小さな恋とシロツメクサ

能登原あめ

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22    結婚式

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 私は母さんが結婚式の為に用意してくれた髪色に合わせた乳白色のドレスを着て、オーブリーの隣に立った。
 ちょっと可愛すぎるふわふわしたドレスで、母さんの夢が詰まってる。

「エラ、かわいいよ」
「オーブリーもカッコいいよ」

 いつの間にか愛してると言う意味合いに変わった言葉に、お互い微笑む。
 
 海豚亭の中庭で暖かい日差しを浴びながら結婚を誓い合い、お互いの薬指に指輪を通す。
 オーブリーはさりげなくシロツメクサの四枚の葉をデザインした指輪も私の薬指にはめた。
 花冠と違って色あせないからずっとつけてって。

 トム父さんとソフィア母さん、デーヴィド。
 仕事中に順番で顔を出してくれたウィルとミリーにモーガン。

 みんなからの祝福を受け、私はオーブリーを見て微笑む。
 
 みんなにおめでとうって言われて、これから二人で頑張ろうって思う。
 こうして夫婦になるんだね。

「オーブリー、これからずっと、よろしくね」
「こちらこそ、よろしく。……エラ、俺と結婚してくれてありがとう」

 私の左手をとり、指輪の上に口づける。
 みんなが見ているから恥ずかしい。
 赤くなる私に母さんが笑う。

「二人とも、もう部屋に戻っていいわよ。私たちもこっちで適当にやるから」

 父さんもうんうん、とニコニコして頷いている。

「休みの間は心配しなくていいから、任せて」

 デーヴィドが視線を逸らして言う。

「ありがとう、デーヴィド。みんなもよろしくお願いします」

 私の言葉の後を続けて、オーブリーが改まって話す。

「……今日はこうして皆さんに祝ってもらえて嬉しいです。エラを大切にします。どうか今後ともよろしくお願いします。料理もデザートもすべて持ち帰れるよう手配してあるのでこの後は自由に過ごして下さい……では、お言葉に甘えて失礼しますね」

 手の空いた時間帯で、今はここにミリーだけ残っているけど、宿屋の仕事も気になるから私たちが引き上げたほうがいいんだろうな。
 
 そんなことを考えていたら、私はそっと宝物を扱うように優しく抱き上げられて、オーブリーと席を外すことになった。
 
「みんな、今日はありがとう。私、オーブリーを幸せにする!」
「逆だろ⁉︎」

 デーヴィドの指摘にみんなが笑う。

「俺も幸せにする……二人で幸せになります」

 明るい笑い声の響く中、恥ずかしさにオーブリーの胸に顔を押し当てた。









 前回と違い、白を基調としている部屋は、ベッドに淡いピンクの花びらが撒かれていかにも新婚さん向けの部屋みたい。
 この雰囲気だと、お風呂に白い花びらが浮かんでいるのかな。
 そんなことをぼんやり考える。
 
「エラ、一緒に風呂に入ろう」
「……もう?」
「エラを感じたい」
「……ん、いいよ」

 オーブリーに望まれて私は赤くなる。
 彼に触れられると愛されてるって感じるし、気持ちいい。
 
 私は抱っこされたまま浴室へ運ばれた。
 
「このドレスを着たエラは妖精みたいにかわいいな……消えてしまうんじゃないかと心配になるから、脱がせるよ」

 そっと下ろされて背中のくるみボタンを一つずつ外していく。

「理由がおかしいと思うの」 
「俺は昔から森の妖精じゃないかと思っていた」
「……お転婆だったでしょ? あの森は私が自分らしくいられるところだったから……」

 そっとドレスが下に落とされ、私は後ろから抱きしめられた。
 薄い肌着だからオーブリーの体温が伝わって心拍数が上がる。

「俺にはそのままのエラを見せてくれ」
「うん。オーブリーもそうしてね」

 首筋にキスが落とされ私は身をすくめる。
 オーブリーがまとめ髪に差してある飾り櫛を抜き、結び紐をするすると外していく。
 簡単に解けた私の髪の中に優しく指を入れてほぐしてくれる。
 地肌に触れられると腰のあたりがむずむずするけど、うなじに触れる手が優しくて温かい。

「ちょっと待って」

 後ろで衣擦れがした後、私の肌着に手が伸びる。
 全てを脱ぎ捨てたオーブリーを前に私は彼の顔を見つめることしかできない。
 ほんの少し、彼がおもしろそうな顔を見せる

「……きれいだよ、エラ。まだ恥ずかしい?」
「……恥ずかしい」
「この休み中に慣れるから大丈夫だよ」
「うん。……わかった」 

 オーブリーがそう言うなら、そうなのかな。
 笑顔になった彼が、何も身につけていない私を抱き寄せて唇を啄む。
 そのまま縦抱っこで湯船の脇に立った。
 
「髪を洗うから、そこに座って」
「自分で洗えるよ?」
「これは夫の役目だから」 
「……そうなの? 私、知らないことばかりでごめんね?……色々教えてね」

 触れるだけのキスが落とされる。

「まずいな……エラが可愛すぎる」

 髪を濡らして泡立てた石鹸を使い指の腹で洗って、顔にかからないように流してくれる。

 続けて、泡立てた石鹸を私の腕にのせ、手早く手のひらで塗り広げていく。

「身体を洗うのも夫の役目だから」
「……そう、なんだ……」

 時々指先で緊張をほぐすようになめらかに動くから、私もだんだん心地よくなってきた。

「オーブリー、気持ちいい……」
「……それは、よかった」

 背中を洗っていた指が脇腹に伸び、私の胸を包み込む。
 そのまま手のひらで前面をていねいに撫で洗いする。
 なんだか少し物足りないと感じて恥ずかしい。
 次の瞬間、大きな手に覆われてこねるように触れてきた。

「んっ……オーブリー……?」

 親指の腹で胸の先端を撫でられてお腹の中がきゅんとした。
 そのまま指先で摘んで洗う。
 触られてるのは胸なのになぜか足が震える。

「かわいいな、エラ」
 
 耳たぶを啄みながら囁かれて私は小さく息を漏らした。

 
 


 


 
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