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仲間募集

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 ゴーレム撃破の報酬が多く、僕達は馬車に乗っている。
 数日でデュアンの街に到着して、僕達は街の広さに驚いていた。

 ダンジョンが近くにある大都市で、冒険者ギルドも前の街とは比べものにならないほど広大だ。
 三階建てで様々な店が併設しているらしく、冒険者でなさそうな人も出入りしている。
 人が多く目立つ場所に受付があり、最高の裏方に相応しい場所だ。

 冒険者ギルドの中に入り、まずはミナギを受付に向かう。
 この場所について聞いておきたくて、ミナギはかなり注目されている。
 どうやら僕達が馬車で向かっている間に、初依頼で魔人を倒したミナギは有名になっているようだ。

 受付の人に冒険者カードを見せて、ミナギはAランク以上の依頼を受けようとしている。
 どの依頼を受けるのがいいかアドバイスをもらうためだけど、一番の理由は注目されたいからだ。

 冒険者カードを確認した受付の人は、ミナギを眺めて話す。

「ミナギ様ですね。初依頼から魔人を倒す実力者で、ここに来ることは噂になっていたほどです」
「注目されていたのはそういうことね! 私はどんな依頼でも受けるわよ!!」

 新しい場所で期待されていることもあり、ミナギはいつも通り堂々としている。
 内心ではまずAランク依頼を受けたいはずだけど、Sランク依頼があれば受けそうな勢いだ。

 僕としてはSランクを受けたいけど、まずは迅速に依頼を解決させたい。
 思案している際に受付の人が、僕を心配するように眺めて。

「それは、その……」
「僕はミナギの力で強くなっていますし、Bランクですが問題ありません」
「失礼しました。この街は依頼が多いので、二人に合った依頼を掲示板で確認して受けるべきです」
「そうですか、わかりました」

 説明を聞いて頷きながら、弱そうな雰囲気を出せていることに安堵する。

 前の街では隠蔽魔法でかなり弱く振る舞っていたから心配されたけど、今はAランクの魔法士相当の魔力に調整した。
 それもあって周囲から心配はされていないけど、魔人を倒した相方としては不釣り合いと思われてそうだ。

 この状況を維持するためにも、僕よりも強そうに見える仲間を加入させておきたい。
 依頼を確認する前に、僕は受付の人に尋ねる。

「あの、仲間募集はできますか?」
「依頼用とは違う掲示板に紙を張る形になりますけど、二人パーティ人ですと待っていれば誘われると思います」

 そう言ってから、受付の人は詳しく説明してくれた。
 デュアンの街はかなり危険だから、パーティメンバーを募集している人が多いようだ。

 パーティメンバーは多すぎると分け前が減るし、支援魔法の力を最大限発揮できるのは3,4人とされている。
 基本的に4,5人のパーティになるようで、僕の「裏方スキル」を知られていい人数が4人までなのはこれが関係していそうだ。

「最初は一緒に依頼を受けないか誘われたりして、気が合いそうなら正式にパーティ登録するというケースが多いですね」
「なるほど。ありがとうございます」

 ギルドでは冒険者登録の他にパーティ登録ができて、報酬の受け取りやランクの変化に関わってくる。
 今はリーダーがミナギのパーティで僕はそのメンバーだけど、魔物を倒した実績がないから僕自身はBランクだ。

 話を終えてから、僕とミナギは依頼の張られている掲示板を眺める。
 ランクで分けられているようで、巨大な板に大量の紙が貼られていた。

 とにかく僕はAランク以上で近場の依頼を記憶していき、ミナギが興味を持った依頼を尋ねていく。
 確認した後は食堂のテーブル席に座り今後について話し合うけど、ゴーレム破壊と同等かそれ以上の依頼ばかりだ。

「私としては、一番皆が困っている依頼を受けたいかな」
「そうだな……」

 目立てそうな依頼がないか、AランクだけどBランクの依頼も確認しておきたい。
 数十枚以上もあるから悩み、今日は帰ってゆっくりと決めた方がよさそうだ。

 そんなことを考えていると、僕達の前に二人の小柄な少女がやって来る。
 銀髪が長い穏やかそうな美少女と、黒髪の短く気が強そうな美少女だ。

 二人の背は同じぐらいで、穏やかそうな子がミナギにおずおずと尋ねる。

「あ、あの、ゴーレムと魔人を倒した人ですよね?」
「そうよ! 貴方達は誰?」
「アタシはクロエで、今質問したのが妹のセラ。ちなみに双子だ」
「私はミナギ。こっちはケントよ!」

 二人は装備が違い、気の強そうな剣士がクロエで、穏やかな魔法士がセラのようだ。
 僕は頷くことで挨拶をするけど、クロエが凝視しているのは気になってしまう。

「装備的に、勇者はミナギか?」
「クロエちゃん。誰がどうみても勇者はミナギさんに決まってるじゃない」
「わかってるけど……なんか、ケントはヤバそうな感じがする」

 どうやらクロエとしては、僕のことを警戒しているらしい。

「えぇっ!? ケントはどこにでもいる魔法士だよ!!」

 フォローするミナギだけど、物凄く動揺しているな。
 僕に注目するのは今までにない存在で、予想外の事態に取り乱すミナギはいつものことだ。

 どうして警戒されたのか、理由が気になってしまう。
 それに関しての説明は、妹のセラがするようだ。

「えっと、クロエちゃんは勘が鋭くて、敵が力を隠していたら見抜けます」
「ケントが魔人を倒したと思ったぐらいだけど、相当魔力を隠してないかしら?」
「それは私が勇者で、仲間だから影響を受けてるからね!」
「……なるほど、そういうこと」

 そう言いながらも、クロエは僕を凝視している。
 ミナギよりも僕に注目している人は今まで見たことがなかったから、興味があった。

「ミナギと比べたら大したことないけど、僕としては頑張っているよ」
「……そう。ミナギ、セラは話したいことがあるみたい」

 話を切り上げるクロエだけど、僕の反応を探っているような気がした。

 周囲を観察している僕だからこそ、クロエの行動がよくわかる。
 姉妹でも妹のセラはミナギの発言を完全に信じているようで、眼を輝かせながら話す。

「魔人を倒した勇者様……私は、ミナギさんをとても尊敬しています!」
「ありがとう! これからデュアンの街にいるつもりだから、もっと活躍してみせるわ!」
「本当ですか! 私達はAランクの冒険者です。ぜひ一緒に依頼を受けさせてください!」
「一緒に依頼……いいわよ!」

 どうするべきかミナギは僕を眺めたけど、頷くと勢いよく承諾している。
 歳が近そうな人に尊敬されたことは、ミナギとしてはかなり嬉しかったようだ。

 僕としても、はじめて警戒されたクロエにどこまで誤魔化せるか試したい。
 これから仲間になるかどうかは、一緒に行動した後に決まりそうだ。
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