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リーネの章
ラストスパート
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そんなこんなで時間をつぶしていると、夕方には雨がやんできた。
俺は、風呂に湯を注ぐことも考えて三つ目の鍋を作り始めていたが、その作業をいったん中断し、作りかけの風呂を見た。
雨水は、半分くらいの深さまで溜まっていた。思いっきり茶色い泥水になって。
庭に置いた桶で貯めた雨水の方は家の中の石の瓶に移し、空いた桶で風呂に溜まった水をかき出す。
「手伝います」
そう言ってリーネももう一つの桶で雨水を一緒にかき出してくれた。
「ありがとう」
「いいえ、私もFURO、楽しみにしてますから」
そんなやり取りをしつつ、二人して作業をすると、すぐにほとんどかき出せた。
底の方にわずかに残ったのも、鍋を使ってなるべくかき出す。料理にも使う鍋をこんな形で使うなんて、前世じゃとても考えられなかったが、こっちじゃそこまで余裕もないからな。使えるものはなんでも使うさ。
鍋でさえ掬えない分は布に滲み込ませて外で絞って捨てる。
この時、裸足で浴槽に入って作業したんだが、敷き詰めた石を踏んでも足は痛くならなかった。しっかりと角を落とせてるのが確かめられた。
それが終わった頃にはすっかり日も暮れて、今日はもうこれ以上できることもないしで、夕食にしてそれから体を拭いて、寝る。
「明日は完成させられたらいいですね、FURO」
「そうだな。俺も待ちわびてるよ」
なんて他愛ないことを話し合ってるうちに、いつの間にか眠ってしまっていた。
翌朝、ハッと目を覚ますと、外が明るい。家を出ると、昨日の雨の所為か空気は湿気を帯びてるが、空は快晴だ。見える限りの空には雲もほとんど見えない。
となれば、一気に完成させるぞ。
浴槽の立ち上がりのところの土はまだ湿ってたが、そこに次々と石を積み重ねていく。
「おはようございます。水汲み、行ってきます」
「おう、頼む。気を付けてな」
そう言葉を交わして、リーネが水汲みに行ってる間にラストスパートだ。
で、彼女が水汲みを終えるまでに、石は敷き詰め終えられた。
「ふーっ!」
大きく深呼吸をすると達成感もあったが。まだだ、まだ完成じゃない。積み上げた石は、なるべく形が合うように組み上げたつもりだったが、所詮は素人細工。隙間だらけで下の土が見えてるところさえある。そこに、小さな石を詰め込んで、なるべく隙間を減らしていく。
ちまちまと、ひたすらちまちまと。
でも、それが不思議と楽しい。
「水汲み終わりました。手伝った方がいいですか?」
リーネはそう訊いてくれたが、俺は敢えて、
「果実と木の実の収穫を頼む」
そう告げた。
「分かりました」
彼女は素直に応えて、桶を持って森に入っていったのだった。俺から十分に見えるところだけどな。
俺は、風呂に湯を注ぐことも考えて三つ目の鍋を作り始めていたが、その作業をいったん中断し、作りかけの風呂を見た。
雨水は、半分くらいの深さまで溜まっていた。思いっきり茶色い泥水になって。
庭に置いた桶で貯めた雨水の方は家の中の石の瓶に移し、空いた桶で風呂に溜まった水をかき出す。
「手伝います」
そう言ってリーネももう一つの桶で雨水を一緒にかき出してくれた。
「ありがとう」
「いいえ、私もFURO、楽しみにしてますから」
そんなやり取りをしつつ、二人して作業をすると、すぐにほとんどかき出せた。
底の方にわずかに残ったのも、鍋を使ってなるべくかき出す。料理にも使う鍋をこんな形で使うなんて、前世じゃとても考えられなかったが、こっちじゃそこまで余裕もないからな。使えるものはなんでも使うさ。
鍋でさえ掬えない分は布に滲み込ませて外で絞って捨てる。
この時、裸足で浴槽に入って作業したんだが、敷き詰めた石を踏んでも足は痛くならなかった。しっかりと角を落とせてるのが確かめられた。
それが終わった頃にはすっかり日も暮れて、今日はもうこれ以上できることもないしで、夕食にしてそれから体を拭いて、寝る。
「明日は完成させられたらいいですね、FURO」
「そうだな。俺も待ちわびてるよ」
なんて他愛ないことを話し合ってるうちに、いつの間にか眠ってしまっていた。
翌朝、ハッと目を覚ますと、外が明るい。家を出ると、昨日の雨の所為か空気は湿気を帯びてるが、空は快晴だ。見える限りの空には雲もほとんど見えない。
となれば、一気に完成させるぞ。
浴槽の立ち上がりのところの土はまだ湿ってたが、そこに次々と石を積み重ねていく。
「おはようございます。水汲み、行ってきます」
「おう、頼む。気を付けてな」
そう言葉を交わして、リーネが水汲みに行ってる間にラストスパートだ。
で、彼女が水汲みを終えるまでに、石は敷き詰め終えられた。
「ふーっ!」
大きく深呼吸をすると達成感もあったが。まだだ、まだ完成じゃない。積み上げた石は、なるべく形が合うように組み上げたつもりだったが、所詮は素人細工。隙間だらけで下の土が見えてるところさえある。そこに、小さな石を詰め込んで、なるべく隙間を減らしていく。
ちまちまと、ひたすらちまちまと。
でも、それが不思議と楽しい。
「水汲み終わりました。手伝った方がいいですか?」
リーネはそう訊いてくれたが、俺は敢えて、
「果実と木の実の収穫を頼む」
そう告げた。
「分かりました」
彼女は素直に応えて、桶を持って森に入っていったのだった。俺から十分に見えるところだけどな。
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