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25、例の女子生徒はフジコさんというそうです。
しおりを挟むあの騒動のあった日から、マキシム君と例の女子生徒は、頻繁に行動を共にする様になりました。その為、いつしかまわりも二人を恋人同士として認識するようになりました。
そして、今日も例の女子生徒はマキシム君に会う為に、特別クラスに遊びに来ており、まわりはそれを当然の事のように受け入れているのでした。
「マキシム君、今日も一緒に街へ行ってくれるんでしょう?‥‥私ね、一人でいると、また例の彼が絡んで来そうで怖いの。」
「良いよ。僕もちょうど街へ行く用事があるんだ。一緒に行こう。‥授業が終わったら、僕がフジコさんのクラスへ迎えに行くよ。」
「嬉しい!では、待ってますね。」
例の女子生徒はフジコさんというそうです。フジコさんは、マキシム君との約束を取り付けると、満足そうに自分のクラスへと戻って行きました。
‥‥私は、今マキシム君が一体どんな顔をしているのか知りたくて、マキシム君の顔を覗きこみました。
「‥‥レミー‥どうした?」
「‥別に。」
「‥何か言いたい事があるなら言いなよ。」
「‥言いたい事なら山程ありますよ。でも何から話せば良いのか‥‥。それに、どうせマキシム君は、今日もずっとフジコさんと一緒にいるんでしょう?」
「レミー、ごめん。でも彼女の為に僕がやれる事があるのなら、やってあげなきゃいけないなって思うんだ。‥‥特にあんな話を聞いてしまうとね。」
「‥‥マキシム君が、困った人を放っておける人じゃないって事ぐらい分かってますよ。‥‥でもちょっと一緒にいる時間が多すぎではないですか?」
「‥‥レミー、君にはヒルトンさんやタケルがいるけど、‥でもフジコさんには、僕しか話を聞く人がいないみたいなんだ。」
「‥‥‥。」
‥‥そんな事はないと思いますよ、と言いかけた言葉を飲み込むと、私はマキシム君の顔を見るのをやめて正面に向き直りました。
『フジコさんがマキシム君以外の人と話さないのは、マキシム君以外の人をフジコさん自身が必要としていないからなんですよ!‥‥マキシム君は‥フジコさんだけのマキシム君じゃないのに!フジコさんは、マキシム君に甘えてばかりでずるいです!!』
‥‥なんて、いっそのことマキシム君に言ってしまえたら楽なのに。
始業のチャイムが鳴り、先生がクラスに入って来ました。
いつもと同じように授業は淡々と進んでいきます。
ですが今日に限っては、先生の話す言葉がちっとも頭に入って来ません。
それでも私は、涙で歪んできた視界の中で、先生が書く黒板の文字を必死でノートに書き写しました。
私は夢中でノートにペンを走らせながら‥
『もう‥マキシム君なんて、フジコさんに振り回されて困ってしまえば良いのよ!』
‥なんて、意地悪な事まで考えてしまいました。
手を伸ばせば、すぐに触れられるぐらいの距離にいるマキシム君が、今はとても遠くに感じられました。
こんなにもモヤモヤした気持ちをどうすれば良いのか‥私はその方法を知りませんでした。
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