上 下
15 / 19

15

しおりを挟む
そして、一週間後。

「・・・・君に、謝らなければならないことがあるようだ。あと、感謝も」

一週間ぶりに殿下に呼ばれたと思いきや、突然そんなことを言われる。

「あの時は、」

「殿下」

私は殿下の言葉を遮る。

「すぎたことはよしてください。過去をいちいち振り返る趣味はないので」

ツンと言うと、これ以上だめだと思ったらしく、次に移ってくれたようだ。

だいたい、私だって同じくらい・・・むしろそれ以上言ってしまったのだし、お互い様なのだから。

「この間、ケンタイヤ家から手紙が来たんだ」

へえ。

「今までしつこくて悪かったと、な」

ほほーう。

成長したな、当主。

「それから、こんなうわさも流れている」

噂?

「第二王子は賢くて・・・うんたらかんたら。その婚約者も性格がよすぎてうんたら・・・侍女は主思いだとか、な」

当主すご。

「だから、感謝している」

私は、しまった!と思う。

これじゃあまるで、殿下のためにやったようではないか。

「か、感謝されるためにやったわけではなくて!」

慌てて椅子から立ち上がりながら言う。

褒められたのが、なんだかむずがゆい気もした。

「私の評判のためにやっただけですわ!別に殿下のためにやろうとか、そんなことを思った覚えはありませんので!!誤解するなんてひどいです!!」

ほぼ叫ぶように私は自室へ走って行った。

いや、逃げたと言った方が正確だろうか。






私は、逃げかえった殿下の婚約者の出て行った先を茫然と見ていた。

すると、クスッと笑い声が聞こえる。

「彼女は・・・違うのかもしれない」

・・・。

「表だけ見ていたから分からなかったが、本当は、我がままではないかもしれない、ってことだ」

はあ・・・。

「それに・・・今のはちょっと可愛かった」

口に手を当てて言う殿下に、同意しなくもなくもなくもないが、何とも言えない気持ちで開けっ放しのドアを見ていた。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

殿下、人違いです。殿下の婚約者はその人ではありません

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:56pt お気に入り:2,339

〖完結〗王女殿下の最愛の人は、私の婚約者のようです。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:2,811pt お気に入り:5,330

恋心を利用されている夫をそろそろ返してもらいます

恋愛 / 完結 24h.ポイント:34,257pt お気に入り:1,279

旦那様の溺愛が常軌を逸している件

恋愛 / 完結 24h.ポイント:1,393pt お気に入り:1,506

貴方へ愛を伝え続けてきましたが、もう限界です。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:7,428pt お気に入り:3,810

処理中です...