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17 婚約破棄のお値段は
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「婚約解消かつ慰謝料と、長年の王子妃教育に対する慰労金。不貞行為による罰金、それと王と王妃からの感謝見舞金、口止め料。今後のアルカンジェルの活動費……まあ色々だ」
あまり遅い時間にならずに帰宅したお父様の執務室に呼ばれたわたくしは、読み上げられた金額に頭が痛くなりました。
「5歳でリース殿下と婚約をし、そこから10年以上に渡り王子妃となるべく勉学にマナーに子供としての楽しみ、少女として時を費やして来た。足りないくらいではないか」
「はあ……」
それが日常になっていましたので、わたくしには苦痛にはなりませんでしたが、確かに他の御令嬢より多く机に齧り付いていた気はします。家でのマナーレッスン、王城での歴史暗記などなど……。
「アルカンジェルが行っていた業務委託も全て済ませて来たから、今後一切王宮で仕事はしなくて良い」
「分かりました……」
でも、わたくし何か仕事をしていましたっけ……?わたくしが少し思い当たらないので首を傾げたからでしょうか、後ろに立っていたレラがそっとかがみこんで耳打ちをしてくれます。
「殿下の婚約者として隣国王族へのお礼状や、贈り物の手配、四季折々のご機嫌伺いなどもお仕事にあたりますよ」
「あら?そうでしたの」
いただき物をしたらお礼は当然でしょうに。わたくしは当然の事で、仕事だとは思っていませんでした。
「お嬢様は字が美しいですからね。飾り文字などレミも知りたがっていましたよ」
「まあ、嬉しいわ」
何でもできるレミとレラに褒められると嬉しいものです。
「旦那様も一度お嬢様にご依頼されてみては如何でしょう?印象が変わるお手紙が出来ると思いますよ!」
「あら、そうかしら?」
レラの語尾が荒いわ。良いのよ、お父様はお忙しいのだから、わたくしがどんな手紙を書くかご存知なくて当たり前なのです。
「あ、ああ……そうだな。ご婦人宛の手紙などはアルカンジェルに代筆を頼むとしよう」
「わ、わたくしがお父様のお仕事を手伝って宜しいのですか!嬉しいです!」
お父様の視線は一瞬後ろに立つレラの方を見ましたが、わたくしに視線を戻し、少し微笑まれました。こうしてお父様とお話が出来るようになるなんて、少し前のわたくしには想像もつかないことでした。
「今日は疲れただろう。早く休みなさい」
「ええ、失礼させていただきます」
スッと立ち上がりお父様の執務室を後にします。
「お疲れの旦那様には後で元気になるお茶でもお持ちしますねぇ?」
「必要な……う、頼む」
レラは本当に気がつくメイドだわ。あら?お父様のお顔色が少し良くありませんね。働き過ぎなのでしょう。
レラに元気になるお茶をたっぷり淹れて貰ってくださいね。
「大体こちらの希望通りの書類が通ったようですね」
「でもあんなにお金を頂いてしまって、リース様は大丈夫なのでしょうか?」
「嫌だわ、お嬢様ー。王様なんですよ、大丈夫に決まってるじゃないですか!」
「そうね!」
「ヴェルデがくしゃみをすれば王家が風邪をひく」と言われるくらい、我が家の発言権が今後強大になる事をその時のわたくしは知らなかったのです。
しかも元々我が家から借りていた借金が積み重なり、どうしようも無くなっているとは……。
「さあ、早く寝ましょう。お嬢様も明日から忙しいですわよ」
「でもレラ。明日から学園はお休みのサマーホリデーよ?しかもお城での勉強も無くなったのよ。時間はたっぷあるわ」
今年は他の御令嬢の様に避暑に出かけたりしてみたいですわね。
「いえ、明日からはお手紙の山ですわ」
「あら、山に出かけるの?素敵ね」
「ふふ、それも良いかもしれません。山間の別荘へデートなんかも素敵です」
「?」
何かレラと話が噛み合っていない気がしますが、レラも楽しそうにニコニコと笑っているので良しとしましょう。
「お嬢様は山でのんびり、ノルド様とその他衛兵達は特訓なんて素敵ですよね」
あまり遅い時間にならずに帰宅したお父様の執務室に呼ばれたわたくしは、読み上げられた金額に頭が痛くなりました。
「5歳でリース殿下と婚約をし、そこから10年以上に渡り王子妃となるべく勉学にマナーに子供としての楽しみ、少女として時を費やして来た。足りないくらいではないか」
「はあ……」
それが日常になっていましたので、わたくしには苦痛にはなりませんでしたが、確かに他の御令嬢より多く机に齧り付いていた気はします。家でのマナーレッスン、王城での歴史暗記などなど……。
「アルカンジェルが行っていた業務委託も全て済ませて来たから、今後一切王宮で仕事はしなくて良い」
「分かりました……」
でも、わたくし何か仕事をしていましたっけ……?わたくしが少し思い当たらないので首を傾げたからでしょうか、後ろに立っていたレラがそっとかがみこんで耳打ちをしてくれます。
「殿下の婚約者として隣国王族へのお礼状や、贈り物の手配、四季折々のご機嫌伺いなどもお仕事にあたりますよ」
「あら?そうでしたの」
いただき物をしたらお礼は当然でしょうに。わたくしは当然の事で、仕事だとは思っていませんでした。
「お嬢様は字が美しいですからね。飾り文字などレミも知りたがっていましたよ」
「まあ、嬉しいわ」
何でもできるレミとレラに褒められると嬉しいものです。
「旦那様も一度お嬢様にご依頼されてみては如何でしょう?印象が変わるお手紙が出来ると思いますよ!」
「あら、そうかしら?」
レラの語尾が荒いわ。良いのよ、お父様はお忙しいのだから、わたくしがどんな手紙を書くかご存知なくて当たり前なのです。
「あ、ああ……そうだな。ご婦人宛の手紙などはアルカンジェルに代筆を頼むとしよう」
「わ、わたくしがお父様のお仕事を手伝って宜しいのですか!嬉しいです!」
お父様の視線は一瞬後ろに立つレラの方を見ましたが、わたくしに視線を戻し、少し微笑まれました。こうしてお父様とお話が出来るようになるなんて、少し前のわたくしには想像もつかないことでした。
「今日は疲れただろう。早く休みなさい」
「ええ、失礼させていただきます」
スッと立ち上がりお父様の執務室を後にします。
「お疲れの旦那様には後で元気になるお茶でもお持ちしますねぇ?」
「必要な……う、頼む」
レラは本当に気がつくメイドだわ。あら?お父様のお顔色が少し良くありませんね。働き過ぎなのでしょう。
レラに元気になるお茶をたっぷり淹れて貰ってくださいね。
「大体こちらの希望通りの書類が通ったようですね」
「でもあんなにお金を頂いてしまって、リース様は大丈夫なのでしょうか?」
「嫌だわ、お嬢様ー。王様なんですよ、大丈夫に決まってるじゃないですか!」
「そうね!」
「ヴェルデがくしゃみをすれば王家が風邪をひく」と言われるくらい、我が家の発言権が今後強大になる事をその時のわたくしは知らなかったのです。
しかも元々我が家から借りていた借金が積み重なり、どうしようも無くなっているとは……。
「さあ、早く寝ましょう。お嬢様も明日から忙しいですわよ」
「でもレラ。明日から学園はお休みのサマーホリデーよ?しかもお城での勉強も無くなったのよ。時間はたっぷあるわ」
今年は他の御令嬢の様に避暑に出かけたりしてみたいですわね。
「いえ、明日からはお手紙の山ですわ」
「あら、山に出かけるの?素敵ね」
「ふふ、それも良いかもしれません。山間の別荘へデートなんかも素敵です」
「?」
何かレラと話が噛み合っていない気がしますが、レラも楽しそうにニコニコと笑っているので良しとしましょう。
「お嬢様は山でのんびり、ノルド様とその他衛兵達は特訓なんて素敵ですよね」
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