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モル・シティを襲うスケルトン、戦闘力2500

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 ナーダ王国の東部に位置する主要都市であるモル・シティはスケルトン3体の攻撃を受けていた。

 一国の大都市だ。

 防衛の為の騎士も兵士も魔術師も神官のわんさか居る。

 なのに、その異常な強さを誇るスケルトン3体はそれらを物ともせず、敵対者を薙ぎ払い、城門を吹き飛ばして街の中に侵入していた。





 オーケイ。

 認めよう。

 あれにはオレも少し噛んでる。

 だが、説明くらいはさせてくれ。

 じゃあ、説明するぞ。





 オレは悪くない。





 本当だぞ。

 信じてくれ。

 信じてくれってばっ!





 モル・シティの飛獣発着場から飛竜ワイバーンに乗って慌てて街の上空に逃げた黒髪ロングのオレが街の様子に絶句する中、後ろからアシュが、

「ええっと、あれってご主人様が作ったスケルトンだよな? やっぱ放置したからか?」

「言わないで、アシュ。反省してるから」

『野放しにして後片付けしなかったご主人様が悪いピョン』

 影の中からアルも念話でツッコミ、

「うるせえなっ! 1体作るのに魔石を最大120個も使ったんだぞ。スケルトンキングは戦闘力2500だ。勿体無くて潰せないだろ、普通?』

 オレはそう念話で言い返したのだった。





 ああぁ~、どうしてこんな事になったんだかなぁ~。





 ◇





 事の起こりはアシュとの合流場所にあった。





 場所は例の狩猟場で、

 地図的に言えば、オズ帝国の南隣の1つ、 ナーダ王国領内だった。

 アシュを狩猟場に置いてのオズ帝国の滞在は2日だったので、

 アシュの戦闘力は220のままだ。

 1000は欲しいよな。

 それくらいないとオレの露払いは務まらないし。

 などと思いながら、頭を撫でた。

「ちゃんと待ってて偉いわよ、アシュ。いい子いい子」

 スキンシップは大事だからな。

 後、女口調ね。

 ほら、オレの正体は内緒だから。

 ついでに使い魔のアルも内緒。

 使い魔のアルは奥の手だからな。

 隠すに限る。

「犬扱いするなよな」

「してないわよ。アシュは恋人なんだから」

「はいはい、言ってろ」

 とか素っ気ない態度とは裏腹に尻尾は喜んでブンブン振られてるし。

「ってか、何、その恰好?」

 アシュがオレを見て質問した。

 今のオレはエルフの老婆の姿だったからだ。

「気に入らない?」

「まあね」

「なら、【変身】」

 オレは変身魔法で黒髪ロングの巨乳ちゃんになった。

 元の世界にいたムカつく女その2な訳だが。

「えっ、もしかしてピンクブロンドの姿も・・・」

「仮の姿よ」

「そっちが本当の姿なのか?」

「まさか。違うわよ」

「本当はどんな姿なんだ?」

「まだ内緒ね」

「どうしてだよ?」

 とアシュが少し拗ねたので、オレがハグしてアシュの機嫌を取りながら、

「私の本当の姿を見るのはアシュが私と隷属契約してからよ」

「してるだろ、もう?」

 アシュが首輪に触れる中、

「そうじゃなくて、魔法で魂の契約の方よ」

「すると、どうなるんだ?」

「外れる首輪と違って、一生アシュは私の隷属になるだけよ」

「いや、いいわ。さすがに一生とか重荷だし」

 だよなぁ~。

 隷属にしたら愛着が湧いてしまうからな。

 どうせ、すぐにこの世界から元の世界に戻る訳だし。

「あら、残念」

 オレなどと話してた訳だが、





「うぎゃあああああああ」

「助けてくれえええええ」





 とか悲鳴が遠くから聞こえてきた。

「またか」

 アシュが呆れる中、

「またって?」

「この狩猟場は大蜥蜴が5頭くらい変異種に変化して強くなっててな。それに気付かずに『大蜥蜴くらい楽勝だぜ』と油断してる狩猟者が結構返り討ちにあってるのさ」

「アシュでも倒せないの?」

「いいや。1頭の尻尾を斬ってやったら逃げられた。それで怒ってるのかも」

「ふ~ん」

 この狩猟場は飛獣の乗り入れは禁止だ。

 魔物の分布が変わるとかで、飛竜ワイバーンは狩猟場の外側にある拠点の1つの厩舎に預けてある。

 なので、入口までは徒歩な訳だが。

 そこで全滅した狩猟者の遺体を発見した。

 3体あった。

 誰も片付けないのか、野晒しだ。

「あららら、可哀想に」

「埋葬してやろう」

 というのがアシュの言葉で、

「あら、意外に優しいのね」

「まあな」

 だが、穴掘りなんて馬鹿らしい。

 なので、

「なら、いい方法があるわ」 

「どんな?」

「魔法でスケルトンにして自分の入る穴を掘らすの」

「出来るのか?」

「ええ、魔石があるから余裕よ」

 この発想までは何の問題もなかった。

 問題はオレが革袋のアイテムボックスから鷲掴みにして大小20個くらいの魔石の中に妙な波長を放つ魔石があった事だ。

 何だ?

 オレは他を地面に置いて、その一つを太陽に翳した。

「どうしたんだ?」

 アシュの問いに、

「これだった訳ね」

 オレは答えた。

 翳した赤色の魔石の中には模様が描かれてる。

 天然の魔石じゃない。

 既に加工されてる。

 おそらくは用途は【座標発信】。

「何の事?」

「ほら、裸のデブ王がアイテムボックスに目印があるとか言ってたでしょ? まあ、1つとは限らないけどね。もしかしたら他にもあるかも」

 そんな訳でオレはアイテムボックス内にある魔石を全部地面にぶちまけた。

 魔石は唸るほどアイテムボックスの中に入っていた。

 全部で2000個以上。

 その全部を地面にぶちまける。

 その中で変な波長が放ってるのは他に3つ。

 【座標発信】が2。

 【遠視】が1。

 ふふん。

 やってくれるぜ。

「こんなに魔石を持ってたのか、ご主人様?」

「まあね」

 もしかして他にもあるかも。

 そんな訳で、魔宝石の装飾品100個も地面にばら撒いた。

 こちらは総て加工品だが。

 遠隔で妙な効果を発動してるのが、指輪と首飾りだった。

「ご主人様って金持ちなんだな?」

「これくらい普通よ」

 と答えたオレは、それら目印となってる魔石4個と魔宝石装飾2個、それに地面にばら撒いた魔石60個と魔法剣も遺体の上に置いて、

「【骸骨兵製造】っ!」

 魔法を使って遺体の1つをスケルトン兵に変えた。

 えっ?

 どうして勇者が死霊魔法まで使えるのかって?

 そんなのオレが天才だからさ。

 ・・・オーケイ、分かった。

 今のはオレが悪かった。

 本当の事を教えよう。

 令嬢こっちの身体には備わってないが、オレの元の身体の方には相手の能力を喰える能力が備わっててな。

 王級の死霊術師とやりあった時にその死霊術師の死霊魔法の能力の知識を戴いたって訳だ。

 向こうの世界では肉体フィジカルが強過ぎたので、死霊魔法なんて使った事、まあ、試しに何回か使ったが、でもそれだけで後は使わなかったが、

 こっちの世界に飛ばされて80年間の修行中に知識があったので、才能があるかもしれないから一応死霊魔法も覚えさせておこうって修練したら覚えられたって訳さ。

 だから、スケルトンだろうとゾンビだろうと製造出来るって訳だ。

 もしかして野良のらのゾンビにも命令が出来るのかって?

 さてな (ニヤリッ)。

 そんな訳でスケルトンを作成出来ていた。

 因みにスケルトン1体を作るのに必要な魔石は最低1個だ。

 1個でもスケルトンは作れる。

 60個もつぎ込んだのは強いスケルトンを作るのが目的だ。

 もったいないって?

 魔石はまだ1950個以上あるんだからいいだろう、これくらい。

 そして完成したスケルトンは、何と形容しようか、

 明らかに普通のスケルトンではなく、

 王冠と赤マントと錫杖を持ったスケルトンキングだった。

 うおっと。

 さすがはオレだ。

 戦闘力2500のスケルトンキングを作成するとは。

 もう1体作りたくなってしまったオレは、

「あれ、もしかして失敗かな? じゃあ、こっちの遺体で」

 そう白々しく呟いて、地面に置いた魔石を両手で4回掬って、魔石120個と魔宝石の嵌められた魔法の杖を遺体の上に乗せて、

「——【骸骨兵製造】っ!」

 魔法を使うと、今度は立派な過ぎる鎧を纏ったスケルトンナイトが完成した。

 戦闘力2100。

 魔石の数よりも魔宝石の数が戦闘力に反映される訳ね。

 それとも遺体との相性?

 ってか、魔法の杖を使ったのにナイトが出来るって。

 その矛盾に内心でツッコミながら、

「ナイトは穴を掘って。遺体を埋葬するから」

 オレが命令すると、

「ハッ、我が主殿」

 と返事して、アシュが驚いて、

「へっ、喋った?」

「喋るでしょ。高位のスケルトンなんだから」

 オレはさらりと言った。

 穴を掘ってる間に、オレは地面に置いた魔宝石の装飾をまずは片付けた。

 続いて、魔石を片付けようとしてたら、

 茂みから魔物が襲ってきた。

 赤狼だ。

 それも猟犬サイズの。

「鬱陶しいわ」

 蹴り一発で余裕で、

「キャン」

 と倒したが、

「狼もスケルトンに出来たりするのか、ご主人様?」

 アシュのこの質問が拙かった。

「出来るわよ」

 と調子に乗ってオレが2回掬って魔石80個を使って、

「【骸骨兵製造】っ!」

 魔法を使ったらデカくなって熊サイズになった。

 戦闘力500。

 デカイだけの見かけ倒しか。

「うわ。これ、大丈夫なのか?」

「大丈夫でしょ」

 オレはそう言いながら地面にばら撒いた魔石1700個をアイテムボックスに入れながら、

「手癖が悪いのね、おまえ」

 スケルトンキングを見た。

 オレが赤狼に構ってる隙にスケルトンキングが落ちてた魔石をパクってたからだ。

 魔石というくらいだから魔石は魔力を帯びている。

 だから分かる訳だ。

 オレくらいの達人になると。

「申し訳ございません。我にも出来るのか興味があり」

「まあ、いいけど。それくらいだったら」

 オレは魔石の所有を認めた。

 一般人には一財産でも、オレは魔石程度には執着がなかったので。

「今、やってみせて」

 という訳で、スケルトンキングが最後の遺体に魔石15個を乗せて、

「【骸骨兵製造】っ!」

 魔法を使った。

 アシュが、

「スケルトンが魔法を使った?」

「そりゃ使うでしょ、上位職にはメイジも居るし」

 とオレが言う中、スケルトン製造は成功で、

 戦闘力180。

 のスケルトン兵が完成したのだった。

 残る魔石35個を私物化したか。

 スケルトンキングは頭もキレる訳ね





 ◇





 そこまではまだ問題なかった。

 悪いのは勇者であるオレに人徳があり過ぎる事だ。





「じゃあ、私達は帰るから。全員自由にしていいわよ。そうだ、遠視で見てくる奴が居たらそれは敵だから全員潰すようにね」

 オレがそうスケルトンキングに命令したが、 

「あの、我に名前をいただけないでしょうか?」

「名前?」

 名前持ちネームドって奴か。

 名付けるのって意外にセンスが問われるから嫌なんだよなぁ~。

 と思いつつ、いい事を考えたオレは、

「じゃあ、永遠フォーエバーで」

 さらっと敵対する魔十教団の幹部の名前をスケルトンキングに付けた。

「ありがとうございます」

 スケルトンキングが喜ぶ中、

「そっちのおまえは・・・」

 足元に転がってた名前入りの冒険者のタグが視界に入ったので、

「ユニウス・カーリー」

 そう名付け、狼には、

「狼のおまえはセリーナ」

 そう名付けた。

 この名前はこっちにきた時にパーティーに居たピンクブロンドの名前ね。

 適当に付けたが、スケルトン達は大喜びだ。

「じゃあね」

 そして別れようとしたのだが、人徳が有り過ぎるオレに、

「我々を連れて行ってくれないのですか?」

 とスケルトンキングがなついてきた。

「悪いわね。私達は他にもやる仕事があるのよ。じゃあね」

 こうして、スケルトンどもと別れて、
 アシュと2人で拠点を目指して歩き出したらスケルトンどもが付いてきて、

「ご主人様、付いてくるぞ」

「自分の王国でも作りなさい、永遠フォーエバー。これは命令よ。国名は『新生魔十教団』にするように。ユニウス・カーリーとセリーナは永遠フォーエバーを手伝ってあげて。それと喧嘩を売ってきた奴はちゃんと殺すのよ。じゃあね」

 オレはそう言うとアシュをお姫様だっこして、

「ちょ、ご主人様、キャアア」 

 大跳躍で一気に逃げたのだった。





 ◇





 そして拠点から飛竜ワイバーンに乗って、同じナーダ王国領内の主要都市であるモル・シティで一泊して、

 翌朝、飛竜ワイバーンで飛ぶ、まさにその時、城門が破られた訳だ。





 なあ?

 オレ、余り悪くなかっただろ?

 スケルトン達は自分の意思でシティを襲ってるんだから。





 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇





 登場人物。





 スケルトンキング・・・永遠。戦闘力2500。

 スケルトンナイト・・・ユニウス・カーリー。戦闘力2100。





 国名。





 ナーダ王国・・・オズ帝国の南属国群の1つ。元首は国王。





 地名。





 モル・シティ・・・ナーダ王国の第2都市。東部の要。
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