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番外・シャルロットの休暇 (短編)
桜と歓迎会(4)
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シンさん達が村に移り住んで一週間。彼らの作るお米、料理はみんなに受け入れられていった。
しかしお米にしても野菜にしても、普通なら育つまでに何週間と時間が掛かる。
そこはわたしの出番になるだろうとアル様は言った。
『急いでいませんから、無理せずに行きましょう』
とも言っていた。
今日は青桜の見回りの日。
国中の桜の見回りだからと一人、食卓で急いで朝食のホットサンドを食べながらアイテムボックスを操作していた。
「おはよう。アイテムボックス?」
「おはよう、シーラン様。そうなの忘れ物がないかチェックしてるの」
「アイテムボックスの中に、シャルロットは何を入れたの?」
シンさん達の歓迎会の次の日。
わたし達はアル様とシンさんに習って、アイテムボックスを覚えた。
役三十個のアイテムを中に仕舞えるのだ。
入れ方は簡単、入れたい物を画面にかざせば自然とボックスの中に入る仕組み。
『シャルちゃんとチビ竜達が本気を出せば、かなりの数が入るボックスになるよ』
と、アル様に言われたけど、みんなとで話し合って決めたのが、この三十個という数字だ。
まあ、この三十個という数字に深い意味はないけど、それくらいでいいよねっと決めた数だ。
「入れた物? 私は今日のお昼ご飯と図鑑、ノートと着替えかな? 後ソーイングセットとか収穫用のハサミと種の入った巾着袋かな? シーラン様は?」
そう聞き返すと隣の食卓に座り、アイテムボックスの画面を出した。
「俺はノートとペン。着替えとタオル、後は飲み物くらいかな? 手作りのポプリは身に付けていたいし、シャルロットの所に駆け付けるブレスレットもだな」
「ふわぁ、二人は何してるの? ん? アイテムボックス? 二人とも揚げひよこ豆は入れないの?」
自室からリビングに出て来たリズ様は、後ろから私たちのアイテムボックスを覗いた。
リズ様の言う揚げひよこ豆とは蒸したひよこ豆を、水分を取り油でかりかりに揚げた私たちのおやつ。
香ばしくって、かりかりでいくらでも食べれちゃう。
「揚げひよこ豆を入れたいのは山々だけど、昨日の夜に部屋で全部食べてしまったの」
「シャルロットもかぁ? 俺も昨日の夜に読書しながら部屋で食べちゃったよ」
「シーラン様もなの! だったら今日、ひよこ豆をたくさん収穫して揚げひよこ豆を作ろ。あ、ごめん出る時間だ。青桜の見回りに行ってくるね、お昼過ぎに森で待ってるから」
「わかった、気を付けてな!」
「気を付けてね」
食べ終わったお皿を持って、キッチンで調理中の二人にも声をかける。
「リオさん、マリーご馳走様。見回りに行ってくるね!」
「行ってらっしゃいませ、シャルロット様」
「お嬢様お気をつけて」
みんなに見送られて私は国中に咲く、青桜の見回りにほうきに乗って出かけた。
♢
アル様とラーロさんが『青桜の咲く場所を調べた』地図を広げて、ほうきで国中を飛んで青桜と精霊に会う。
チェックシートに書かれている「元気」とか「食事はできている」とか、トラブルはない? とか色々聞いて回る。
「元気そうで何より!」
『またね、おねぇーちゃんもね』
「またね!」
精霊に手を振りエルフ国の南の端。
近くにエメラルド色の海が眺めれる青桜の所をほうきで飛び立つ。
どの精霊もいい子で、青桜と共に元気だったわ。
「これで、全ての見回りは終わったかな?」
と、乗るのにも慣れたほうきを飛ばす。
竜人の森が見てきて、徐々に魔力を弱めて森の前でほうきを降りた。
「ふうっ、終わった」
どの青桜の子も元気で良かった。
チェックシートは、ほうきに乗りながら書いて魔法協会のアル様の所に送ったし。
後は森の中でみんなが来るのを待とうと、門に手をかざして鍵を開けた。
一瞬だけピキッと、いつもでは感じない違和感を感じた。
「なんだか、いつもと違う?」
しかし、何が違うかと聞かれてもわからない。
わたしの目の前には、いつもとなんら変わりもない森を守る門があるからだ。
その門の鍵を開けて通り抜けて、森の木々の様子を眺めながら畑のある奥に進んだ。
見てもやはり何も変わらない森の中。
(思い過ごしね。いつもとなんら変わりないわ)
奥にシンさんとミリさんの手によって、野菜と果物が種類別に整えられた畑が見えてくる。
着いてすぐにその畑全部、水魔法で水を撒いた。
水を浴びて生き生きとする野菜と果物たち。
「みんな美味しく育て、育って!」
と、果物から育て始めた。
さてと、今日収穫するものはひよこ豆と、そうだマリーがかぼちゃが欲しいと言われていたわ。
ほかに、きゅうりとレタス、トマトかな? オクラ、ブロッコリーもいいな、それも実らせて、と……野菜畑の方に進んだ。
その野菜畑の真ん中にぷるぷる動く、緑色の液状の物体を発見した。
その物体は畑の中で伸びたり縮んだり、そしてぷるぷるしている。
まさか、こんな所に⁉︎
「「スライム⁉︎」」
物体はわたしの声に反応したらしく、ぷるぷる、びしゃーっと動き、野菜の葉の後ろへと隠れていく。
それに近づくと他の場所から一体、二体とわたしから隠れるように、離れていく姿が見えた。
(このスライム、わたしの声に反応したの⁉︎)
これは面白いわ!
「スライム待てぇ!」
でも、このスライムはどこから入って来たのかな?
しかしお米にしても野菜にしても、普通なら育つまでに何週間と時間が掛かる。
そこはわたしの出番になるだろうとアル様は言った。
『急いでいませんから、無理せずに行きましょう』
とも言っていた。
今日は青桜の見回りの日。
国中の桜の見回りだからと一人、食卓で急いで朝食のホットサンドを食べながらアイテムボックスを操作していた。
「おはよう。アイテムボックス?」
「おはよう、シーラン様。そうなの忘れ物がないかチェックしてるの」
「アイテムボックスの中に、シャルロットは何を入れたの?」
シンさん達の歓迎会の次の日。
わたし達はアル様とシンさんに習って、アイテムボックスを覚えた。
役三十個のアイテムを中に仕舞えるのだ。
入れ方は簡単、入れたい物を画面にかざせば自然とボックスの中に入る仕組み。
『シャルちゃんとチビ竜達が本気を出せば、かなりの数が入るボックスになるよ』
と、アル様に言われたけど、みんなとで話し合って決めたのが、この三十個という数字だ。
まあ、この三十個という数字に深い意味はないけど、それくらいでいいよねっと決めた数だ。
「入れた物? 私は今日のお昼ご飯と図鑑、ノートと着替えかな? 後ソーイングセットとか収穫用のハサミと種の入った巾着袋かな? シーラン様は?」
そう聞き返すと隣の食卓に座り、アイテムボックスの画面を出した。
「俺はノートとペン。着替えとタオル、後は飲み物くらいかな? 手作りのポプリは身に付けていたいし、シャルロットの所に駆け付けるブレスレットもだな」
「ふわぁ、二人は何してるの? ん? アイテムボックス? 二人とも揚げひよこ豆は入れないの?」
自室からリビングに出て来たリズ様は、後ろから私たちのアイテムボックスを覗いた。
リズ様の言う揚げひよこ豆とは蒸したひよこ豆を、水分を取り油でかりかりに揚げた私たちのおやつ。
香ばしくって、かりかりでいくらでも食べれちゃう。
「揚げひよこ豆を入れたいのは山々だけど、昨日の夜に部屋で全部食べてしまったの」
「シャルロットもかぁ? 俺も昨日の夜に読書しながら部屋で食べちゃったよ」
「シーラン様もなの! だったら今日、ひよこ豆をたくさん収穫して揚げひよこ豆を作ろ。あ、ごめん出る時間だ。青桜の見回りに行ってくるね、お昼過ぎに森で待ってるから」
「わかった、気を付けてな!」
「気を付けてね」
食べ終わったお皿を持って、キッチンで調理中の二人にも声をかける。
「リオさん、マリーご馳走様。見回りに行ってくるね!」
「行ってらっしゃいませ、シャルロット様」
「お嬢様お気をつけて」
みんなに見送られて私は国中に咲く、青桜の見回りにほうきに乗って出かけた。
♢
アル様とラーロさんが『青桜の咲く場所を調べた』地図を広げて、ほうきで国中を飛んで青桜と精霊に会う。
チェックシートに書かれている「元気」とか「食事はできている」とか、トラブルはない? とか色々聞いて回る。
「元気そうで何より!」
『またね、おねぇーちゃんもね』
「またね!」
精霊に手を振りエルフ国の南の端。
近くにエメラルド色の海が眺めれる青桜の所をほうきで飛び立つ。
どの精霊もいい子で、青桜と共に元気だったわ。
「これで、全ての見回りは終わったかな?」
と、乗るのにも慣れたほうきを飛ばす。
竜人の森が見てきて、徐々に魔力を弱めて森の前でほうきを降りた。
「ふうっ、終わった」
どの青桜の子も元気で良かった。
チェックシートは、ほうきに乗りながら書いて魔法協会のアル様の所に送ったし。
後は森の中でみんなが来るのを待とうと、門に手をかざして鍵を開けた。
一瞬だけピキッと、いつもでは感じない違和感を感じた。
「なんだか、いつもと違う?」
しかし、何が違うかと聞かれてもわからない。
わたしの目の前には、いつもとなんら変わりもない森を守る門があるからだ。
その門の鍵を開けて通り抜けて、森の木々の様子を眺めながら畑のある奥に進んだ。
見てもやはり何も変わらない森の中。
(思い過ごしね。いつもとなんら変わりないわ)
奥にシンさんとミリさんの手によって、野菜と果物が種類別に整えられた畑が見えてくる。
着いてすぐにその畑全部、水魔法で水を撒いた。
水を浴びて生き生きとする野菜と果物たち。
「みんな美味しく育て、育って!」
と、果物から育て始めた。
さてと、今日収穫するものはひよこ豆と、そうだマリーがかぼちゃが欲しいと言われていたわ。
ほかに、きゅうりとレタス、トマトかな? オクラ、ブロッコリーもいいな、それも実らせて、と……野菜畑の方に進んだ。
その野菜畑の真ん中にぷるぷる動く、緑色の液状の物体を発見した。
その物体は畑の中で伸びたり縮んだり、そしてぷるぷるしている。
まさか、こんな所に⁉︎
「「スライム⁉︎」」
物体はわたしの声に反応したらしく、ぷるぷる、びしゃーっと動き、野菜の葉の後ろへと隠れていく。
それに近づくと他の場所から一体、二体とわたしから隠れるように、離れていく姿が見えた。
(このスライム、わたしの声に反応したの⁉︎)
これは面白いわ!
「スライム待てぇ!」
でも、このスライムはどこから入って来たのかな?
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