鍵のない秘密
『鍵のない密室』
古い洋館で、奇妙な事件が起きた。
資産家・黒川宗一は、書斎で死んでいるのを発見された。
死因は後頭部を殴られたことによる即死。
問題は――
書斎が完全な密室だったことだ。
扉は内側から鍵がかかり、
窓はすべて内側から釘で打ち付けられていた。
館にいたのは三人。
・家政婦の松井
・秘書の早川
・甥の隆志
探偵の南条は、部屋を一通り見回して言った。
「争った形跡はありませんね」
机の上には、割れたガラスの文鎮。
凶器はそれだろう。
甥の隆志が叫んだ。
「家政婦が怪しい! いつも金のことで揉めてた!」
松井は青ざめながら首を振る。
「私は夕食を運んだだけです…」
秘書の早川は静かに言った。
「私は電話中でした」
南条は黙って、床を見つめた。
そして、ふと笑った。
「……なるほど。これは密室じゃない」
全員が息をのむ。
「犯人は――
被害者自身です」
「は!?」と隆志。
南条は文鎮を持ち上げた。
「黒川氏はこの文鎮を、自分で後頭部に落とした。
そのあと倒れ、机の角で致命傷を負った」
「自殺じゃないか!」と秘書。
南条は首を振る。
「いいえ。
これは“事故に見せかけた他殺”です」
南条は窓を指さした。
「窓に打たれた釘。
あれは外から打たれています」
家政婦の松井が震え出した。
「……私、ですか?」
南条は頷いた。
「夕食を運ぶ前、あなたは外から釘を打ちました。
その後、文鎮を棚の上に不安定に置いた」
「被害者が席を立った瞬間、
文鎮が落ち、事故のように見せかけた」
松井は崩れ落ちた。
「……給料も払われず、
逃げるお金が欲しかったんです」
密室は、最初から“作られた舞台”だった。
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仕組まれた状況に騙されるのだ。
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