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私達の親友

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 時刻も17時を回ったので、私はエプロンをキュッと締めて夕食の準備に取り掛かった。

「私も料理手伝おうか? 大した事出来ないけど食材洗うくらいなら出来るよ」

 真澄はそう言ってくれたんだけど、私は首を左右に振って断る。

「真澄はお客様だしソファでりょーくんと寛いでて。あっちのソファ、革張りで座ったら気持ち良いんだよ」
「ああ……あの上品そうなソファ?」

 真澄がソファを指差しながら私に訊くと

「矢野ー、こっち来てなんか観よう! お笑いだったら矢野は何好き?」
 
 ……と、りょーくんも真澄をソファへと誘った。

「あー、お笑いはほとんど分かんないんだけど気になるのはコントかなぁ。最近トモとそんな話をして……」
「そんな矢野に朗報っ!藤井がめちゃくちゃ好きなコンビのコントDVDが今ここにあるんだけど~? 観たい?」
「えっ??! マジ??」
「マジ! 俺も好きだし♪」
「さすが亮輔くん!!」

 私はりょーくんの背中をキッチンから覗きつつお笑いにそれまであまり興味を持たなかった真澄にDVDをちらつかせたのかが不思議だったんだけど、すぐにそれは「藤井くんと共通の話題を作る為」という事に気付く。

(りょーくんなかなか良いところあるなぁ。まだあの2人、付き合ったばかりで互いの事を知る真っ最中だもんね)

 
 私は料理に集中しながらも、時々カウンターからりょーくんと真澄の様子を伺う。

 これは、2人に嫉妬してるんじゃなくて、単なる興味だ。
 りょーくんと真澄は親友といっても良い関係を築いているけど、2人きりになって喋る事は皆無だ。りょーくんと真澄の空間には必ずといっていい程藤井くんか私がくっついてるから。

 今日は藤井くんが家庭教師のバイトが昼から夜までバタバタっと立て込み、ここに来られなくなっちゃってすっごく残念だなって思ったんだけど、正直私は藤井くんや私抜きで会話する2人に興味が湧いていた。

(おお……髪を弄りながらりょーくんが喋ってる!お気に入りのヘアサロンの話とか2人でしてるのかなぁ?)

 チラ見したら、りょーくんが自分の金色の髪を弄りながら真澄に何かを喋っているのが見えたし

(あ、私の方を指差しながら喋ってる)

 それからもう少し時間が経つと、私の居るキッチンへりょーくんが振り向き指差ししながら真澄に何かを話していた。
 りょーくんが私に、イケメン的目配せをするのも忘れずに。

(やだもぅ……嫉妬してるんじゃないのにめっちゃ気になるし、りょーくんの目配せにキュンキュンしちゃうぅ♡)





「ご飯出来たよー」

 私の作った料理が出来上がり、ソファに居る2人に呼び掛けると、りょーくんが動画を切って真澄がこちらへ先に戻ってきた。

「わぁ♪ めちゃくちゃ美味しそう!!」
「真澄はビール大好きでしょ? ビールに合いそうなおかずをメインに作ってみたよ!」
「嬉し~♪ ありがとう朝香っ!」

 真澄は大喜びで私に抱きついてきたんだけど

「甘い卵焼きリクエストしたのに無いんだぁ……」

 りょーくんは逆に凹んじゃってる。

「今日の献立に卵焼きは合わなかったんだよぅ。その代わり、オープンオムレツにしたんだよ! キッシュ風!」
「本当だ♪ あーちゃんのキッシュ風オムレツも美味しいんだよなぁ♡」
「りょーくん許してくれる?」
「許す! めちゃくちゃ許す!!」

 それで私が「キッシュ風オムレツ」と呼んでる一品をりょーくんに見せた途端、不満顔からパァッと明るい笑顔に彼の表情が変わった。

「そんなに美味しいの? これ」
「矢野のほっぺた落ちるヤツだよ♪ もっとも一番美味しい卵料理はオムライスだけどね♡」
「オムライスはまぁ、親直伝なところあるからね!」

 真澄に私の手料理の美味しさをアピールするりょーくんが可愛くもあり、くすぐったくもある。

 料理のお皿を全部並べ終え、真澄がグラスに飲み物を注いだら3人全員席につく。

「かんぱーいって言いたいとこなんだけど、私だけアルコールなのは忍びないなぁ……」

 飲み物は真澄がビール。りょーくんがノンアル酎ハイ。そして私がジンジャーエールだ。

「あーちゃんが20歳になったら俺もアルコール解禁しようと思って」
「朝香が20歳にって、あと2週間……」
「ごめんね真澄。りょーくん、なんか自分でそう決めちゃってて」

 勿論、りょーくんが私の誕生日まで禁酒する事も真澄達に話はしている。

「ごめんな矢野。今度は藤井と4人でアルコールって事で」
「トモは誕生日1月なんですけどー! 早く4人でアルコール飲んでほろ酔いしたいよー!!」
「大学2年ってもどかしいよね。真澄は4月生まれだから特に」

 りょーくんが大学1年……しかもまだ18歳の時に悪酔いする程強いお酒を飲んでた話も真澄はこの前の藤井くんのお部屋で知って、りょーくんにはそのトラウマがある事の理解もあるから真澄も強要はしない。
 だけどやっぱり1人だけアルコール入りなのは寂しいみたいだった。

「まぁいいや!! かんぱーい!!」
「「かんぱーい!!」」


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