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第37話:やっぱり私は幸せになれないのでしょうか

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テラスに向かうのかと思いきや、なぜか中庭の奥へと入って行くクラシエ様。

「あの、どこまで行くのですか?お茶ならテラスで飲んだらよろしいのでは?」

「私、以前マリア様に失礼な事をしてしまったでしょう?あれ以降、マリア様のお友達に目を付けられておりまして…私がマリア様に近づこうとすると、すごい形相で睨まれてしまって…きっと今回も私とマリア様が一緒にいるところを目撃されてしまえば、抗議されるのではと思いまして…」

ライアンの事を言っているのだろう。確かにライアンは、あの時の事を物凄く怒っていて、常にクラシエ様を睨みつけていた。見つけたらやめる様に言うのだけれど…まだ睨みつけていたのね…

「クラシエ様、本当にごめんなさい。私からもきつく言っておくわ」

「いいえ、私が悪いので、気にしないでください。さあ、この辺りまでこれば、きっと邪魔も入りませんわ」

周りを見渡すと、木々が生い茂っている。確かにこんな場所なら、誰も来ないだろう。まさか貴族学院に、こんな場所があったなんて知らなかったわ。

「さあ、お茶にしましょう。ごめんなさい。こんなコップしかなくて。このお茶、とても美味しいのですよ」

そう言うと、ポットに入ったお茶を私に注いでくれた。確かにとてもいい香りがする。早速1口飲んでみる。

「クラシエ様、このお茶、とても美味しいですわ」

「本当ですか?それは嬉しいです。沢山あるので、もっと飲んでください」

そう言うと、お茶を追加してくれた。

そうだわ!

「宜しければ、このクッキーをお茶請けに」

お昼に食べようと思っていたクッキーを、出しそびれたのだ。せっかくなので、この機会に食べる事にした。

「まあ、よろしいのですか?ありがとうございます」

嬉しそうにクッキーを食べてくれている。綺麗なピンクの髪にクリクリした水色の瞳、本当に可愛らしい子だ。ヒューゴ様が好きになるのもわかる。

でも、今回の生ではどうやら2人は恋仲になっていない様子。それでもヒューゴ様は私の事をきっぱり忘れ、前に進むと言ってくれたし、きっと近い将来、2人は結ばれるだろう。

クラシエ様の可愛らしい雰囲気を見ていたら、そんな気がした。

さあ、私もクッキーを食べよう。そう思ったのだが、なぜだろう、頭が急に痛くなってきた。それに、急に心臓をギューッと握られるような痛みも感じ始めた。どうしよう…息が、しにくい…

「あの…クラシエ様…せっかくのティータイムなのに、ごめんなさい…急に体調が悪くなってきましたので、今日はもう帰りますわ…」

そう伝えて立ち上がろうとしたのだが、立ち上がる事も出来ない。

「大丈夫ですか?マリア様」

「ええ、大したことないとは思うのですが…あの、出来れば誰か呼んできてもらえないでしょうか…」

「分かりましたわ、すぐに運びますね」

なぜか嬉しそうな顔をしているクラシエ様。すると、1人の男性がこちらにやってきた。

「さあ、マリア様を例の場所に運んで」

例の場所?一体何を言っているの?

「あの…クラシエ様?」

そのまま男性に担がれると、さらに奥へと進んでいく。

「一体どこに…行くのですか?」

私の問いかけに答えない2人。もしかして私、嵌められた?

少し進むと、古い小屋に着いた。そしてその小屋に乱暴に放り入れられた。

「クラシエ様…」

「あなたが悪いのよ。ヒューゴ様に近づいたから。ヒューゴ様は私のものなのに、私が側室になって、次の国王を生むはずだったのに。それをあなたが滅茶苦茶にしたのよ。ヒューゴ様はあなたが生きている限り、あなたを追い求めるわ。だから、ここで死んで。そうすればヒューゴ様は私のもの。1度目の時の様に…」

1度目の時?まさか…

「クラ…シエ…さ」

「もう話さない方がいいのではなくって?あなたが飲んだ毒はね、徐々に体中をめぐらせていく毒なの。12時間後には息絶えるから、それまでせいぜいこの小汚い小屋で苦しむ事ね。それでは、さようなら、マリア様」

今まで見た事がないほど冷たい瞳で私を見つめると、そのまま扉を閉め、鍵を掛けてしまった。

「ま…て」

そう叫びたいが、声が出ない。呼吸もしづらく胸も張り裂けそうなくらい痛いし、苦しい。きっとこんな辺鄙な場所、誰にも気づかれないだろう。

結局2度目の生も、私は幸せになれないのね…
ライアン、私が死んだら悲しむかしら?リリアやミリアナも、ショックを受けるわよね。お父様やお母様、ヴァンもきっと泣くだろう。

こんなところで死にたくない。でも、どうする事も出来ない…

「ライ…アン…た・す・け・て…」

「ライ…アン…愛しているわ…」

こんな事なら、ライアンに気持ちをきちんと伝えておけばよかった。それだけが心残りだ。でも、もう遅い。もう私は…

絶望と痛み、苦しみの中、ただただ私は、ライアンの名前を呼び続ける事しかできなかった。
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