【完結】今夜さよならをします

たろ

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リーリエ編③

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 王宮騎士達は我が家の伯爵家の騎士よりも身なりも歩く姿勢も違った。
 もちろん顔つきも引き締まっていてカッコいいし持っている雰囲気も全然違う。

 わたしをエスコートしてくれる時、カッコよくて今までの男達との違いにわたしの心は上がりっぱなし。

「騎士様達、とってもカッコいいですぅ」
 わたしが両手を合わせて瞳をうるうるさせて話しかけると、「ふっ」と笑った。

 きゃっ、カッコいい!

 なのにいくら話しかけてもわたしの誘いには乗ってくれない。

「今度一緒にお茶に行きましょう」
「結婚されていますか?」
「恋人は?婚約者は?」
「わたしのことどう思いますか?」
「わたしが付き合ってあげますよ。どこに行きたいですか?わたし最近流行りのレストラン色々知ってるので付き合ってあげますよ」


 ーーな、なんで返事すらしないの?

 信じられなくて二人の騎士の顔を覗き込んだ。

 二人とも淡々としていて黙って馬車に乗ったままだった。結局ライナのこともよくわからないまま王宮の騎士団の取調室へと連れて行かれた。


「ねえ、美味しいお食事はこんなところで出るのかしら?わたし楽しみにしていたの」

 そう言って周りをキョロキョロと見回したけど、この部屋は殺風景で、あるのは座り心地の悪い木の椅子と古びれた机だけだった。

「ねえ、この椅子とても座り心地が悪いの。柔らかいソファは?それにこの机汚らしいわ。こんなところで王宮の料理人が作った食事なんて食べれないわ」

 わたしが騎士達に伝えると、騎士達は「ハアー」と大きな溜息をついた。

 ーーな、何よ!その顔つき!わたしを残念な人を見るような目で見て!

 わたしはムカついたけど、心優しいわたしは可愛く笑ってあげた。

「わたしも怒るの我慢しているけどその態度は何?後でこちらから抗議文を送らせてもらうわよ?」

 そういうと、さらに目を大きくさせて何か言いたそうにわたしを見た。

「人が話しかけても無視。せっかくこの部屋の感想を伝えて改善した方がいいと教えてあげたのに、どうしてそんな態度を取られなければ行けないのかしら?」

 だんだん腹が立ってきた。

 ぷんぷん怒っていると、騎士達がわたしの前に二人固い木の椅子に座ってわたしをみた。

 綺麗なカッコいい二人の騎士にドキッとしていると

「ここで食事は出ません。今から貴女の、いえ、リーリエ・ミレガーの取り調べを行います」

「わたしの名前を呼び捨てするなんて!失礼でしょう!」

「貴女は今犯罪者として告訴され裁判を起こされています。そのため今から貴女の取り調べを行います。ある程度は貴女の屋敷に影が入っていて動きは把握しています。そのことに対して異論があれば言ってください。では読み上げます」

 そう言うと淡々と書面を読み上げていく。

『ライナ・パシェード伯爵令嬢に対して虚偽の噂を流したこと。屋敷の使用人達にはもちろん貴族令息を使い貴族の子供達だけではなく社交界にまで噂を流し、名誉を著しく辱めた。さらに社交の場に出ることが出来ないほどの精神的苦痛を与えた』

「本当のことを言ったまでだわ、そんなことで訴えられるなんておかしいわよ。そんなこと言っていたら悪口言ってる全員が捕まってしまうわ」

 ーーライナは言われて当然のことをしたのよ。

「わたしのシエルの婚約者になって生意気にもうちの屋敷の者たちの間で人気者になって、わたしに不愉快な思いをさせたのだもの」

「そうですか……さらに…………」

「パシェード商会でライナ様に対して偽物の宝石を渡されたと騒ぎを起こし、ライナ様が盗んだと犯人扱いをした事、ライナ様のことを店の中でも仕事をさぼり他のメイドを虐めていたとお客様達がいる中で大きな声で言ったそうですね?」

「本当のことを言って何が悪いのかしら?」

 もう!いちいちうるさいわね、この騎士達。カッコいいと思っていたけどうざいだけじゃない。

「わたしの屋敷で働く貧乏令嬢でしかないライナよ?どんな物を売っていると言うの?どう考えても碌なものしか売っていないに決まっているでしょう?悪いことは悪いと教えてあげたのよ。嘘つきで婚約者に愛されない貧乏令嬢、そんなライナに本当のことを言ってどうして伯爵令嬢でみんなに愛されているわたしが責められないといけないのかしら?」

 ーーふー……

「おかしいでしょう?ライナはわたしの目の前から消えて惨めに生きるのがお似合いなの。わたしはシエルからもバズール様からも愛されないといけない高貴で可愛らしい存在なの」

 ーーこれで事情は話したわね。

「ねえ、きちんと説明したでしょう?この部屋から出て美味しいお料理を振る舞っていただけるかしら?
 最近使用人が辞めてなかなか美味しいお料理を食べていないの。
 久しぶりに綺麗なドレスに着替えたいわ。
 あ!ダイヤモンドの宝石はないかしら?可愛らしいわたしにはどんな宝石でも似合うの。でも、ふふふ……王宮にある宝石で着飾って豪華な客間で過ごすのも素敵だわ」

 騎士の顔を見てにこりと微笑んだ。

「早く行きましょう?わたし綺麗になるの大好きなの。それに男性からの優しい言葉も愛されるのも大好きなのよ?今夜はずっと一緒にいてくれるわよね?」

 わたしは古い木の椅子から立ち上がった。

 お尻は痛いし机は汚い。

 すると騎士達は「勝手に席を立つな」と怖い声でわたしに言った。

「え?」

 驚いた顔をして騎士を見ると

「君は自分の置かれている立場が全くわかっていないのか?君の父親は伯爵の地位を剥奪されて今は牢に入っている。君の母親も今日から犯罪者として取り調べが始まった。
 あとは君の取り調べ次第で君の刑が決まる。
 美味しいご馳走も綺麗なドレスも豪華な宝石も、そしてもちろん君の好きな男達もここにはない。
 あるのは現実だけだ。
 全てを失った元伯爵令嬢のリーリエ・ミレガー……
 馬鹿げた夢はもう終わりだ」












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