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リーネの章

年齢

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リーネは応えなかったが、応えなかったこと自体が答だと感じた。

そして俺は、ここまでのやり取りでどうしても違和感を覚え、

「お前、歳はいくつだ……?」

と問い掛けた。すると彼女は、

「十三です……」

と。

「……マジか……?」

俺は思わず唖然としてしまった。ここじゃ年齢は基本的に<数え>だから、実年齢はおそらく十二ということなんだろう。しかしそれにしたって体が小さすぎる。てっきり八歳とか九歳とかくらいかと思ったぞ?

発育が悪いんだ。それは、元々そうだったのか、それとも、環境の所為か……寝小便をしてしまったのは、熱の所為かもしれないが。

「なら、どうせあと二年くらいだったか、家にいられるのは……」

この辺りじゃ、基本的に十五くらいで<成人>扱いだ。結婚もできる。数えだから実年齢としては十四くらいだが、まあその辺は一年程度くらいは猶予もあるから、実年齢でも十五くらいで大人ではある。

が、ここじゃ<ニート>なんてのはまずいない。ロクに仕事もしないような奴もいるにはいるが、少なくとも家には置いてもらえない。家の仕事をするならまだしも、それすらしないようじゃ、確実に家から叩き出される。

リーネももう、あと二年か三年で家から追い出されるところだったわけだ。それが嫌なら、家の仕事をするか……

「母親も、いるのか? 本当のじゃない母親も」

「はい……」

ふむ。じゃあ、義父の慰み物として家に残る感じではないか。それでも、この感じじゃあと二年や三年ではそんなに大きくもならないだろう。今の様子じゃ初潮も迎えてないだろうし、家を追い出されるまでにくるかどうかも怪しい。となると、きついな……結婚相手だって見付かるかどうか……ここでの結婚は、イコール『子供を作る』だからな。

子供もできない女だと、それこそロクでもない男の慰み物としての人生しかないだろうし。

今のこの世界に生きるなら避けられないことかもしれないにせよ、いい気分な話じゃないな。

前世の日本じゃ、あれこれ言われてても、十分とは言い難くても、リーネのような境遇の子供を保護する仕組みはないわけでもなかった。だから俺も、わざわざ助けようとは思わなかったかもしれない。そっちに任せればいいわけで。そもそも、俺が今やってること自体、余裕で刑事事件になるしな。

先にも言ったとおり、ここでも一応は犯罪になるんだが、所詮、法律は建前でしかない人治国家だし、庶民のためには官憲は動かないしで、有形無実ではある。

だから俺は、

「もし良かったら、俺の娘になるか……?」

つい口にしてしまった。その言葉に、リーネはハッと俺を振り返り、

「ご迷惑じゃなかったら……」

と応えた。

彼女にとっても、<渡りに船>だったんだろうな。

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