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   2章2部 冒険者

模擬戦 決着

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 シンヤへと、同時攻撃をしたミリーとゼノ。しかしその攻撃が届く瞬間、飛んできた極光きょっこうの斬撃が二人を強襲。ミリーたちはとっさにガードして被害を最小限におさえることに成功したみたいだが、極光の斬撃の破壊力に吹き飛ばされていった。
 そこへ。

「もらった!」

 シンヤはすかさずミリーたちへと照準しょうじゅんを合わせ、リボルバーを連射する。彼女たちは極光の斬撃を受けた反動で今だ硬直しており、無防備な状態。なのでガードが間に合わず、銃弾を胴体にもろに受けてしまい。

「キャッ!?」
「ぐっ!?」

 二人は顔をゆがめ、ひざをつく。
 一応非殺傷用の弾丸ゆえ、強い衝撃が襲ってくる程度。ケガはないはずだ。
 そして。

「そこまで! 勝者! シンヤとトワ!」
「おぉー! あの新人たち、あいつらに勝ちやがった!」
「ミリーちゃんもゼノくんもかなりの手練てだれだったのに、すごいわ!」

 レティシアの宣言と同時に、観客席のほうでワッと歓声があがった。

「か、勝てたー……」

 トワがその場にヘナヘナと座り込む。どうやら緊張の糸が切れたらしい。

「やるじゃないか、トワ。ウデの立つゼノを、真っ向からあんなにも抑え込むなんてさ」

 そんな彼女に手を差し出し、賞賛の言葉を送る。

「前回の戦闘はシンヤに頼りっぱなしだったから、一人でもやれるところを見せようとがんばったんだよ。どうだった? どうだった?」

 トワはシンヤの手を取り立ち上がる。そして小さな子供のように、ウキウキで評価を求めてきた。

「ははは、とにかくすごかったよ。トワの最後の一撃のおかげで、やられるところを見事にひっくり返してくれた。もう、トワ様様だな。さすがは勇者さまだ」
「えへへー」

 トワの頭をなでながらほめてあげると、彼女はうれしそうに目を細める。

「ただもう少し剣のウデはみがいた方がいいかもな。戦い方がハチャメチャすぎて、見ててハラハラする場面が多々あったし」
「――うっ、それは……、あはは……」
「トワ! お疲れさま! よくがんばったね!」

 レティシアがトワに後ろから抱き着き、頭をなでた。

「あ、ありがとう、レティシアさん」
「始めの方、なんだか不安げだったから大丈夫かなって心配してたけど、ほんと見事な戦いっぷりだった! 最後のトワの一撃なんて、とくにしびれたよ!」

 そしてキャッキャッと興奮しながら、ほめちぎる。

「シンヤもあのミリーの猛攻を、よくもあそこまで華麗にさばき切ってたね。もうさすがの一言しかないよ! やっぱりアタシの目に狂いはなかった!」
「ははは、まあな」
「二人ともおめでとう」
「ガハハ、血がたぎる熱い戦いだったな! 思わず乱入しそうになっちまったぜ!」

 ローザとランドがねぎらいの言葉をかけてくれる。

「くやしいー! あともうちょっとで勝てたのにー!」
「見事にしてやられた。一番警戒すべきはトワさんだったわけだ」

 キィーと両腕をブンブン振るミリーと、冷静に分析ぶんせきし感心するゼノ。

「あのトワさんの最後の一撃。あれには特別ななにかを感じたんだが、一体どういうものなんだ?」
「それミリーも気になった! 教会の人間が使う光の魔法とはまた違う。あんなに高純度な光、初めて見たんだから!」
「――えっと……、それは……」

 ミリーたちの疑問に、トワは言いよどんでしまう。
 一応勇者であることはまだ秘密にしておきたかったため、正直に言うか迷っているみたいだ。ただ隠すにしても、極光の力をどう説明したらいいのだろうか。

「あれは間違いないわ。かつて邪神の眷属けんぞくに立ち向かった勇者が使っていたという、極光よ」
「ちょっと待って!? ローザ先輩!? ってことはミリーたちが戦った相手って!?」
「ええ、極光の力、さらに心象武器まで使ってたところを見るに……」
「なー、おいおい、まじかよ!」
「な、なんと……」
「えっと、トワ、あなたってもしかしてあれなの?」
「――うっ……」

 みんなの畏怖いふの込められた視線に、たじろぐトワ。

「ほら、トワ、ここはかっこよく決めるところだぞ」

 そんな彼女の背中をポンっとたたき、みんなの前へと押す。

「ご、ごほん、な、な、なにを隠そう、わ、わたしこそは世界を救うため女神さまにつかわされた勇者、と、トワ!!!」

 トワは戦隊モノをアレンジしたようなキメポーズをして、どこか芝居しばいがかったように自己紹介を。
 ただそのポーズはどことなくダサく、肝心かんじん口上こうじょうもうわずっていたといっていい。

「「「「「おぉーーー」」」」」

 そしてみなから起こるどよめき。どうやら勇者という驚きにより、うまく残念なあいさつがかき消されたらしい。

「あの勇者かよ! 勇者! すげーぜ! そんなやつが冒険者に!?」
「うふふ、これはサインをもらわないといけないわね」
「ちょっとなにその強すぎる肩書! 超大型新人にもほどがあるでしょ!?」
「勇者と剣をまじえたということか。なんて光栄な話だ」

 みんなトワが勇者だということを知り、大盛り上がりしだす。

「えへへ、ど、どうもー」

 みんなにもてはやされ、困惑しながらもテレくさそうにほおをかくトワ。

「ねえ、ねえ、シンヤ! トワと同じく心象武器を使えるということは、あなたもそっち系の人間なの?」
「ああ、女神さまの要請ようせいで、勇者であるトワの補佐ほさ役をやってるんだ」

 レティシアの問いに、得意げになって答える。

「勇者に、その補佐役って……。ただものじゃないとわかってたけど、想像をはるかに超えすぎよ! もう一大ニュースにもほどがある! これは早くサクリに教えてあげないとね!」

 レティシアは目を輝かせ、言いふらしたいとウズウズしだした。

「まあ、なにはともあれみんなお疲れ様! 今日の夜は恒例こうれいのアレをやるから、パーっとやりましょう!」

 そしてレティシアは模擬戦をきれいに締めくくり、はしゃぎながらなにかのイベントを告知するのであった。
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