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最愛の夫だった義理の兄に再び溺愛される 5

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店を出て歩いて数分の所には駅があって近くのアパートに着いた。
「ここ。散らかってるけど入って。」
「お邪魔しまーす……。って。」
なんかオシャレな部屋。それに散らかっていないじゃないの。此処に暮らしてるんだなあ。何時から一人暮らししてたんだろ。
「あのさ、何時から一人暮らししてるの?別にお母さんの家からでも良かったんじゃないの?」
「ん?ああ。母さんと住んでた家からだと会社が遠いし、それに早く自立したかったから高校卒業と同時に家を出たんだ。」
ちゃんと理由あるんだなあ。羅漢の部屋見たらイヤな事言っちゃった。
「一人暮らしだと女の人連れ放題だよね。」
「そうだな。そう思われても仕方ないな。」
あ、言うつもり無かったのに。だけど思った。この部屋に何人連れてきてセックスしたんだろって。夕飯の野菜炒めを持ってきた羅漢は
「アインほど凝ってないけど食ってくれるか?」
「あ、うん。………………。」
なんだかお腹空いてきた。上着脱いで座る。なんか普通に美味しそう。匂いも。うん、良いし。一口食べたら。
「え……。おいし……。」
「そうか?良かった。」
ご飯が進む味だよこれ。野菜もシャキシャキなままだし。お味噌汁も美味しかったし。ご飯もおかわりして夕飯を堪能したら。久しぶりにのんびり寛いだ。何時もなら自分で作るけど作ってもらったのは何時以来かな。
「はぁ~。食べた……。」
「一人暮らしする前からよく作ってたんだ。母さん看護師だから忙しくて作れない時もあったから。」
「そっか……。オレ、毎日作ってる。」
「高校受験する時もか?偉いな。」
偉いのかな。偉いとか思った事はないな。大体アイツが作らなかったから作ってただけだし。
「あのさ、お昼の人。」
「うん。今日みたいな事は前からよくあったんだ。」
羅漢として転生して、オレは転生してないのかと探してた羅漢は。昔から女の子から付き合ってと告白されてたみたい。次第に
「中学になれば精通も始まるだろ?イヤでもアインとしていた記憶で欲が溜まるんだ。幼かったオレはその欲求不満を女にぶつけてアインを抱いてる気分になってたんだ。」
本当に抱きたかったのは他でもないアインだけなのに。欲だけは溜まっていって。近寄ってきた女で解消しては今日のように言われてきたらしい。
「それとこの部屋にあげたのは母さん以外だとアインが初めてだ。女を連れ込んだ事はない。後々付きまとわれたら面倒だからな。」
話を聞いて、羅漢は辛かったんだなって思い直した。オレも男だからムラムラしたらしたくなるし。オレは
「オレ、羅漢が。女の人としてたって聞いてモヤモヤした。」
「うん。」
「なんでって。オレが好きだって言葉ウソだったの?って思った。」
「そうだろうな。そう思われても仕方ないな。」
「オレその事をバイトの先輩に話したら焼きもちやいてるって、言われた。遊びでも羅漢に抱いてもらえたから焼きもちやいてるって。」
これまでの女たちにやいていたとは思ってなかったみたいで、オレの顔を見て
「……アイン。」
「もう、止めてよ?他の人抱くの。」
「ああ。アインが好きなのに何故抱く必要あるんだ。」
「悪かったと思ってる?」
「思ってる。ごめんな。」
それなら、これくらいして欲しいなと思ってオレは羅漢の膝に馬乗りすると羅漢の首に腕を回して
「ならキスして。」
「え。や、それは……。無理だ。」
「なんで?悪かったと思ってるんでしょ?なんで無理なの?オレがキスしたこと無いから?」
そっちではない!いや、まて。キスしたこと無いのか?それはそれで。アインはそこも変わらないんだな。前からどこか天然というか、そういうとこあったが。
「そうじゃない。キスしたらそれだけでは済まないと言ってるんだ。」
「ええ?それだけでは済まないってなにが?」
「……本気で言ってるのか?」
今の状況分かってるのか?と言われたら馬乗りになってたのに床に押し倒された。知らない天井に間近にある羅漢の顔。この状況にきて自分が何を言ったのか分かった。
「今はアインと二人きり。それでアインの最初のキスの相手がオレだけでも結構クるんだぞ?二十歳くらいの男の性欲を甘く見るなよ。それにアインが18歳でなければオレは逮捕される。それを忘れたのか?」
「あ……。」
「アインが18歳で合意を得ていたら間違いなく抱いてた。」
分かったらもう男を煽る事を言うなよと言ったら退いてくれて起きたオレの髪の毛の毛先に唇を寄せる。
「それまではこれで我慢してくれ。」
「……。うん。あの。」
来月誕生日だからしてくれない?ってゴニョゴニョと言ったら。ふぅとため息付かれて
「それを煽ると言うんだ。それにオレはそれほど我慢強くは無いんだぞ。」
「そう、かも。だけど。オレが良いなら大丈夫なんでしょ?オレも、羅漢に触ってほしいけど我慢するから。18歳になったらしてくれない?オレも、羅漢が好きって気付いたから。触ってほしいし、触りたいの。そう思って何が悪いの?」
そう言われたら何も言えないのか言葉を詰まらせる羅漢。至って当然な欲求なだけに尚更言えなかった。そんな羅漢にアインは顔を赤くしたら
「それから。告白だけど、してくれてありがと。再会した時だったからすごいビックリしたけど、オレ嬉しかった。オレも、羅漢と付き合いたいって思ってるんですけど。」
「………………ホントか?」
「うん。さっきの人に嫉妬したし。それに好きなのは前も今も変わらないから。」
記憶が戻る前までは女の子が好きで可愛いなとは思ってたけど、付き合いたいとまではならなかった事。
かといって男なら誰でもいいわけではなく、羅漢の方がカッコいいなと比較する事が増えた事。
気付けば何時も羅漢の事ばかりを考えてて今日の出来事がきっかけで好きな事を自覚した。
自分の気持ちを話してみて、アインは
「オレ、鈍いとは思うけど。付き合いたいと思うのは本気だから。それじゃダメかな?」
「……ダメじゃない。」
すごい嬉しい。そう言って優しいのに抜け出せない力で抱き締められた。今の羅漢どんな顔してるのかなと思いつつ、フワリと香る柔軟剤の香りのするシャツに顔を埋める。
「いい匂い。温かいなあ……。」
「……。送っていく。」
「え?」
急に離れられて戸惑うアインに羅漢はもう外は暗い、明日は学校だろうと言われ。
「う、うん……。」
もう少し抱き締めて欲しかったなと思ったが。ふと思い返した。抱き締められた時自分は何をした?ちょうど鎖骨の辺りに顔を埋めた。あのままだったら確実に事に及んでただろう。
『ヤバい、完全に無自覚だった!』
「え、えと。羅漢ゴメン。さっきの無自覚で。煽ろうとか思ってなくて。」
「ああ、分かってる。ほら、家に帰るぞ。」
「うん。」
アパートを出て駅まで歩き、電車に乗ると椅子に座る。
「………………。」
「……………………。」
お互い好きな人と電車に乗ったこと無いのか会話が無い。どう会話してたっけ?と忘れたのもあるが。アインが
「あの、さ。また来ていい?」
「……。ああ、待ってる。」
来る前に連絡くれ。の一言で会話が再開するとあっという間に最寄り駅に着くと降りて、駅を出たらまた歩く。
「あ……。」
見えてきた。もっと話してたかったなと思ってるとあっという間に自宅の玄関に着いた。
「もう着いてしまったな。」
少し惜しいよ。と言う羅漢を見詰めたら
「ホント?もう着いて残念って思う?」
「ああ。もっといたかった。ゆっくり休めよ?それと。」
部屋の鍵だと合鍵を渡してきて。アインはギュッと握りしめて
「ありがと。エヘヘ。」
「アイン。」
ふいに名前を呼ばれ、顔を上げたら額にキスされ
「おやすみ。」
「…………。おや、すみ。」
おやすみと答えたら羅漢はそのまま帰っていった。家に入り、部屋に戻ると
「……………………。」
ヘタヘタと力無く床に座り込んだら一気に顔を赤くした。羅漢はどんな気持ちでキスしたのかなと考えて、
「………………。眠れるかな……。」
そうポツリと呟いた。
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