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第5章 大和ノ国へ出発

第253話 大和ノ国の朝市!まさかあの鍋が食えるのか!?

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老永は、別館で温泉旅館も経営しているらしく、アレク達は懐石料理を楽しんだ後、泊まることにしたのだ。

「マンテ爺、もう寝ちゃったみたいだよ」

真ん丸の月を眺めていたマンテ爺は、いつもの間にかコテンと寝転がって寝てしまったのである。

「1日で色々あったから疲れちゃったのよ。ふわぁぁ...私も疲れたわ」

そう言うヘルミーナも、大きなあくびをしている。どうやら疲れたようだ。

「そろそろ寝ようか?明日は、朝からパスクと出かけてくるからゆっくり寝ててね」

「朝市に行くって言ってたわね。私が、マンテ爺を見ておくから楽しんできて」

「ありがとう。最終日は、ちゃんとヘルミーナの為に時間を空けているから安心して」

そう言うとヘルミーナは、抱きついてきてアレクにキスをしてきたのであった。

「あなた、大好き」

「俺も愛してるよ」

そう言って二人は仲良く寝るのであった。





あれから、5時間くらいが経ち、アレクはヘルミーナとマンテ爺を起こさないように旅館のロビーへと向かう。すると、ロビーではパスクがすでに待っていたのだ。

「おはようございます。アレク様」

「パスク、おはよう。早いね」

「楽しみにしていましたから。まだまだ未知の魚や貝に出会えると思うとワクワクして寝れませんでした」

寝ないで朝を迎えるくらい海鮮に魅了されてしまったのかと思うアレク。

「確かに、海の幸はおいしいからね。それに、王国では出回っていない物が多いもん」

そんな話をしながら、老永のロビーから外に出ると、まだ外は暗くひんやりした空気が流れていた。だが、そのなんとも言えないひんやりした空気が好きなアレク。

「朝はやはり冷え込みますね」

「そうだね。でもこの感じ嫌いではないんだ。普段あまり感じられない所為なのか分からないけど。あ!これを飲むと温かくなるよ」

アレクは、ポーションの瓶に入ったある物を取り出す。パスクは、いつも通りなんの躊躇もせず、ゴクゴクと飲むのであった。

「うわぁ!飲んだ瞬間からポカポカします。なんですか?これ」

「体ほっこりポカポカくんて名前の薬だって。副作用はないらしいよ」

またしても異界の人間が開発したネーミングセンスの欠片もない薬である。しかし、効果は絶大なのだ。

「副作用がないのはありがたいですね。アレク様が出される薬は効果は抜群ですが、副作用が怖いので...全身バキバキになったり...足が痒くなったり...と」

パスクは、あの時の苦しみを思い出して顔を青くするのであった。

「あはは...いやごめん...」

空笑いを浮かべながら申し訳無さそうにするアレク。

「出来れば、もう少しお優しい副作用にして頂けると嬉しいのですが...」

「副作用は、俺が決めているわけではないからね。まぁ、危機的状況以外は、なるべく副作用のない薬を作るようにするよ」

「何卒よろしくお願い致します」

そこまで言う程、嫌だったのかと改めてわかったアレクは、申し訳ないことをしたなと反省するのであった。

そんな話をしていると、朝市の広場に着いたようで、活気ある声が響いていた。魚介類だけではなく、新鮮な野菜なども売られているみたいだ。

「凄い活気だね」

「そうですね。こんなに人が集まっているとは思いませんでした」

外が少し明るくなって来たくらいの時間にも関わらず、朝市は大盛況なのである。

「あと国によって朝市がこんなに違うとは驚いたよ。まずは、パスクのお目当ての食材を買いに行こう」

「はい!」

それから、少し歩いていると魚介類を売っている場所があった。

「お兄さん達、新鮮な魚や貝はいかがかね?」

おじいさんと40歳くらいの女性がこちらに気づいて話しかけてきたのだ。

「見せてもらいますね。へぇ~アジや鯛やヒラメなんかもあるんですね」

そこに並んでいたのは、日本で見た魚ばかりであり、魚の目の色からして新鮮だろうと窺わせるものばかりであった。

「坊っちゃんは、詳しいねぇ~!カレイとサバなんてどうだい?滅多にない大きさだよ」

日本でも滅多に見ない大きさのカレイとサバであり、確かにおすすめしてくる理由がわかる程であった。

「パスク、カレイは煮付け、サバは塩焼きにしてもおいしいけど買ってみる?」

「はい!是非食べてみたいです」

「じゃあ、カレイとサバとアジを貰えますか?」

「あいよ!毎度あり。他にほしいものはあるかい?」

あっさり売れたことに上機嫌なおばちゃんである。

「これってフグですよね?捌くことができるんですか?」

日本では、免許が必須な魚であるフグが普通に売られていて思わず尋ねたのだ。

「うちの爺ちゃんが捌けるから安心しとくれ!よかったら買ってかい?」

まだ買うと言っていないにも関わらずおじいさんは、My包丁を手に取り重い腰を上げているのだ。

「じゃあ、お願いします」

「爺ちゃん、フグ頼んだよ」

「うむ。少し待っとくれ!すぐ捌いてやるからのぅ」

おじいさんは、待ってましたと言わんばかりに、先程とは打って変わりキビキビした動きで準備を始める。
そして、おじいさんがフグを捌き始めたのだが、魅入ってしまうほどに洗礼された動きかつ華麗な包丁捌きなのだ。

「これは...凄い...」

「本当ですね。素人目からしても、凄い技術ですよ」

二人が、魅入っているとあっという間にフグが捌き終わり、てっさとてっちりと白子に分けられていたのだ。

「白子は、タダでいいわい」

おじいさんは、ポツリと呟く。まさか、こんな大きな白子をサービスしてくれると思っていなかったアレクは驚く。

「流石に、この大きさの白子をタダとは...いや、ありがたく頂きます。その代わりに、貝や他の魚も買っていきます。おすすめがあったら教えて下さい」

そう言うとムスッとしていたおじいさんの口角が少し上がって、また椅子に座るのだった。

「毎度あり」

アレクは、おじいさんの優しさを断らなくて正解だったなと思うのと、ある程度の食材をここで買い揃えようと思うのだった。
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