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4話「自分が伯爵になったと思い込んでる父親が、愛人と愛人の間にできた子供を連れてきた」
しおりを挟むそれから四年が過ぎ。
優しく賢かった母も、私が十四歳の時に亡くなった。
死期が近いことを悟った母は、生きている間に私に爵位を継がせた。
この国の成人は十八歳。成人前でも後見人さえいれば爵位は継げる。
なので私が成人するまで、母の弟……私に取っては叔父が後見人になってくれた。
この国では「男女問わず先に生まれた子供」が爵位を相続するため、叔父は他家に婿養子に入っている。
貴族は血の繋がりを重んじる。
母が亡くなったら私。
私が失くなったら叔父。
叔父が亡くなったら叔父の子が。
その子も亡くなったら親戚の誰かが伯爵家の家督を継ぐ。
だから婿養子で伯爵家の血が一適も入ってない父が、伯爵家を継ぐことは天地がひっくり返ってもあり得ない。
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しかし、父は母が亡くなったあと自分が伯爵家の当主になったと勘違いしていた。
父は愛人と、愛人の連れ子のミランダを伯爵家に連れてきた。
「政略で結婚した妻が、やっと亡くなった。 妻が死んでくれたおかげで、わしは伯爵になれた。
お前たちにはこの十数年苦しい生活をさせたが、日陰の生活はもう終わりだ。
これからは伯爵家で贅沢な暮らしをさせてやる。
ヒルダは伯爵夫人、ミランダは伯爵令嬢だ!」
私は父のその言葉を聞いたとき、無一文で三人まとめて貧民街に捨てて来てやろうかと思った。
父の言葉は「母が死んで嬉しい」と言っているようなものだ。
「お父様、あたし髪の色と同じ桃色のドレスが着たいわ」
「ミランダはわしの血を分けた可愛い娘。
伯爵のわしがなんでも買ってやる」
「きゃーー! 嬉しいわ!」
さらに私を苛立たせたのが、ミランダが愛人の連れ子ではなく、父の実子という事実。
「お父様、階段の上から知らない女の子がこっちを睨んでいるわ。
あの子はだぁれ?」
「あの娘は先妻との娘のカトリーナだよ」
「先妻の娘? じゃあ、あの子はあたしの腹違いのお義姉様になるの?」
「カトリーナの方が年上だが、ミランダとは歳は三か月しか違わない。
無理して『お義姉様』などと呼ぶ必要はないよ」
「は~~い」
伯爵家の婿養子の分際で、母の存命中に浮気して、浮気相手との間に私と三か月しか歳の違わない娘を作って、母が亡くなったあと、伯爵家に連れてくるとか……父はどれなけ面の皮が厚いんだ!
厚顔無恥にも程がある!
言われて見れば、ミランダの髪と瞳の色は父が連れてきた愛人と同じピンクだが、彼女の顔の作りは父に似ていた。
母の存命中に浮気をし、子供まで作り、母の死後は己が伯爵になったと勘違いし、愛人とその娘を伯爵家に連れてきた父に、私は心の底から幻滅していた。
父と愛人とミランダの身ぐるみはいで、野獣の出る森に捨ててきてやろうか……と本気で考えるぐらい、私は父に腹を立てていた。。
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