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ヒューゴとマリアのIFストーリー

僕の15歳の誕生日を迎えました

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会議が終わった後。

「殿下、さっきの資料、殿下が調べられたのでしょう?素晴らしかったです。確かに殿下のおっしゃる通り、一夫多妻制は問題も多い。私も殿下の力になります」

そう声を掛けてきてくれた貴族も、何人かいた。さらにマリアの父親からも

「殿下、マリアを大切に思ってくださっているだけでなく、きちんと王家の事も考えていらしたのですね。それなのに先ほどは失礼な事を申してしまい、本当に申し訳ございませんでした。どうかこれからも、娘をよろしくお願いいたします」

そう言って頭を下げられたのだ。マリアの父親に認めてもらえた事が嬉しくて、つい頬が緩む。

そんな中、僕に声を掛けてきたのは母上だった。

「ヒューゴ、よくここまでの資料を集めたわね。あまり自己主張をしないあなたが、こんな風に皆の前で意見をするなんてね。でも、きっとそれだけマリア嬢の事が大切だからなのね…ヒューゴ、私もあなたを応援するわ」

そう言うと、少し寂しそうに笑った母上。正直母上が、僕の味方に付いてくれるとは思っていなかった。

「母上が一夫多妻制の廃止に賛成してくれるなんて、意外ですね」

「そうね…正直お妃候補争いを勝ち抜いた私からすると、一夫多妻制を廃止する事は、今まで頑張ってきた自分を否定されている様で、なんだか寂しい気持ちになるわ。でも…やっぱり好きな人の子供を他の女性が産むという事は、辛いものがあるの…それに、ヒューゴが一生懸命調べて、必死に一夫多妻制を廃止しようとしてるのですもの。私は、母親として応援するべきでしょう」

そうか…王妃という立場であった母上も、1人の女性だ。父上が側室に子を産ませることに対して、思う事があったのだろう。

その後も一夫多妻制廃止に関する話し合いが行われる中、ついに僕の15歳の誕生日を迎えた。本来であれば、この日にお妃候補が発表される予定になっていた。でも、今現在進行形で一夫多妻制を廃止するという話が進められている事から、お妃候補の発表はしない事で話がまとまったのだ。

誕生日パーティーに参加するため、僕は王家の控室へとやって来た。

「ヒューゴ、15歳のお誕生日おめでとう。まだまだ子供だと思っていたが、随分と立派に成長したな。近々一夫多妻制は廃止する事で、貴族たちに話をしようと思っている。私は今まで、古いしきたりに囚われすぎていたのかもしれない…お前はきっと、私より立派な王になるだろう。私はそう確信しているよ」

そう言って、僕の肩を叩いた父上。その瞳は少し寂しそうだ。隣で母上もほほ笑んでいる。

「ありがとうございます。父上。でも、僕はまだまだです。これからもご指導お願いします」

正直3度目の生に戻った時、国王に何て興味がなかった。僕にはマリアさえいればいいと思っていた。でも…僕は王太子だ。今回の件で、僕も次期国王としてさらに国を豊かにしていきたい、マリアと共に…そんな気持ちが芽生えたのも事実だ。

「さあ、そろそろ行こう」

父上と母上と一緒に、ゆっくりと入場した。そして3度目となる誕生日の挨拶を行う。挨拶が終わると、僕は真っすぐと歩き出す。そう、マリアの元にだ。

僕の瞳の色を意識してか、真っ青なドレスに身を包んだマリア。やはり彼女は美しい。

「マリア、僕と一緒に踊ってくださいますか?」

スッとマリアに手を差し伸べる。そんな僕の手を嬉しそうに握ってくれた。

「はい、私でよろしければ」

2人でホールの真ん中に向かい、踊り出す。

「今日のマリアも一段と美しいね。その青いドレス、とてもよく似合っているよ」

「ヒューゴ様の瞳の色を意識して参りましたので。ヒューゴ様こそ、私の元に一番に来てくださり、ありがとうございます」

「そんな事、当たり前だろう。僕は君を、誰よりも愛しているのだから…」

僕の言葉を聞き、嬉しそうに笑うマリア。その笑顔を見た瞬間、1度目の生の時の僕は、どうしてこの笑顔を大切にしなかったのだろう。マリアはいつだって、僕を見ていてくれていたのに…

改めて1度目の生の時の過ちを悔いた。そして今回の生では、絶対にマリアの笑顔を守ろう。そう改めて決意した。

ダンスが終わると、会場中から大きな拍手が沸き起こる。さらにいつも必ず僕の側にやって来る、お妃候補に名乗りを上げている令嬢たちも、僕の元に来ない。どうしたのだろう?そう思っていた時だった。

「ヒューゴ様、知っていますか?お妃候補に名乗りを上げていた令嬢たちですが、ヒューゴ様が必死に一夫多妻制の廃止を求める姿を見た父親たちに説得されたそうです。ですので、彼女たちはもうヒューゴ様の元には来ませんわ。先日、わざわざ私に謝罪してくださいましたの。“今まで無礼な態度をとって申し訳ございません。どうかヒューゴ様と幸せになってください”って」

そうマリアが教えてくれた。なるほど、最近は多くの貴族が、一夫多妻制の廃止に賛成してくれている。きっと彼女たちも、無駄な争いをしても意味がないとわかってくれたのだろう。

「マリア、教えてくれてありがとう。彼女たちが僕を諦めたって事は、ますますマリアは僕から逃げられなくなったね」

僕の中で、どうしても2度目の生の時の記憶が残っている。どんなに僕がマリアを求めても、決して振り向いてくれなかった時の記憶が…

「もう、ヒューゴ様ったら。どこをどのようにしたら、私がヒューゴ様から逃げるという発想になるのですか?私はヒューゴ様を愛しております。ですから、何があってもあなた様から離れるつもりはありませんわ」

少し頬を膨らませて、はっきりとそう伝えてくれたマリア。

僕がずっと求め続けていた言葉…
その言葉が嬉しくて、涙がこみ上げてきた。

「ありがとう、マリア。君の誕生日までには、なんとかして一夫多妻制を廃止させるよ。だから…マリアの誕生日には、僕と婚約してくれるかい?」

「はい、もちろんです」

喉から手が出るほど欲しかったマリアが、もうすぐ手に入る。そう思ったら、ついマリアを強く抱きしめてしまった。そんな僕の背中に手を回し、抱きしめ返してくれるマリア。

その後僕たちは、時間が許す限り2人で一緒に過ごしたのであった。


※次回最終話です。
よろしくお願いしますm(__)m
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