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リーネの章

労ってもらいたいとか

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にしても、<ネコ車>は大失敗だった。頭だけで分かったような気になってるのはダメだって改めて思い知らされたな。くそったれ。

なので、手で持つんじゃなくて<天秤棒>で担ぐのはどうかと思い立ち、手頃な丸太を引っ張り出して、両端に蔓を掛け、桶を吊るせるようにしてみる。

が、それを用意したところで日が暮れてきた。リーネはずっと俺の傍で見守ってくれてて。

「明日はこれを試してみよう」

「はい」

そう告げた時、家の外で、

「ピギッ!!」

という悲鳴が。しかも、「バササッ!」と物音も。太陽が山の稜線に隠れて薄暗くなった外に出ると、

「キイッ! ピキイッ!!」

必死に逃げようともがく気配。

罠だ。罠にウサギが掛かってたんだ。よっしゃ! 肉ゲットだぜ!

ナイフを取り出して、容赦なく息の根を止める。あんまり暴れさせると味が落ちるからな。と、分かったようなことを考えるが、実は俺自身はその違いがよく分からない。そう言われてるからそうなのかなと思ってるだけだ。

ウサギの血抜きをしながら、

「罠のところに目印の杭を打っておいた。近付かないように気を付けろよ」

とリーネにも言っておく。

「はい」

小さい子供なら言ってもケロっと忘れたりするが、リーネはもう十三だからな。さすがに大丈夫だろう。大丈夫だろうと思いつつ、杭が下草に隠れて分かりにくいから、もっと長い杭を打つべきだなと考える。明日、早速、直さなきゃな。

と思ったら、

「私が、用意します」

リーナがウサギに手を伸ばしてそう言った。

「ああ、そっか。任せていいか?」

「はい!」

嬉しそうな声。任せてもらえることが嬉しいんだろうな。そう思ってもらえることが、俺も嬉しいよ。

そんなこんなでウサギの方はリーネに任せて、俺は、明日と言わず、今、天秤棒を作る時に引っ張り出した丸太を削って杭にして、改めて罠の目印を作り直した。俺の腰くらいの高さまであるし、これなら見落とすこともないだろう。

そうしてすっかり真っ暗になった頃、

「用意できました」

リーネが声を掛けてくれたから、

「おう!」

と応えて家に戻った。すると、上手そうな匂いが部屋に充満していて、葉っぱの上に置かれた串焼きの肉と果実が。

さっきのウサギと、ここに来るまでに採ってきた果実の残りだ。

「ありがとう」

俺は素直に、用意してくれたリーネに礼を言った。

思えば、前世じゃ女房に、メシを作ってくれた礼なんて、言った覚えがない。自分は女房を労わないのに、女房には労ってもらいたいとか、いやはや、

『子供か!?』

って話だよな。

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