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馬車の中で寄り添いルィーズ夫人はいっものユリウス父さんと少し違うように感じ問い掛けていた。
「ユリウス様今日は何か合ったのですか?」
「…どうしてそう思うんだい?」
「いつもより激しかったものですから…ふふふ」
ユリウス父さんは頭に手をやり「そんなに激しかったのかい?」と、苦笑いをしていた。
「……ユリウス様…奥様と別れました事は本当の事ですの?」
「…何故知って……」
ユリウス父さんは昨夜カイトが別れた噂が流れている事を聞き思い出していた。
「貴族中皆知って居ますわ…そしてシルビア王女と結婚の話しも」
「!」
ルィーズ夫人は隣に座っているユリウス父さんの顔をジロッと見てユリウス父さんは目を合わせる事が出来ないでいた。
「わたくしとこんな事をしていますのにシルビア様と結婚とはどういう事ですの?ユリウス様」
「え、あ~っ、ごめん…その…そういう流れに成ってしまったというか……今早まった事に後悔しているんだ…もっとシルビアの事を知るべきだったと……そしてユリーナと子供達と別れた事に後悔している…」
ユリウス父さんは顔を下に向き後悔と言う言葉が何度も頭の中に入り離れなかった
「……何故奥様と別れる事に成りましたの?わたくし何度か奥様と御話ししましたが、笑顔がとても素敵な方でユリウス様と一緒にいるお姿が羨ましかったのですよ。わたくしシルビア様より奥様が良かったのに…残念ですわ」
「……別れるつもりは無かったユリーナも子供達も一緒に城に住んで欲しかった幸せな生活を送って貰いたかったんだ…」
「そのお城の生活になる事が分かりませんわ…以前からシルビア様の事を話された事は知って居ますわ…何度もシルビア様の告白を御断りした事もユリウス様から聞きました。
ですが、断っていた事が何故結婚なのですの?」
ルィーズ夫人が不思議そうにユリウス父さんの顔を見ていた
「……えっと…その…シルビアが私の事を諦めない姿を見て涙を流している姿を見たら一途な想いに心を動かされたと言うか…それでシルビアの告白が私も告白した流れが結婚の方へ行ってしまったというか……」
オロオロと困ったような感じで話をしているユリウス父さんの顔を見ていたルィーズ夫人は「はあ…」と呆れたようにため息を吐いていた。
「ユリウス様は泣いている女を見れば誰にでも告白するのですね…わたくしの時もそうでしたから…旦那様が亡くなり屋敷に居ますと思い出しますので、お城で気が紛ればと思い貴婦人の方々の側におりましたが、皆さんご主人様の話が多かったもので、わたくしだけその場を離れ泣いている時ユリウス様が声を掛けたのですわ…」
「……そうだったね……あの日ルィーズの泣く姿をそのままには出来なくてね声を掛けたんだ…私は君に出会えて良かったと思っているよ…」
ユリウス父さんはルィーズ夫人の顔を見て微笑み初めて会った時の事を思い出していた。
「ユリウス様……女性の方が泣いて告白してもそれを受けとる事はしない方が良いですわよ。今告白の事で後悔をしていますユリウス様がいい例ですわ!」
「うっ!」
ズバッ、と言われたユリウス父さんは肩を落とし落ち込んでいた
「シルビア様と昨日御会いして思ったのですが、泣き癖が付いて仕舞われたようですね…それに嫉妬深いかと思いましたわ。
今わたくしとユリウス様が一緒にいる所を見ましたら…恐いですわねユリウス様…ふふふっ」
「ううっ…私を苛めないでくれルィーズ、城での生活にも参って居るのに……」
ルィーズ夫人はユリウス父さんに言葉責めで楽しんでいるように見える…ルィーズ夫人は自分よりも先にシルビア王女を選んだ事が不満だった。
「……ユリウス様御住まいはどうしているのですか?ブランシェ家は出られましたと御聞きしましたけど…」
「……そこまでも知って居るのかい?噂は怖いな…昨日の夜から城で生活をするように成ったんだが、シルビアの行動で参って居るんだ……部屋の前で待ち伏せと騎士達の前でも側を離れずルィーズと会う前も大変だったんだ…はぁ…」
ユリウス父さんは体の上半身を前屈みになり髪をかきあげていた
「……楽しそうですわねユリウス様、シルビア様と、もうお城で一緒に御住まいだなんて…わたくしと会う事は御結婚までの間シルビア様と関係が出来ない為わたくしはその穴埋めで御座いますか?」
「ルィーズ?」
ルィーズ夫人も知っている事で、王族では婚約から結婚の間お互い関係を持つことは出来ない、そして他の者とも関係を持つことも駄目な為もし、隠れて関係を持ち知られた場合は結婚は出来ない為処罰が下される事になる。
(旦那様が亡くなり心にポッカリと穴が空いた時にユリウス様が現れた。笑顔で話され独り身と成ったわたくしを心配してくれて甘える事も教えて下さった。奥様もいる事は知っていたけど、ユリウス様もわたくしと会う事をお止めにならず、わたくしを愛してくださった。奥様の次でもわたくしの事を「愛している」と言って下さった。昨日ユリウス様とシルビア様が抱き締めている姿を見て何故?と思い、屋敷に帰宅した後執事からユリウス様がユリーナ様と別れシルビア様と結婚すると聞き胸が押し潰される感じがして、「何かの間違いよ」と自分で言い聞かせていた。
ユリーナ様と別れて何故シルビア様と結婚なのですか?わたくしとは結婚して下さらないのですか?…と、今日ユリウス様と会い馬車の扉の前でわたくしを見て激しく口づけを交わし会いたかったと言って下さり激しく愛を確かめる事が出来たのに……ユリウス様はお城で生活を始める事に成ってしまった…わたくしは体だけの関係でしかないのだと……)
「…ルィーズ?どうしたんだ急に話さなくなって……それにさっき何を言って…」
「……ユリウス様…ユリーナ様と別れてわたくしとは何故「結婚」の言葉を下さらないのですか?何故先にシルビア様なのですか?」
「!?ルィーズ…」
ルィーズ夫人はユリウス父さんの顔をジッ…と見て話し出した。
「…ユリウス様……わたくしとあなた様は体だけの関係だったのですね…」
「な!?違うルィーズ私は君の事をそんな風には考えてはいない」
「……もう、帰ります……貴方にはシルビア様がお城で待ってますから…」
「!?待ってくれルィーズ私は……」
「セバスチャン、セバスチャン、ユリウス様がお帰りよ扉を開けて」
「ルィーズ待ってくれ」
ユリウス父さんはルィーズ夫人の腕を握り締め誤解を解こうとしていた。
「セバスチャン何をしているの?早くユリウス様を馬車から降ろしてあげなさい」
「は、はい、奥様…さっ、ユリウス様こちらへ……」
「ま、待ってくれルィーズ話を私の話を聞いてくれ」
「さっ…ユリウス様お引き取りを……」
ルィーズ夫人の執事がユリウス父さんを馬車から降ろし始め、ユリウス父さんは執事に体を押されながら馬車に近付く事を止めていた。
「ルィーズ、ルィーズ待ってくれ」
「…ユリウス様今はお引き取り下さい後程こちらから御連絡いたしますので…」
「……」
馬車の扉が閉め執事はユリウス父さんに礼をした後ルィーズ夫人を乗せた馬車は走り出しその後ろ姿を眺めて立ち崩れていた。

















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