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日常の章

素人工作だから

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でもさすがに、素人工作だから強度もあれで、少し風が強い日なんか、

ガタンッ!!

って音がして何事かと外に出てみると、樋の支えが倒れてたりもした。その度に直して補強してってのを延々と繰り返す。ある時なんか、冬用の風呂場の屋根がめくれて、それこそ飛んでいきそうに。

「うひーっ!!」

凍るような風が吹きつける中、必死で押さえ付けて釘を打った。

「トニーさん! 私も手伝います!」

「僕も!」

リーネとトーイが言ってくれるが、

「いや、大丈夫だ!」

さすがに子供にやらせるには危険だと思って家の中で待っててもらった。子供は視界が狭いし、集中するとそれこそ周囲が見えなくなるからな。こういう危険な作業をするには向いてないんだ。甘やかしてるからやらせないんじゃない。そもそも適した能力が育ってないだけなんだよ。

リーネもトーイも、大人になれば嫌でもこういうことをする羽目になるだろう。その時にできてくれりゃいい。だから十五くらいになればやってもらうこともあるかもしれないが、今はまだ早いんだ。

代わりに……

「ぶあーっ! さみーっ!!」

寒風に曝されながらの作業だったからな。手指の感覚はなくなってるわ、鼻水は止まらないわ、体の震えもひどい。するとリーネが、

「手を温めてください……!」

鍋に湯を沸かして待っててくれたんだ。

「ぐわーっ! くるーっ!!」

決して『熱い』というほどの湯じゃなかったはずだが、冷え切った手指には刺さるくらいに痛かった。するとトーイが、椅子に乗って湯に浸した布で俺の顔を拭いてくれた、鼻水がえらいことになってたのが気になったんだろう。

「ありがとう…! ホントありがとう……!」

正直、巧く拭けてないからもどかしさはありつつ、俺を気遣ってくれる気持ちそのものは涙が出るほど嬉しかった。

もちろん二人が俺を気遣ってくれるのが嬉しいというのはあったんだが、それ以上に、二人に気遣ってもらえるような俺でいられてることが嬉しかったんだ。前世の俺だったら、たとえ同じようなことをしたところで女房もゆかりもこんな風にしてくれなかっただろう。それが分かるんだよ。

何より俺自身が、こんな風にしてやりたいと思えないんだ。前世の俺に対しては。自分自身がそう思えないような奴を気遣い労わりたいと思ってくれるような奇特な人間がそういるか? いるわけないよな。

そうだ。客観的に見て気遣い労わりたいと思える人間に自分がなれてるかどうかってのが大事だと思う。あくまで客観的にな。

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