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1章
第10話
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「お義姉様?」
「ラ、ライラ…。」
何をずっと話しているの?という顔で私を睨むライラ。本性が出てきたと思いつつ、怖気付く振りをする。
私の紹介をしろと言わんばかりの形相ね……。私達の会話を聞いていたのかしら?
ドーフェンはれっきとした商人。そしてライラのことを調べたと言った。つまりは説明をせずとも詳しく知っていることになる。彼も何を言っているんだという表情をしているわね…。
ここは察してもらうとしましょう。
「……改めて紹介しておくわね。この子が私の義妹となった、ライラ・セルティラスよ。」
「初めまして、ライラです。」
「シルド商会会長の長男、ドーフェン・シルドだ。よろしく。」
シルド商会は王国内で最も大きい商会。故に、商会の会長バルアー・シルドとその息子であるドーフェンは、貴族のパーティーなどに出席することも多々あった。
そして国内にてバルアー会長は侯爵と同等の扱いを受けている。よってドーフェンも侯爵令息のように貴族達から接されていた。勿論、事実的には大商人であり、貴族ではない。
しかし皆がシルド商会を認めているからこその、前例の無い対応となっていた。
暗黙の了解とも言える立場がある為、私やライラがドーフェンに尊大な態度を取ることなど不可能であり、逆に私達が気を遣わねばならないわね。
「ライラはお父様が養子にすると言って、伯爵家に連れてきたのよ。とっても可愛いでしょう?髪と瞳も珍しい色をしている…。見惚れてしまうわ。」
「お義姉様ったら…。恥ずかしいですっ。」
「……。」
褒め言葉が少し棒読みになってしまったわ…。けれどライラが照れる仕草をしたので一安心ね。そんな彼女に対し、ドーフェンは少し引いた顔で私を見てきた。
《お前の義妹…大丈夫か?》
《そんなの知らないわよ。》
思わず心で会話していた。
一瞬でライラが演技をしていると見抜くとは、商人を侮るなかれね。恐ろしいくらいの洞察眼、その眼が欲しいくらいだわ。
視線を逸らした私に、ドーフェンは察した言動をしてくれた。
「…確かに珍しい色だな。王族と同じ色というのは、貴族でもあまり見かけない。」
「ふふっ、嬉しいことを言ってくださるのですねっ!」
「あ、ああ…。」
顔が引きつっているように見えるわね…。
この数分で、ドーフェンはライラに苦手意識を持ったようね。私としても、彼が魅せられては困るので良かったのだけれど。
これ以上は付き合えないと思ったのか、ドーフェンは仕事があるからと言って足早に去って行った。賢い判断でしょう…。
「シルド商会のドーフェン様って、とても格好良い方でしたね…!」
「あら、ドーフェンに惚れたのかしら。」
「そ、そんなことはありませんよ?!」
私は知っている。ライラが『攻略対象』と書かれていた方々の全てを狙っていることを…。
おそらく相手に婚約者がいても関係ないのでしょうね。本当に厄介極まりない義妹ね。
それにしても、メリーア様から聞いていた乙女ゲームの物語とは少し違った『出会いイベント』だった。
物語では私とではなくライラとドーフェンが少しの間会話していたそう。最終的にはとても仲良くなって別れると聞いていたのだけれど、まるで真逆ね…。
もしもライラの愛らしさが自然体だったならば、物語通りになっていたかもしれない。けれど彼女から不気味さを感じ取ったドーフェンは、警戒しておこうという意思があるように思えた。
どのようなことになっていくのか分からない以上、この先も気を引き締めて行動するとしましょう。
それに建国祭の本番は、明日のパーティーなのだから──
「ラ、ライラ…。」
何をずっと話しているの?という顔で私を睨むライラ。本性が出てきたと思いつつ、怖気付く振りをする。
私の紹介をしろと言わんばかりの形相ね……。私達の会話を聞いていたのかしら?
ドーフェンはれっきとした商人。そしてライラのことを調べたと言った。つまりは説明をせずとも詳しく知っていることになる。彼も何を言っているんだという表情をしているわね…。
ここは察してもらうとしましょう。
「……改めて紹介しておくわね。この子が私の義妹となった、ライラ・セルティラスよ。」
「初めまして、ライラです。」
「シルド商会会長の長男、ドーフェン・シルドだ。よろしく。」
シルド商会は王国内で最も大きい商会。故に、商会の会長バルアー・シルドとその息子であるドーフェンは、貴族のパーティーなどに出席することも多々あった。
そして国内にてバルアー会長は侯爵と同等の扱いを受けている。よってドーフェンも侯爵令息のように貴族達から接されていた。勿論、事実的には大商人であり、貴族ではない。
しかし皆がシルド商会を認めているからこその、前例の無い対応となっていた。
暗黙の了解とも言える立場がある為、私やライラがドーフェンに尊大な態度を取ることなど不可能であり、逆に私達が気を遣わねばならないわね。
「ライラはお父様が養子にすると言って、伯爵家に連れてきたのよ。とっても可愛いでしょう?髪と瞳も珍しい色をしている…。見惚れてしまうわ。」
「お義姉様ったら…。恥ずかしいですっ。」
「……。」
褒め言葉が少し棒読みになってしまったわ…。けれどライラが照れる仕草をしたので一安心ね。そんな彼女に対し、ドーフェンは少し引いた顔で私を見てきた。
《お前の義妹…大丈夫か?》
《そんなの知らないわよ。》
思わず心で会話していた。
一瞬でライラが演技をしていると見抜くとは、商人を侮るなかれね。恐ろしいくらいの洞察眼、その眼が欲しいくらいだわ。
視線を逸らした私に、ドーフェンは察した言動をしてくれた。
「…確かに珍しい色だな。王族と同じ色というのは、貴族でもあまり見かけない。」
「ふふっ、嬉しいことを言ってくださるのですねっ!」
「あ、ああ…。」
顔が引きつっているように見えるわね…。
この数分で、ドーフェンはライラに苦手意識を持ったようね。私としても、彼が魅せられては困るので良かったのだけれど。
これ以上は付き合えないと思ったのか、ドーフェンは仕事があるからと言って足早に去って行った。賢い判断でしょう…。
「シルド商会のドーフェン様って、とても格好良い方でしたね…!」
「あら、ドーフェンに惚れたのかしら。」
「そ、そんなことはありませんよ?!」
私は知っている。ライラが『攻略対象』と書かれていた方々の全てを狙っていることを…。
おそらく相手に婚約者がいても関係ないのでしょうね。本当に厄介極まりない義妹ね。
それにしても、メリーア様から聞いていた乙女ゲームの物語とは少し違った『出会いイベント』だった。
物語では私とではなくライラとドーフェンが少しの間会話していたそう。最終的にはとても仲良くなって別れると聞いていたのだけれど、まるで真逆ね…。
もしもライラの愛らしさが自然体だったならば、物語通りになっていたかもしれない。けれど彼女から不気味さを感じ取ったドーフェンは、警戒しておこうという意思があるように思えた。
どのようなことになっていくのか分からない以上、この先も気を引き締めて行動するとしましょう。
それに建国祭の本番は、明日のパーティーなのだから──
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