鍛練を極めているところに、一人の騎士団長である少女がやってきて
「――剣は、やめろ」
目の前の少女の唐突な発言に、アルスランは思わず眉をひそめた。
目の前にいるのは十二歳にして王国一の騎士から最年少で宝剣を授かった少女だ。同年代の少女と比べても小柄だが、その身に秘めた力はそこらの騎士をはるかに凌駕する。
アルスランが忠誠を誓った王の娘であり、この王国の正当な後継者でもある少女だった。
「何を急に……?」
アルスランは戸惑いながら聞き返した。
先ほどから剣の鍛錬をしていたので、それを見ていた少女が急に止めたことに疑問を覚えたのだ。
「だから、剣をやめろと言ったんだ」
「……それは命令でしょうか?」
「違う」
アルスランの言葉に少女は首を振った。だが、その表情にははっきりとした意志が込められていた。
命令ではないとしたら、それは何を意味するのか。
「……理由をお聞かせ頂いてもよろしいでしょうか?」
「そんなものは決まっているだろう」
アルスランが尋ねると、少女は力強く答えた。
「私がお前を鍛えるからだよ」
その発言に、アルスランは目を見開いた。それからゆっくりと首を振り、少女に対して笑顔を見せる。
「……いくら殿下と言えど、それは無理です。剣の鍛錬をやめろと言われてやめられるはずがありません」
冗談めかして言うと、少女が不満そうな表情を浮かべる。
「私は本気だ」
「本気なのは十分伝わっておりますよ」
アルスランは苦笑しながら言うと、剣を鞘にしまった。
「ですが、私の剣は殿下をお守りする為のものです。いくら殿下でも、それは譲れません」
そう伝えると、少女は眉根を寄せた。どこか寂しそうな表情を浮かべながら口を開く。
「それは分かっているが……しかしな……」
そのまま黙り込んでしまう少女を見て、アルスランは困ったように笑った。そして少女に向かって優しく話しかける。
「殿下、ご心配なさらずとも大丈夫です」
「……アルスラン?」
少女は不思議そうな顔をしながら彼を見た。彼は穏やかな笑みを浮かべながら続ける。
「殿下が私に剣を捨てろと仰るなら、私は喜んで捨てましょう。ですが、私が剣を捨てるのはあくまで『守るべきものがある時』です」
少女はじっとアルスランを見つめ、彼の言葉を聞いていた。そして静かに口を開いた。
「……そうか。それならいい」
少女のその答えに、アルスランは思わず安堵の息を漏らした。
「ありがとうございます、殿下」
アルスランが礼を言うと、少女は小さく頷いて踵を返した。そのまま歩き出す少女の背中に向かって声をかける。
「殿下?」
「……剣は好きか?」
少女が振り返って尋ねる。彼は微笑んだまま答えた。
「ええ、もちろんです」
その言葉を聞いて、少女は再び歩き出した。そのまま足を進めていくと、城の出入り口の前で立ち止まった。彼女は振り向くと、少しだけ寂しそうな表情を浮かべながら言った。
「……私も好きだぞ」
目の前の少女の唐突な発言に、アルスランは思わず眉をひそめた。
目の前にいるのは十二歳にして王国一の騎士から最年少で宝剣を授かった少女だ。同年代の少女と比べても小柄だが、その身に秘めた力はそこらの騎士をはるかに凌駕する。
アルスランが忠誠を誓った王の娘であり、この王国の正当な後継者でもある少女だった。
「何を急に……?」
アルスランは戸惑いながら聞き返した。
先ほどから剣の鍛錬をしていたので、それを見ていた少女が急に止めたことに疑問を覚えたのだ。
「だから、剣をやめろと言ったんだ」
「……それは命令でしょうか?」
「違う」
アルスランの言葉に少女は首を振った。だが、その表情にははっきりとした意志が込められていた。
命令ではないとしたら、それは何を意味するのか。
「……理由をお聞かせ頂いてもよろしいでしょうか?」
「そんなものは決まっているだろう」
アルスランが尋ねると、少女は力強く答えた。
「私がお前を鍛えるからだよ」
その発言に、アルスランは目を見開いた。それからゆっくりと首を振り、少女に対して笑顔を見せる。
「……いくら殿下と言えど、それは無理です。剣の鍛錬をやめろと言われてやめられるはずがありません」
冗談めかして言うと、少女が不満そうな表情を浮かべる。
「私は本気だ」
「本気なのは十分伝わっておりますよ」
アルスランは苦笑しながら言うと、剣を鞘にしまった。
「ですが、私の剣は殿下をお守りする為のものです。いくら殿下でも、それは譲れません」
そう伝えると、少女は眉根を寄せた。どこか寂しそうな表情を浮かべながら口を開く。
「それは分かっているが……しかしな……」
そのまま黙り込んでしまう少女を見て、アルスランは困ったように笑った。そして少女に向かって優しく話しかける。
「殿下、ご心配なさらずとも大丈夫です」
「……アルスラン?」
少女は不思議そうな顔をしながら彼を見た。彼は穏やかな笑みを浮かべながら続ける。
「殿下が私に剣を捨てろと仰るなら、私は喜んで捨てましょう。ですが、私が剣を捨てるのはあくまで『守るべきものがある時』です」
少女はじっとアルスランを見つめ、彼の言葉を聞いていた。そして静かに口を開いた。
「……そうか。それならいい」
少女のその答えに、アルスランは思わず安堵の息を漏らした。
「ありがとうございます、殿下」
アルスランが礼を言うと、少女は小さく頷いて踵を返した。そのまま歩き出す少女の背中に向かって声をかける。
「殿下?」
「……剣は好きか?」
少女が振り返って尋ねる。彼は微笑んだまま答えた。
「ええ、もちろんです」
その言葉を聞いて、少女は再び歩き出した。そのまま足を進めていくと、城の出入り口の前で立ち止まった。彼女は振り向くと、少しだけ寂しそうな表情を浮かべながら言った。
「……私も好きだぞ」
あなたにおすすめの小説
「お前を愛することはない」と言われたので、「はいはい、かしこまりー」と答えたら、勝手に伯爵様が曇り始めました
「お前を愛することはない」
「はいはい、かしこまりー」
納得できない結婚をしたリオとオリバー。
ともに暮らし、お互いを知っていくうちに、オリバーは少しずつリオに惹かれていく。
しかし、リオはオリバーの「愛することはない」という言葉を律儀に守り続けていて——。
※ざまぁ展開はありません。
※9/10、9/21に加筆しました。
※なろう、カクヨムにも掲載しています。
※生成AIを構成・展開の壁打ち、設定整理、誤字脱字・表記ゆれ確認、文章推敲補助に利用。本文は基本的に自分で執筆し、提案された展開や短い表現を一部採用する場合があります。
初夜のあとに愛する人がいると言われたので祝福で身体の時間を一日戻しました
夫婦となって初めて迎えた夜、セレンティアは夫リオールから「俺には、愛する人がいる」と告げられる。
彼が初夜を済ませた理由は、三年後に白い結婚として婚姻無効を申し立てられないようにするためだった。
けれどリオールは知らなかった。セレンティアの祝福《一日回帰》が、自分自身の身体にも使えることを。
セレンティアは自分の身体の時間を一日前へ戻し、三年間、侯爵家の妻として務めを果たすことを決める。
夫に愛されるためではない。三年後、白い結婚としてこの家を出ていくために。
『お前が運命の番だなんて最悪だ』と言われたので、魔女に愛を消してもらいました
竜族の王子フェリクスの成人の儀で、侯爵令嬢クロエに現れたのは運命の番紋。けれど彼が放ったのは「お前が番だなんて最悪だ」という残酷な言葉だった。
異母妹ばかりを愛する王子、家族に疎まれる日々に耐えきれなくなったクロエは、半地下に住む魔女へ願う。「この愛を消してください」と。
恋も嫉妬も失い、辺境で静かに生き直そうとした彼女のもとに、三年後、王宮から使者が現れる。異母妹の魅了が暴かれ、王子は今さら真実の愛を誓うが、クロエの心にはもう何も響かない。愛されなかった令嬢と、愛を取り戻したい竜王子。番たちの行く末は――。
【完結】私の出産日に初恋の人を選んだ夫、あなたを彼女に返品します
「子供っぽい嫉妬はやめろ」私が命懸けで出産した日、夫のヴィンセント侯爵は初恋の人の所へ行ってしまった。理由を説明して欲しいと言うと、子供っぽい嫉妬をやめろと厳しい声で言われてしまう。しかも初恋の相手がいきなりやってきて「侯爵様は昔から私を命懸けで助けてくれるんです」と悪びれもせずに言い放った。妻よりも初恋相手を優先する夫は必要ないので私は夫を初恋相手へ返品した。すると生まれてから一度も人に頭を下げたことのないヴィンセントが、ボロボロになって私に頭を下げてきて⋯⋯。
天然だと思ったギルド仲間が、実は策士で独占欲強めでした
ギルドで働くおっとり回復役リィナは、
自分と似た雰囲気の“天然仲間”カイと出会い、ほっとする。
……が、彼は実は 天然を演じる策士だった!?
「転ばないで」
「可愛いって言うのは僕の役目」
「固定回復役だから。僕の」
優しいのに過保護。
仲間のはずなのに距離が近い。
しかも噂はいつの間にか——「軍師(彼)が恋してる説」に。
鈍感で頑張り屋なリィナと、
策を捨てるほど恋に負けていくカイの、
コメディ強めの甘々ギルド恋愛、開幕!
「遅いままでいい――置いていかないから。」
⭐︎完結済ー本編8話+後日談7話⭐︎
鳳凰に愛された令嬢を偽物と断罪した結果、国から祝福が消えました
公爵令嬢フランチェスカは、建国祭の夜、婚約者のボードワン王子から「偽物の巫女」と断罪され、国外追放を言い渡される。証拠は、侯爵令嬢グリゼルダが掲げた一枚の「鳳凰の羽根」。三年間かわいがってきた灰色の雛・ソレイユは「汚い鳥」と罵られ、処分まで命じられた。
――けれど、その灰色の雛こそ、二百年ぶりに人の世へ降りた本物の鳳凰。鳳凰は、みすぼらしい姿で「羽根の色ではなく、心で愛せる者」を試していたのだ。
国境を越えた瞬間、雛は黄金の鳳凰へと羽化し、祝福はフランチェスカとともに隣国フィオレンツァへ。彼女を客人として迎えたのは、豊穣祭を司る若き王太子コジモ。一方、祝福を失った故国では作物が枯れはじめ、偽の羽根の正体も白日の下に――。
わたくしは、何もしておりませんのよ? 羽根の色より、心の色。答え合わせをしたのは、あの子ですわ。
婚約者が聖女を選ぶことくらい分かっていたので、先に婚約破棄します。
魔王討伐を終え、王都に凱旋した英雄たち。
その中心には、異世界から来た聖女と、彼女に寄り添う王太子の姿があった。
王太子の婚約者として壇上に立ちながらも、私は自分が選ばれない側だと理解していた。
だから、泣かない。縋らない。
私は自分から婚約破棄を願い出る。
選ばれなかった人生を終わらせるために。
そして、私自身の人生を始めるために。
短いお話です。