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新しい恋。
いち
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「ライナ!早く起きて!」
「うーん、まだ眠い」
「昨日遅くまで起きてたからいけないのよ!早く起きないと遅刻するわよ」
「……もう起きるから………ふああ…」
布団の中でウトウトとしていると毛布をガバッと剥がされた。
「……さ、寒い……」
「だったらさっさと起きる!」
わたしは今留学生として、オリソン国の王立大学に一年間通い始めた。
この学園は国立なので月謝が安い、だから平民もたくさん通っている。
ただし、勉強が優秀でなければ通うことはできない。
自分に実力さえ有れば、この国で文官として働くこともできるし、将来は有望。
貴族や平民のしがらみもない。
おかげで今毛布を剥がされても「わたしは貴族なのよ!」と怒ることはできない。
わたしを起こしてくれたのは平民のマリアナ。
寮の同じ部屋で過ごしている、とても仲良しなの。
わたしは大学生として一年間ここで文化や政策などの勉強をしている。
メイドとして暮らした日々も、シエルとの婚約者として過ごした日々ももうここにはない。
毎日遅くまで勉強をして朝起きられなくてルームメイトに叩き起こされる日々。
サマンサを連れてこの国に来てどこか家を借りて暮らすのはどうかとお父様に言われたけどわたしは寮生活を選んだ。
人と違うことをしてまた好奇の目にさらされることはとても嫌だった。
寮での生活はみんなに合わせなければいけないけど……とにかく楽しい。
遅くまで友人達と集まってワーワー言いながら勉強会をしたりおやつパーティーをしたりして過ごす。
大学での勉強も興味のある科目なのでついて行くのは必死だし一年と短いので中身は濃縮されて留学生用はかなりの量だ。
実際遊んでいる暇はない。
おかげでいつも寝不足。
バズール?
バズールも留学しているわよ、オリソン国に!!
お父様ったら結局バズールがいるからわたしもこの国に留学するように決めたの。
でも、この国は新しい国。今の若い国王が作った。
考え方も政策も全て古い考えで凝り固まった我が国とは違う。
いいものは取り入れて古きものは大切に扱う。
だから古参の官僚達もしっかりと働いているし、平民も採用されて生き生きと仕事をしている。
そんな国の内情を知っているお父様はすぐにわたしの試験結果を聞いて、オリソン国へ決めた。
バズールも男子寮に入っている。
お互いとっている授業は別なのであまり会うことはない。
なのに……
「ライナ様?」
とわたしに和かに笑い声をかける女性は……
「オリソン国のリリアンナ殿下にご挨拶申し上げます」
わたしは急いで廊下の端により歳の離れた王妹であるリリアンナ様に頭を下げた。
この大学では身分差はないとはいえ、さすがに王族に対して同じ扱いはできない。
「ふふ、バズールの従姉妹の貴女なのだから畏まらないで」
殿下の笑顔は………何故かリーリエ様を思い出す。
全ての下々の人達は自分を大切にするのが当たり前だと思っている。
みんなが傅き、彼女を敬愛し、なんでも言うことを聞く。
リリアンナ殿下の周りにはたくさんの取り巻き達がいた。
その中にバズールもいる。
バズールはわたしをチラッと見るが興味がないのか声すらかけてこない。
この国に留学した頃はわたしを心配して度々会いに来てくれていたのに、半年も経つと今では会うことすらないし、話すことすらなくなった。
まぁ、もともと従兄弟なだけで、それだけで、なんの関係もないのだから、彼がリリアンナ殿下に夢中になってもわたしには関係ない。
ただ……こうして取り巻きを連れて歩いている時に会うと、必ず声をかけられる。
マウントでも取りたいのかしら?わたしに対抗意識なんて必要ないと思うのに。
無視をしてくれたらいいのに態々立ち止まってわたしを馬鹿にしたようにクスッと笑って見る。
初めは気のせいだと思っていた。
でも毎回毎回だと気のせいではないとわかってしまう。
いい加減にして欲しいと思ってしまう。
リーリエ様はシエルとバズールを気に入っていた。
おかげでわたしは散々な目にあった。
今回は…リリアンナ殿下は………バズールをとても気に入っているらしい。
優秀でかっこよく人当たりもいい。
身分は伯爵令息だけどあそこの家は国でも有数のお金持ち。
我が家もそうだけど共に商会を営んでいるので収入に関しては心配ないはず。
リリアンナ殿下がもしお嫁に来ても一生お金には困らないだろう。
わたしとバズールの関係はいとこで親戚なだけ。
それなのにわたしに対して目の敵のように見られているのでとても困っている。
だから出来るだけリリアンナ殿下達のいる方へ行かないようにしているのに……
「ありがとうございます。では失礼させていただきます」
挨拶だけ終わるとわたしはさっさと廊下の端から移動しようとした。
「待って、せっかくだからご一緒にお茶でもいかが?」
殿下に誘われて仕舞えば断ることなど出来ない。
どう返事をしようか悩んでいるとバズールと目が合った。でも彼は冷たい目でわたしを見ていた。
以前のシエルを思い出す。
わたしが返事をしようとしたら……
「ライナ、探していたんだ!」と少し離れた所から急いでくる人の姿が見えた。
その姿にホッとすると
「すみません、今から伺うつもりでした」
「では、僕の研究室に一緒に行こう」
優しい笑顔で和かにわたしの持っている重たい本を受け取ると「行くよ」と言ってさっさと歩き出した。
わたしはリリアンナ殿下に頭を深々下げて
「申し訳ございません、せっかくのお誘いなのに用事がありましてご一緒できません」
と謝り急いで彼について行こうとした。
「もう!おじ様ったら無理やりライナ様を引っ張って連れていくのね」
頬を膨らませてぷんぷん怒ってはいても、陛下とリリアンナ様の父親の弟であるギルバート様には逆らえず、わたしはすぐに解放された。
ギルバート様はまだ29歳の独身でオリソン国の公爵でもある。
この大学で教授をしている。
わたしは彼の生徒であり最近は助手のようなことをしている。
「先生、助かりました。このままリリアンナ殿下についていけばずっと自慢話をされ取り巻きの人達からの冷たい視線の中で過ごさなければいけなかったので声をかけていただきありがとうございました」
想像しただけでうんざりした。
ーーリリアンナ殿下のご機嫌取りでみんなが褒め讃えて甘い言葉や聞いていてうんざりするお世辞の言葉をずっと聞かされるはずだった。
「リリアンナはこの国の大変だった時代を知らないからお姫様気分なんだ。すまないね、何故か君のことを目の敵にしているみたいなんだ」
「そうみたいですね」
わたしは遠い目をした。
◆ ◆ ◆
ここからはライナの新しい恋の話です。
たぶん20話くらいで終わる予定です。
ライナとバズールの恋は発展するのか……
あと少しだけお付き合いくださいね。
「うーん、まだ眠い」
「昨日遅くまで起きてたからいけないのよ!早く起きないと遅刻するわよ」
「……もう起きるから………ふああ…」
布団の中でウトウトとしていると毛布をガバッと剥がされた。
「……さ、寒い……」
「だったらさっさと起きる!」
わたしは今留学生として、オリソン国の王立大学に一年間通い始めた。
この学園は国立なので月謝が安い、だから平民もたくさん通っている。
ただし、勉強が優秀でなければ通うことはできない。
自分に実力さえ有れば、この国で文官として働くこともできるし、将来は有望。
貴族や平民のしがらみもない。
おかげで今毛布を剥がされても「わたしは貴族なのよ!」と怒ることはできない。
わたしを起こしてくれたのは平民のマリアナ。
寮の同じ部屋で過ごしている、とても仲良しなの。
わたしは大学生として一年間ここで文化や政策などの勉強をしている。
メイドとして暮らした日々も、シエルとの婚約者として過ごした日々ももうここにはない。
毎日遅くまで勉強をして朝起きられなくてルームメイトに叩き起こされる日々。
サマンサを連れてこの国に来てどこか家を借りて暮らすのはどうかとお父様に言われたけどわたしは寮生活を選んだ。
人と違うことをしてまた好奇の目にさらされることはとても嫌だった。
寮での生活はみんなに合わせなければいけないけど……とにかく楽しい。
遅くまで友人達と集まってワーワー言いながら勉強会をしたりおやつパーティーをしたりして過ごす。
大学での勉強も興味のある科目なのでついて行くのは必死だし一年と短いので中身は濃縮されて留学生用はかなりの量だ。
実際遊んでいる暇はない。
おかげでいつも寝不足。
バズール?
バズールも留学しているわよ、オリソン国に!!
お父様ったら結局バズールがいるからわたしもこの国に留学するように決めたの。
でも、この国は新しい国。今の若い国王が作った。
考え方も政策も全て古い考えで凝り固まった我が国とは違う。
いいものは取り入れて古きものは大切に扱う。
だから古参の官僚達もしっかりと働いているし、平民も採用されて生き生きと仕事をしている。
そんな国の内情を知っているお父様はすぐにわたしの試験結果を聞いて、オリソン国へ決めた。
バズールも男子寮に入っている。
お互いとっている授業は別なのであまり会うことはない。
なのに……
「ライナ様?」
とわたしに和かに笑い声をかける女性は……
「オリソン国のリリアンナ殿下にご挨拶申し上げます」
わたしは急いで廊下の端により歳の離れた王妹であるリリアンナ様に頭を下げた。
この大学では身分差はないとはいえ、さすがに王族に対して同じ扱いはできない。
「ふふ、バズールの従姉妹の貴女なのだから畏まらないで」
殿下の笑顔は………何故かリーリエ様を思い出す。
全ての下々の人達は自分を大切にするのが当たり前だと思っている。
みんなが傅き、彼女を敬愛し、なんでも言うことを聞く。
リリアンナ殿下の周りにはたくさんの取り巻き達がいた。
その中にバズールもいる。
バズールはわたしをチラッと見るが興味がないのか声すらかけてこない。
この国に留学した頃はわたしを心配して度々会いに来てくれていたのに、半年も経つと今では会うことすらないし、話すことすらなくなった。
まぁ、もともと従兄弟なだけで、それだけで、なんの関係もないのだから、彼がリリアンナ殿下に夢中になってもわたしには関係ない。
ただ……こうして取り巻きを連れて歩いている時に会うと、必ず声をかけられる。
マウントでも取りたいのかしら?わたしに対抗意識なんて必要ないと思うのに。
無視をしてくれたらいいのに態々立ち止まってわたしを馬鹿にしたようにクスッと笑って見る。
初めは気のせいだと思っていた。
でも毎回毎回だと気のせいではないとわかってしまう。
いい加減にして欲しいと思ってしまう。
リーリエ様はシエルとバズールを気に入っていた。
おかげでわたしは散々な目にあった。
今回は…リリアンナ殿下は………バズールをとても気に入っているらしい。
優秀でかっこよく人当たりもいい。
身分は伯爵令息だけどあそこの家は国でも有数のお金持ち。
我が家もそうだけど共に商会を営んでいるので収入に関しては心配ないはず。
リリアンナ殿下がもしお嫁に来ても一生お金には困らないだろう。
わたしとバズールの関係はいとこで親戚なだけ。
それなのにわたしに対して目の敵のように見られているのでとても困っている。
だから出来るだけリリアンナ殿下達のいる方へ行かないようにしているのに……
「ありがとうございます。では失礼させていただきます」
挨拶だけ終わるとわたしはさっさと廊下の端から移動しようとした。
「待って、せっかくだからご一緒にお茶でもいかが?」
殿下に誘われて仕舞えば断ることなど出来ない。
どう返事をしようか悩んでいるとバズールと目が合った。でも彼は冷たい目でわたしを見ていた。
以前のシエルを思い出す。
わたしが返事をしようとしたら……
「ライナ、探していたんだ!」と少し離れた所から急いでくる人の姿が見えた。
その姿にホッとすると
「すみません、今から伺うつもりでした」
「では、僕の研究室に一緒に行こう」
優しい笑顔で和かにわたしの持っている重たい本を受け取ると「行くよ」と言ってさっさと歩き出した。
わたしはリリアンナ殿下に頭を深々下げて
「申し訳ございません、せっかくのお誘いなのに用事がありましてご一緒できません」
と謝り急いで彼について行こうとした。
「もう!おじ様ったら無理やりライナ様を引っ張って連れていくのね」
頬を膨らませてぷんぷん怒ってはいても、陛下とリリアンナ様の父親の弟であるギルバート様には逆らえず、わたしはすぐに解放された。
ギルバート様はまだ29歳の独身でオリソン国の公爵でもある。
この大学で教授をしている。
わたしは彼の生徒であり最近は助手のようなことをしている。
「先生、助かりました。このままリリアンナ殿下についていけばずっと自慢話をされ取り巻きの人達からの冷たい視線の中で過ごさなければいけなかったので声をかけていただきありがとうございました」
想像しただけでうんざりした。
ーーリリアンナ殿下のご機嫌取りでみんなが褒め讃えて甘い言葉や聞いていてうんざりするお世辞の言葉をずっと聞かされるはずだった。
「リリアンナはこの国の大変だった時代を知らないからお姫様気分なんだ。すまないね、何故か君のことを目の敵にしているみたいなんだ」
「そうみたいですね」
わたしは遠い目をした。
◆ ◆ ◆
ここからはライナの新しい恋の話です。
たぶん20話くらいで終わる予定です。
ライナとバズールの恋は発展するのか……
あと少しだけお付き合いくださいね。
応援ありがとうございます!
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