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3 優しいメイスフィールド伯爵
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「ふたり姉妹と一人っ子のフィリスよ! 3人とも私より年上で、エグバート卿は時間がないと言って自分の婚約者はほったらかし! その上、『僕と同じように妹たちを愛してほしい』とか言うのよ!?」
「クズめ」
「そうよ! もっと言って!!」
話のわかる紳士は、もっと言う事はできなかった。
私が捲くし立てたから。
「ドナはお爺ちゃん伯爵との婚約に駄々を捏ねて揉めて、レイラは婚約者の顔が気持ち悪いと言って拗ねて、それでしばらくゴタゴタしてふたりとも婚約を破棄されて振り出しに戻って、その愚痴を長い手紙にして私に送ってきたのよ!? 信じられる!?」
「信じられないが、君に同じように妹たちを愛してほしいエグバート卿ならそうするだろうな」
「ええ、そうかもね。で、なんとか上のふたりを伯爵夫人と男爵夫人にして、今は末っ子のフィリス! 前の末っ子も今の末っ子も私より年上なのよ? だから結婚を急ぎたいっていう理屈はわかるけれど、それは自分の婚約者を蔑ろにする理由にはならないでしょう?」
「ならない」
「でもエグバート卿は『君が若くて時間があるから求婚した』とか『妹たちを優先できない君は私の妻には相応しくない』とか言って、私との婚約を破棄したの!! わああぁぁぁぁんッ!!」
泣ける。
永遠に泣ける。
「可哀相に。君は、いくら若いと言っても14から18という貴重な年月を縛られ、その上でさも君に非があるような理由をつけて婚約を破棄だなんて、傷をつけられた」
「そうよ!!」
「こんなに可愛らしいお嬢さんに、酷い事を……」
「そうよね……!?」
なんて優しいの!
「父は『エグバート卿が10人の妹を結婚させて、10人の貴族と縁戚という強味を持っているから、もう太刀打ちできない』と言って、すんなり婚約破棄を受け入れてしまったの。慰謝料さえもらわずに……!」
「それが狙いだったか」
「酷いでしょう!?」
「あざといな」
「ええ、あざといわ! それが私の元婚約者クライトン伯爵エグバート・トーマス卿という男よッ!!」
と、叫んで。
「……聞いてくれてありがとう。……ところで、私はアデル・メリンダ・レイン。オリファント伯爵令嬢です……。あ、あなたは……?」
涙を拭きつつ、嗚咽を堪えて尋ねる。
「失礼。私はロイ・ウィリアム・オダフィ、メイスフィールド伯爵だ」
「……どうして、ここに……?」
涙が引いていく。
だって、失礼を働いたのは、他でもない私だから。
「オリファントは亡き妻クィンシーの故郷なんだよ。義両親に挨拶してきた」
「!!」
私は、反射的に自分の口を両手で押さえた。
「クズめ」
「そうよ! もっと言って!!」
話のわかる紳士は、もっと言う事はできなかった。
私が捲くし立てたから。
「ドナはお爺ちゃん伯爵との婚約に駄々を捏ねて揉めて、レイラは婚約者の顔が気持ち悪いと言って拗ねて、それでしばらくゴタゴタしてふたりとも婚約を破棄されて振り出しに戻って、その愚痴を長い手紙にして私に送ってきたのよ!? 信じられる!?」
「信じられないが、君に同じように妹たちを愛してほしいエグバート卿ならそうするだろうな」
「ええ、そうかもね。で、なんとか上のふたりを伯爵夫人と男爵夫人にして、今は末っ子のフィリス! 前の末っ子も今の末っ子も私より年上なのよ? だから結婚を急ぎたいっていう理屈はわかるけれど、それは自分の婚約者を蔑ろにする理由にはならないでしょう?」
「ならない」
「でもエグバート卿は『君が若くて時間があるから求婚した』とか『妹たちを優先できない君は私の妻には相応しくない』とか言って、私との婚約を破棄したの!! わああぁぁぁぁんッ!!」
泣ける。
永遠に泣ける。
「可哀相に。君は、いくら若いと言っても14から18という貴重な年月を縛られ、その上でさも君に非があるような理由をつけて婚約を破棄だなんて、傷をつけられた」
「そうよ!!」
「こんなに可愛らしいお嬢さんに、酷い事を……」
「そうよね……!?」
なんて優しいの!
「父は『エグバート卿が10人の妹を結婚させて、10人の貴族と縁戚という強味を持っているから、もう太刀打ちできない』と言って、すんなり婚約破棄を受け入れてしまったの。慰謝料さえもらわずに……!」
「それが狙いだったか」
「酷いでしょう!?」
「あざといな」
「ええ、あざといわ! それが私の元婚約者クライトン伯爵エグバート・トーマス卿という男よッ!!」
と、叫んで。
「……聞いてくれてありがとう。……ところで、私はアデル・メリンダ・レイン。オリファント伯爵令嬢です……。あ、あなたは……?」
涙を拭きつつ、嗚咽を堪えて尋ねる。
「失礼。私はロイ・ウィリアム・オダフィ、メイスフィールド伯爵だ」
「……どうして、ここに……?」
涙が引いていく。
だって、失礼を働いたのは、他でもない私だから。
「オリファントは亡き妻クィンシーの故郷なんだよ。義両親に挨拶してきた」
「!!」
私は、反射的に自分の口を両手で押さえた。
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