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十一話

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「しまった……あの女狐、シャイナ=ノービスめ。そういうことであったか。このガリウス、一生の不覚……おのれ、おのれっ!!」

 ガリウスは地団駄を踏み悔しがりました。
 頭が良いため、なにか敵の策略を察知したのかもしれません。
 私は皆に理解できるよう説明をお願いします。

「お嬢様。お許しを……っ。簡単に街を脱出できたのは、策略です! 辺境の街ザールのアンデッド騒動。これらを解決したことにより、シャイナ=ノービスは聖女としてスティーヴに取り立てられました。ですが、それはおかしなことです。辺境の街ザールは、先代の聖女様の聖遺物が安置されている神聖な土地。アンデッドなど湧くはずのない場所なのです」

「ええ。存じていますよガリウス」

「申し訳ございませぬ。王家の者か、儂のような偏屈な学者くずれしか知り得ぬことではありました。じゃが、気づくべきだった。シャイナはアンデッドを駆逐したのではない……ザールの街にわざと化け物どもを、おびき寄せ、民草を犠牲にし、そして恩着せがましく王子にすり寄ったのです」

「そうだったのですね……犠牲になった民を思うと悔しいですが、その可能性は高そうですね」

 私の言葉に、皆は押し黙ります。
 悲しんでいるのです。
 悔しいのです。
 シャイナは国民を裏切り、アンデッドを使い街を襲わせていたのです。
 どうして、自分の国民をそんな目に合わせてまで聖女の名が欲しいのでしょうか?
 欲しいならばスティーヴも、聖女も差し上げます。
 どうかこれ以上は誰も苦しめないで欲しいのです。
 両親はあまりの衝撃にその場に崩れ落ち。
 アーサーは握る弓にギチギチと力を込めます。
 ガリウスは声を張り上げ、家臣の皆に伝えました。

「皆も聞いてくれ。おそらくこの先街道を封鎖されておる。一直線にヴァンハイアーの領土に帰るならば、ザールの街を突っ切るほかない。だが、きっとノービス公爵の手のものが街やその周囲に兵を構えておる。背後からは王子の近衛兵の軍団……我々は、完全に袋の鼠。計略にまんまとしてやられたわけだ。王子とシャイナの手のひらで転がされたわけだ」

 神妙な面持ちで、家臣の皆はガリウスの声に耳を傾けます。
 研ぎ澄まされていく刃のような、不思議な連帯感がありました。

「じゃが、それがどうした!!」

 ガリウスは目を見開き、拳を振り上げます。

「ワシらにはカテリーナ様がいる。それがなによりの正義であり、勝利の方程式じゃ。このままカテリーナお嬢様を守護し堂々とザールの街を突っ切る。異論があるものは前に出よ」

「一人としておりません」

「アーサー。お前には1000人分働いてもらう。お嬢様をお守りして死ぬ覚悟は?」

「馬鹿にしているのか御老人? 言葉は要らず」

「というわけですじゃお嬢様。突っ切りますぞ?」

 いやいや、どういうわけなんでしょうか。
 ガリウスもアーサーも、家臣の皆さんもギラギラした目で私を守る覚悟を決めたそうです。
 何が待ち受けるかわからない、敵の手に落ちたザールの街。

 ですが……。

 皆を守りたいという気持ちは、私も負けないほど強く祈っています。
 さあ、進軍しましょう。
 あなたたちは、私が必ず守ります。

 
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