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王妃の茶会
しおりを挟む「リアンさんどう?」
グリーンのドレスを着込み胸元には俺がプレゼントしたスズランのネックレス……似合っている。
「王宮に行くのにそのネックレスじゃ地味すぎやしないか?」
「このネックレスに合わせて、コーディネートしたからコレをやめちゃうとまた一からやり直しになるもん」
たしかに……地味と言うかちゃんと華やかに出来上がっているから不思議なものである。
「ねぇねぇ、可愛い?」
「あぁ、可愛いよ。とても似合っている」
するとエヘヘ……と言って顔をピンクに染めた。
「それでは行こうか?」
すっと手を差し出すと
「いいの!」
と言ってきた。エスコートもなしで王宮に行くとかあり得ないだろう? そんなに喜ぶ事なのだろうか。
「あぁ、エスコートさせてくれ」
「はいっ。喜んで!」
笑顔のマリアと馬車に乗り王宮へと向かった。王妃の茶会が行われると言うプライベート庭園に着いた。
「いらっしゃい。あら……マリアベル嬢とても嬉しそうね」
「本日はお招きいただきありがとうございます」
マリアがカーテシーする。俺も挨拶をして礼を伝えた。
まずは王妃が俺の国の出身で知り合いだと言う事を話していた。同郷だから王妃はとても懐かしく感じこの間もお茶をしたと伝えていた。
マリアはご機嫌で話を聞いていた。そして先日の失礼な令嬢達の話になり謝罪された。
「我が国の令嬢達が失礼な態度をとって申し訳ございませんわ。マリアベル嬢も噂の張本人として辛い思いをしていたでしょう?」
マリアと目があった。するとマリアが王妃に答えた。
「お言葉ありがとうございます。噂のことは全く気にしていません。両親にも兄にも言わせたい者には言わせておくと良い、と言われていました。事実は私達が知っていますもの。それに私は保護されていた時オットー卿の身分は一切知りませんでした。それでも毎日楽しく暮らしていたのは卿がいてこそでした」
堂々と王妃に返答するマリア。ちゃんと貴族として生活出来ているんだなぁ……
「変な噂をする者は許さないと言ってあったのに……本当にオットー卿のおっしゃる通り教育をしっかりさせなくては社会に出せませんわね。わたくしからもしっかり注意をしてあります。これでまた繰り返すようなら……ね!」
……これはマリアに聞かせられない内容なんだろう。あの令嬢達を庇おうとするくらい心優しい。しかし野放しにすると国全体に迷惑をかける事になる。この事はキッカケに過ぎないのだから。
「先日王妃様とお話をさせていただいた際にマリアベル嬢の話も出てきたんだよ」
王妃の暗いところはスルーしよう。
「私の? 何でしょうか?」
「その時にマリアベル嬢を保護していたって教えてくだされば良かったのに……もう。余計なライバルが増えて困っちゃうわ」
余計なライバル……あぁ、ジェラール殿下の話か。
「私が勝手に誤解を解くのは……と思いロマーニ侯爵に許可を得てタイミングを……と思っていた矢先の事でした。貴族院も認められたのですか?」
ちょっと嫌味を含めて聞いた。
「……そうね。ペルソナ公爵以外は」
ペルソナ公爵はマリアをとても大事にしているから今更なんだ! と言って怒っているらしい。とても発言力のある方だからな……うん。
マリアは何のことかわからないだろう。教えて。と言う目をしていた。
「マリアベル嬢は誰か気になっている子息とか居ないの? 学園では同じ年頃の子息がたくさんいるでしょう? 侯爵夫妻はマリアベル嬢をお嫁に出すならマリアベル嬢が好きになった人って言っていたけれど、そろそろ将来の相手を見つける頃でしょう?」
ストレートで来たようだ。
「気になっている人はいます」
「あら……そう。確か……仲のいい家といえばラング伯爵家かしら?」
「ハビエルとアレックスは大事な友達です」
異性の友達もちゃんと居るんだな。侯爵が交流を許すくらいなら純粋な友達なんだろう。
「あら……マリアベル嬢を射止めるようなラッキーな男性は誰なのかしら? 教えてくれる?」
王妃は顔には出さないが驚いているようだ。頼むから俺の事は言うなよ……自惚ではないだろうが恐らく俺のことだろう。
「それは言えません。王妃様の耳に入った。となると相手の方に迷惑がかかりますもの」
ほっ。ちゃんとした対応だ。マリアは社交というものをちゃんと理解している。王妃の耳に入ったのなら相手の家に……って俺の家。迷惑……ではないが国同士の話し合い? になるくらい厄介な事になる!
たぶん今回の茶会は俺とマリアの関係性(誘拐後の生活)を聞きたかった。それだけだろう。
俺もマリアの名前しか知らなかったし逃げていた時だったからそれ以上は深く追求される事はなかった(隣国の王家のお家騒動であり王妃の実家も絡んでくるからだろう)
田舎でのスローライフだったがマリア自体も楽しんでいた。と答えていた。
今日分かった事はマリアはちゃんとした令嬢だった。
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