを贈り。話しかけるが、謝れない。
「愛しの妻。大切な妻。可愛い妻」とは言えない。
一度、言った言葉を撤回するのは難しい。
そして妻は普通の令嬢とは違い、媚びず、ビクビク怯えもせず普通に接してくれる。
徐々に距離を詰めていきましょう。
全力で真摯に接し、謝罪を行い、ラブラブに到着するコメディ。
第二章から口説きまくり。
第四章で完結です。
第五章に番外編を追加しました。
婚約破棄された令嬢は“図書館勤務”を満喫中
かしおり
恋愛
「君は退屈だ」と婚約を破棄された令嬢クラリス。社交界にも、実家にも居場所を失った彼女がたどり着いたのは、静かな田舎町アシュベリーの図書館でした。
本の声が聞こえるような不思議な感覚と、真面目で控えめな彼女の魅力は、少しずつ周囲の人々の心を癒していきます。
そんな中、図書館に通う謎めいた青年・リュカとの出会いが、クラリスの世界を大きく変えていく――
身分も立場も異なるふたりの静かで知的な恋は、やがて王都をも巻き込む運命へ。
癒しと知性が紡ぐ、身分差ロマンス。図書館の窓辺から始まる、幸せな未来の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる