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ことの始まり(ミランダ視点)
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卒業式の後の夜会でお花を摘みに行ったきり、シンシアの姿が見えなくなった。
「シンシアが戻ってこないの。1人で行かせるんじゃなかったわ」
私は恋人のレオンハルトに小声で話す。
「探そう。兄上の手の者に捕まっているかもしれない」
「私達も探すわ。見つかった伝書バードを飛ばしましょう」
「そうね。ソフィア、ライザお願い」
「私達も一緒に探そう。女子だけだと危ないからな」
ジェフリーの言葉にアーサーも頷く。
私達は手分けをしてシンシアを探すことにした。
「きゃー、嫌ぁー」
私達の耳に悲鳴が聞こえてきた。
悲鳴が聞こえた方に駆け寄ると、部屋の扉が開き、無惨にドレスを引き裂かれ、血だらけになっているシンシアが飛び出してきた。部屋の中に目をやると、頭から血を流して倒れている王太子の姿が見えた。
どうやらお花を摘みに行った帰り廊下にいるシンシアをみつけた王太子が手籠にしようと空いていた部屋に引っ張り込んだようだ。
王太子は前々からシンシアに懸想していた。抵抗したシンシアは王太子にドレスを引き裂かれ、そして殴られたのだろう、顔は腫れ上がり、傷だらけだった。
王太子はトラウザーズを膝の辺りまで下ろしうつ伏せに倒れている。シンシアの純血を奪う寸前で意識を失ったようだ。
「私、王太子殿下から逃げようと無我夢中で部屋にあった花瓶で……」
シンシアは青ざめ震えている。どうやら王太子殿下を殴ってしまったようだった。
私達以外にも王太子殿下の側近も駆けつけてきた。
「助けて……」
シンシアは立っていられず、その場にうずくまった。
レオンハルトは自分の着ていた上着をシンシアに着せ抱き上げ、王太子の側近達を睨みつける。
「この場のことは他言無用。漏れることがあれば命は無いと思え」
そして、私に眼で合図した。
私とレオンハルトは、仲間達に伝書バードを飛ばし、医務室に向かった。レオンハルトが王子でよかったと、この時は本当に思った。
「ミランダ! 着替えを持ってきたわ」
伝書バードから伝言を受け取ったソフィアが伯爵令嬢らしからぬスピードで医務室に走りこんできた。
「私のだから少し大きいけど我慢してね。誰かと被ったら着替えようと替えを持ってきていて良かったわ」
ソフィアはふくよかでおっとりして見えるが、いつも用意周到だ。備えあれば憂いなしと言っていて抜かりがない。
私達は治療が済んだシンシアを着替えさせた。
シンシアの怪我は殴られたせいでできた打撲とあとは擦り傷、切傷、そして捻挫だった。
「王太子はどうなったんだ?」
「しるか! あんな奴死ねばいいんだ」
「そんなことになったらシンシアはどうなるの」
伝書バードの伝書で医務室にあつまった仲間のジェフリーとアーサー、ライザが話している。
「今はとりあえず影達に足止めさせている。あいつにとっては醜聞だ。表には出せないだろう」
さすが我が恋人、頼りになる。今はとにかくシンシアを保護しなければ。
王太子と側近達をレオンハルトの影達が足止めしているうちに、私達はシンシアを私の屋敷に運んだ。
私は筆頭公爵の令嬢だ。シンシアを守れるはず。
レオンハルトは王太子殿下と王家の様子を探りに王宮に戻った。
王太子殿下は前々から美しいシンシアにちょっかいをかけていたが、まさかこんなことになるとは思ってもいなかった。
しばらくして王宮からレオンハルトがもどって来た。
王太子殿下の傷は大した事はなかったらしい。脳震盪を起こして意識を無くしていただけだったらしい。ただあの時の記憶が曖昧で自分はシンシアと結ばれたと思い込んでいるらしい。そして、責任をとり、シンシアと結婚すると言っているそうだ。
「あいつは馬鹿だが、国王はあいつには甘い」
異母弟のレオンハルトは苦虫を噛み潰しているような顔をしている。
「とにかくフレデリック様が戻るまでは我が家で守るわ」
シンシアの母は私の乳母でシンシアとは生まれた時から双子のように一緒にいる。
私にとってシンシアはとても大事な存在だった。
「シンシアが戻ってこないの。1人で行かせるんじゃなかったわ」
私は恋人のレオンハルトに小声で話す。
「探そう。兄上の手の者に捕まっているかもしれない」
「私達も探すわ。見つかった伝書バードを飛ばしましょう」
「そうね。ソフィア、ライザお願い」
「私達も一緒に探そう。女子だけだと危ないからな」
ジェフリーの言葉にアーサーも頷く。
私達は手分けをしてシンシアを探すことにした。
「きゃー、嫌ぁー」
私達の耳に悲鳴が聞こえてきた。
悲鳴が聞こえた方に駆け寄ると、部屋の扉が開き、無惨にドレスを引き裂かれ、血だらけになっているシンシアが飛び出してきた。部屋の中に目をやると、頭から血を流して倒れている王太子の姿が見えた。
どうやらお花を摘みに行った帰り廊下にいるシンシアをみつけた王太子が手籠にしようと空いていた部屋に引っ張り込んだようだ。
王太子は前々からシンシアに懸想していた。抵抗したシンシアは王太子にドレスを引き裂かれ、そして殴られたのだろう、顔は腫れ上がり、傷だらけだった。
王太子はトラウザーズを膝の辺りまで下ろしうつ伏せに倒れている。シンシアの純血を奪う寸前で意識を失ったようだ。
「私、王太子殿下から逃げようと無我夢中で部屋にあった花瓶で……」
シンシアは青ざめ震えている。どうやら王太子殿下を殴ってしまったようだった。
私達以外にも王太子殿下の側近も駆けつけてきた。
「助けて……」
シンシアは立っていられず、その場にうずくまった。
レオンハルトは自分の着ていた上着をシンシアに着せ抱き上げ、王太子の側近達を睨みつける。
「この場のことは他言無用。漏れることがあれば命は無いと思え」
そして、私に眼で合図した。
私とレオンハルトは、仲間達に伝書バードを飛ばし、医務室に向かった。レオンハルトが王子でよかったと、この時は本当に思った。
「ミランダ! 着替えを持ってきたわ」
伝書バードから伝言を受け取ったソフィアが伯爵令嬢らしからぬスピードで医務室に走りこんできた。
「私のだから少し大きいけど我慢してね。誰かと被ったら着替えようと替えを持ってきていて良かったわ」
ソフィアはふくよかでおっとりして見えるが、いつも用意周到だ。備えあれば憂いなしと言っていて抜かりがない。
私達は治療が済んだシンシアを着替えさせた。
シンシアの怪我は殴られたせいでできた打撲とあとは擦り傷、切傷、そして捻挫だった。
「王太子はどうなったんだ?」
「しるか! あんな奴死ねばいいんだ」
「そんなことになったらシンシアはどうなるの」
伝書バードの伝書で医務室にあつまった仲間のジェフリーとアーサー、ライザが話している。
「今はとりあえず影達に足止めさせている。あいつにとっては醜聞だ。表には出せないだろう」
さすが我が恋人、頼りになる。今はとにかくシンシアを保護しなければ。
王太子と側近達をレオンハルトの影達が足止めしているうちに、私達はシンシアを私の屋敷に運んだ。
私は筆頭公爵の令嬢だ。シンシアを守れるはず。
レオンハルトは王太子殿下と王家の様子を探りに王宮に戻った。
王太子殿下は前々から美しいシンシアにちょっかいをかけていたが、まさかこんなことになるとは思ってもいなかった。
しばらくして王宮からレオンハルトがもどって来た。
王太子殿下の傷は大した事はなかったらしい。脳震盪を起こして意識を無くしていただけだったらしい。ただあの時の記憶が曖昧で自分はシンシアと結ばれたと思い込んでいるらしい。そして、責任をとり、シンシアと結婚すると言っているそうだ。
「あいつは馬鹿だが、国王はあいつには甘い」
異母弟のレオンハルトは苦虫を噛み潰しているような顔をしている。
「とにかくフレデリック様が戻るまでは我が家で守るわ」
シンシアの母は私の乳母でシンシアとは生まれた時から双子のように一緒にいる。
私にとってシンシアはとても大事な存在だった。
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