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15.憂鬱なお茶会
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レオポルティーナは1年後に18歳になるが、それと同時に2歳年上のフェルディナントと結婚することになっている。本来だったら愛しい婚約者との結婚を控えて幸せいっぱいのはずだが、レオポルティーナはフェルディナントや意地悪になった幼馴染ヨハンとの人間関係に最近悩んでいる。
そんな時に親友のグリュックスブルク伯爵令嬢ウルスラからお茶会の招待状が来た。ウルスラと恋の悩みを相談しあったり、令嬢達の恋バナを聞いたりするのは気が紛れていい。レオポルティーナは速攻で出席の返事を出した。
そしてお茶会当日――レオポルティーナは初っ端から後悔している。
「――とうとう婚約者とキスしてしまいましたの!」
「キャー!素敵っ!どうやって護衛と侍女をまきましたの?!」
相思相愛の婚約者同士のノロケ話はレオポルティーナの精神をガリガリ削った。
(ああ、こういう恋バナは大好物だったのに!今はもう聞きたくない!)
レオポルティーナは、キスどころかダンスとエスコート以外でフェルディナントに触れたことも触れられたこともほとんどない。悩みだしたら令嬢達の恋バナは聞いていて辛いものに変わってしまった。
この国-シュタインベルク王国-は教会の力が強くて堕胎と同性愛が認められていない。離婚は爵位を相続する者に限り、婚姻7年以内に子供ができない場合のみ、許されている。この国と教会は結婚前の貞節にもうるさい。でも人は締めあげられると抜け道を探すものだ。恋人達はいかにお付きの者達の目を盗んで触れ合って愛を確かめようかと躍起になる。政略結婚の夫婦は双方承知の上で愛人を持ったり、娼館に通ったりする。でもレオポルティーナは、夫婦仲のよい両親のように大好きなフェルディナントと愛し合う夫婦になりたい。だから、優しくて礼儀正しいけど、距離を縮めさせないフェルディナントとの関係にレオポルティーナは悩んでいる。
恋バナにキャッキャウフフと花を咲かせている令嬢達の中でレオポルティーナは上の空で相槌を打つ。そこにこのお茶会の主催者のウルスラがそっと近づいてきた。
「はぁ……」
「ティーナ、あんまりため息つくと幸せが逃げてくわよ。悩みだったらお茶会がお開きになったら聞くわよ」
令嬢達に聞かれたらまずいであろう悩みだと親友のウルスラにはわかっているから、彼女はレオポルティーナに小声で囁く。親友はいつもレオポルティーナの気持ちを察して気を遣ってくれる。レオポルティーナは涙が出そうなくらいうれしかった。
2人のいるテーブルに正面からお茶会に相応しくない真っ赤なドレスを着た令嬢が近づいてきた。フェルディナントに言い寄っている侯爵令嬢アンゲラだ。レオポルティーナの少し持ち直した気持ちは、彼女を見つけてまた急降下した。
「ティーナ、ごめんなさい。あの娘は招待してなかったんだけど…誰かの代理の振りで入り込んだみたい」
「いいわよ、気にしないで」
そうは言ったものの、レオポルティーナの顔色は悪い。それを見たウルスラは招待状を横流しした令嬢も二度と招待しないと決意した。
レオポルティーナはアンゲラのほうを見ないようにしていたが、アンゲラはレオポルティーナをロックオンして話しかける。
「レオポルティーナ様、ごきげんよう。あの夜会以来ですわね」
「ええ…ごきげんよう…」
「いつまでフェルディナント様に固執しているおつもりですの?」
「えっ?!」
「フェルディナント様は侯爵家の後継ぎよ。貧乏な伯爵家の娘より侯爵令嬢の私のほうが相応しいに決まっているでしょう?」
「アンゲラ様!私のお茶会で喧嘩を売るのはお止め下さい!」
「いいえ、これは喧嘩じゃないわ。正当な申し入れよ。そうじゃなきゃ、こんなチンケなお茶会にわざわざ私が来るはずないでしょう?首を洗って待ってらっしゃい!」
アンゲラは声高らかに勝利を確信しながら去って行った。
ウルスラはあまりの怒りで顔が真っ赤になって拳を握りしめたが、すぐに『私としたことが…』と我に返って再び令嬢の仮面を被った。だがウルスラが我に返った後でもレオポルティーナは呆然としたままだった。
そんな時に親友のグリュックスブルク伯爵令嬢ウルスラからお茶会の招待状が来た。ウルスラと恋の悩みを相談しあったり、令嬢達の恋バナを聞いたりするのは気が紛れていい。レオポルティーナは速攻で出席の返事を出した。
そしてお茶会当日――レオポルティーナは初っ端から後悔している。
「――とうとう婚約者とキスしてしまいましたの!」
「キャー!素敵っ!どうやって護衛と侍女をまきましたの?!」
相思相愛の婚約者同士のノロケ話はレオポルティーナの精神をガリガリ削った。
(ああ、こういう恋バナは大好物だったのに!今はもう聞きたくない!)
レオポルティーナは、キスどころかダンスとエスコート以外でフェルディナントに触れたことも触れられたこともほとんどない。悩みだしたら令嬢達の恋バナは聞いていて辛いものに変わってしまった。
この国-シュタインベルク王国-は教会の力が強くて堕胎と同性愛が認められていない。離婚は爵位を相続する者に限り、婚姻7年以内に子供ができない場合のみ、許されている。この国と教会は結婚前の貞節にもうるさい。でも人は締めあげられると抜け道を探すものだ。恋人達はいかにお付きの者達の目を盗んで触れ合って愛を確かめようかと躍起になる。政略結婚の夫婦は双方承知の上で愛人を持ったり、娼館に通ったりする。でもレオポルティーナは、夫婦仲のよい両親のように大好きなフェルディナントと愛し合う夫婦になりたい。だから、優しくて礼儀正しいけど、距離を縮めさせないフェルディナントとの関係にレオポルティーナは悩んでいる。
恋バナにキャッキャウフフと花を咲かせている令嬢達の中でレオポルティーナは上の空で相槌を打つ。そこにこのお茶会の主催者のウルスラがそっと近づいてきた。
「はぁ……」
「ティーナ、あんまりため息つくと幸せが逃げてくわよ。悩みだったらお茶会がお開きになったら聞くわよ」
令嬢達に聞かれたらまずいであろう悩みだと親友のウルスラにはわかっているから、彼女はレオポルティーナに小声で囁く。親友はいつもレオポルティーナの気持ちを察して気を遣ってくれる。レオポルティーナは涙が出そうなくらいうれしかった。
2人のいるテーブルに正面からお茶会に相応しくない真っ赤なドレスを着た令嬢が近づいてきた。フェルディナントに言い寄っている侯爵令嬢アンゲラだ。レオポルティーナの少し持ち直した気持ちは、彼女を見つけてまた急降下した。
「ティーナ、ごめんなさい。あの娘は招待してなかったんだけど…誰かの代理の振りで入り込んだみたい」
「いいわよ、気にしないで」
そうは言ったものの、レオポルティーナの顔色は悪い。それを見たウルスラは招待状を横流しした令嬢も二度と招待しないと決意した。
レオポルティーナはアンゲラのほうを見ないようにしていたが、アンゲラはレオポルティーナをロックオンして話しかける。
「レオポルティーナ様、ごきげんよう。あの夜会以来ですわね」
「ええ…ごきげんよう…」
「いつまでフェルディナント様に固執しているおつもりですの?」
「えっ?!」
「フェルディナント様は侯爵家の後継ぎよ。貧乏な伯爵家の娘より侯爵令嬢の私のほうが相応しいに決まっているでしょう?」
「アンゲラ様!私のお茶会で喧嘩を売るのはお止め下さい!」
「いいえ、これは喧嘩じゃないわ。正当な申し入れよ。そうじゃなきゃ、こんなチンケなお茶会にわざわざ私が来るはずないでしょう?首を洗って待ってらっしゃい!」
アンゲラは声高らかに勝利を確信しながら去って行った。
ウルスラはあまりの怒りで顔が真っ赤になって拳を握りしめたが、すぐに『私としたことが…』と我に返って再び令嬢の仮面を被った。だがウルスラが我に返った後でもレオポルティーナは呆然としたままだった。
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